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米金融規制改革法の成立(2010年7月)

米金融規制改革法の成立(2010年7月)
福光寛(Fukumitsu, Hiroshi)

米国連邦議会で金融規制改革法案が可決成立した
 米国では、金融機関の事業や商品に関する包括規制を目指す金融規制改革法案(両議会の一本化案 ドッド=フランク法 DF法)が2010年6月末に米下院を、また7月中旬に米上院を通過し、7月21日オバマ大統領の署名を得て成立した。2009年夏に問題にされた点について米オバマ政権は、答案を仕上げたことになる。

2010年6月30日米下院が金融規制改革法案を可決
 米下院本会議6月30日可決(賛成237 反対192 共和党議員の一部に賛成を促すため、最終段階で大手金融機関に直接負担させる条項の撤回し不良債権救済プログラムTARPの資金の一部を回す妥協が図られた)。

 銀行の自己勘定取引の原則禁止・店頭デリバティブへの規制強化(銀行本体でのエネルギー、株式などに関連したデリバティブ取引の原則禁止、ただし自らの本業のリスク回避のための取引を本体に残すことは容認)自己勘定取引と、ヘッジファンド業務、PE業務のスポンサー等を、連邦セーフティネットから切り離すというのが当初案(ボルカ―ルール)。最終的にファンドへの投資を各ヘッジファンドの3%まで許容。
 自己資本比率規制で一定規模以上の金融機関については、中核的自己資本から優先出資証券を除外する。
 レバレッジ倍率規制 資産規模を資産の25倍以内(優良銀行は33倍以内)→15倍以内に厳格化 従来の自己資本比率規制(リスクアセット規制)は国債保有で巨大リスクを抱え込む恐れがあった

2010年7月15日米上院が金融規制改革法案を可決
7月15日午前米上院で審議打ち切り動議可決(定数100 賛成60 反対38)。その後米上院金融規制改革法案可決(60対39)。
 内容は確認すると。

 ボルカ―ルールを導入する(銀行に対してヘッジファンド投資など危険性の高い取引を大幅に制限する)、ヘッジファンドなどへの投資は銀行の中核自己資本の3%までとする。
 金融派生商品取引を制限する。
 リスクの高いデリバ取引は銀行本体ではできない。
 公的資金での金融機関の救済をやめ、円滑に破たん処理する。金融当局に大手金融機関の分割権限。破産法を使わず円滑に破綻処理、費用は業界負担。
 証券、保険を含め大手金融機関の監督は横断一元的に米連邦準備制度理事会(FRB)が行う。(縦割り規制→AIGをFRBの緊急融資で救済したことなどへの反省)
 金融システムの安定に向けて各規制当局(財務省、FRB、連邦預金保険公社FDICなど)で構成する金融安定化監督評議会を設置する。
 一定規模以上のヘッジファンドは米証券取引委員会SECに登録を義務付ける。州政府にも規制権限。
 格付け機関もSEC通じ監視強化。 
 金融取引における消費者保護を強化する(FRB内に独立新組織消費者金融保護局を設置。住宅ローンやクレジットカードなどの取引をチェックする)。

 同法の具体的な運用のルール作りは各分野の当局に任せられたため、同法の理念がルールにどこまで生かされるか、疑問の声がある。

欧米とずれている日本の議論
 今回の金融危機の発信地が欧米であったこともあり、日本では今回の国際的な金融規制見直しで当事者意識が薄い。不勉強な国会議員の中にはなお規制緩和を進めようとする議論さえある。このような国際性の欠落は大きな問題であり、各国と協調して規制強化に務める必要がある。

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