Entrance for Studies in Finance

国債・地方債の消化問題、国債と中央銀行

大震災による見直し変更
2011年3月11日に発生した東日本大震災により、予定されていた法人税の引き下げは霧散し(その他増税)、国債もまた大量には発行される可能性が高い。しかし大震災といういわば外からの力で、国債発行を抑えていたくびきを外すことに一定の積極的意義もあろう。幸い低金利のおかげで国債の利払い負担(2011年度予算案:2010年12月末段階見通しでは10兆円弱)は低い水準にとどまっている。
ところが2010年秋口以降、米経済回復期待から長期金利の上昇が生じて関係者をあわてさせている(0.8%→1.2%台)。
残高の増加から国内資金での安定的消化にいずれ限界がくること。
格付け低下の恐れも指摘されている。
国債格付けの見通しが日米ともネガテブに
米国 連邦債務引き上げ問題 国債の格付け引下げ(2011年8月5日)
日本とアメリカの国債が相次いで格下げ 2011年8月5日 8月24日

新規財源債、借換債、財投債、普通国債
国債は、国が歳入の不足を補うために発行する債券。その信用力は債券の中でもっとも高いと考えられる。税収不足を補うための新規財源債、過去に発行した国債の償還資金に充てる借換債、政府系金融機関など政策経費を賄う財投債の3種類がある。新規財源債と借換債を合わせて普通国債という。
特例国債、赤字国債、建設国債
新規財源債は、特例法により発行される特例国債(=赤字国債)と公共事業に使う建設国債に分かれている。第二次大戦後、財政法のもとで赤字国債の発行は認められなかったが1965年不況を受けた1965年度補正予算から赤字国債発行が始まった。そして発行の仕組みとしてシンジケート団制度導入された。

個人が購入できる国債・個人向け国債
通常の長期国債は利付債で個人も購入できる。主なものに2年 5年 10年の固定利付債がある。個人向けに限定して発行される個人向け国債もある。こちらは満期まで保有すれば元金保証。途中で市場で売ることはでないが、手数料をとって買い取り保証。すべて電子登録債 2003年より販売 年4回 2003年3月に発行開始 利回りの低下から販売不振 2010年度の発行額は1兆278億円(当初の発行予定は2兆円)
  売買1万円単位(通常の国債は5万円単位) 利払い年2回
2010年6月2日 3日募集開始3年物 表面利率0.19% 
  変動金利型の10年物 実勢金利-0.8% 半年ごとの見直し 
  固定金利型の5年物  実勢金利-0.05%
途中換金 国が元本で買い取るがpenalty手数料あり
  10年もの 発行後1年経過後 2回分の利子
  5年もの  発行後2年経過後 4回分の利子
新型窓販国債 2007年10月から 毎月買える どの金融機関でも同一条件で
  買える プロ向け市場とおなじ銘柄を財務省が追加発行して個人にわりふる
  2年もの 5年もの 10年ものがある
  売却 金融機関は個人相手には実勢から数十銭から1円を引いて買い取る
個人購入を想定しない国債
20年超える超長期債が発行されたことがある。期間1年未満で発行される短期国債は、個人の購入を想定しておらず割引債形式で発行される。

金利は 社債 > 通常の国債 > 個人向け国債 > 銀行定期
 なお銀行定期より国債金利が上になるのは期間がちがうからで、同一期間ものでは国債が最低、になる。国債の金利はある国のなかでは基本は国債が金利がもっとも低い。その上昇は日本の金利全体が上がることにつながる。

国債の大量発行と財政規律
財務省発表2010-02-10
国の借金合計2009年末で871兆199億円
(国債、借入金、政府短期証券合計)
国と地方の長期債務残高は
2009年度末で825兆円
2010年3月末に約900兆円
2011年3月末に約973兆円
国や地方の金融負債残高(日銀発表の資金循環勘定)
2009年度末で1001兆7715億円(国庫短期証券、財投債など含む)
国債発行残高(財投債含む)558兆5114億円(前年度比2.2%増)
国庫短期証券149兆6521億円(同28.9%増)

財務相発表2010-11-10
国の借金2010年9月末で908兆8617億円
人口推計1億2738万人(2010年10月1日現在)
一人当たり約713万人
2009年度名目GDPの約1.9倍

財務省発表2011-02-10
国の借金合計2010年末で919兆1511億円
内訳 国債753兆8080億円
   借入金 55兆561億円
   政府短期証券 110兆2870億円
2020年頃には地方を含めた一般政府の債務残高が家計の純資産残高を上回る
日銀の資金循環統計で家計の純資産1076兆円(2010年9月末)

政策に必要な経費を借金に頼らずその年の税収で賄えているか。=基礎的財政収支プライマリーバランス 金額及び対GDP比
2009年度は40兆6000億円 8.6%で過去最悪 2010-02-05内閣府発表 2010年度は33兆5000億円に少し改善。
国債への信認の根拠 政府の支払い力は税収に依存。国家が信認される間は課税により
支払い力は維持される。したがって財政収支状況が悪化するとソブリンリスク(政府債務信認リスク)が表面化する
⇒2009年11月ギリシア危機 財政悪化⇒ 信用不安 緊縮財政 経済の混乱

2010年1月26日 S&Pが日本国債格付け見通しを引き下げ方向に修正
GDPに対する債務残高(米CIA調べ)は2008年段階で172.1%と先進国のなかで際立って高い(1999年以来先進国で最悪。2008年のアメリカは105.8%、イタリアですら105.8%)。
→インフレ 債務不履行の可能性
2011年 国と地方を合わせた一般政府ベース之債務残高は227.5%(2011年1月段階IMF見通し) 先進国平均では101.0%(2011)
2009年に217% 1月段階ノペースで2016年に277%(1946年英国の269%を抜く)
財政赤字は2010年GDP比9.4% 2011年9.1%改善見込み(2011年1月段階IMF見通し) 先進国平均では7.9%(2010) 7.1%(2011)
GDPに対する純債務比率(純資産=総債務残高から年金積立金など政府保有金融資産を差し引いた数値)でも2009年12月時点でイタリアを抜いて先進国で最悪になる見通しで100%の大台に乗る見込み。
2009年9月末現在 国債、借入金、政府短期証券を合計した国の借金の総額は864兆5226億円。人口一人あたり約678万円。2008年秋の金融危機深刻化もあり、増加傾向。

2010年度予算案での新規国債発行額
2010年度予算案での新規国債発行額は44兆3000億円 借換債、財投債を加えた国債発行額は162兆4139億円(09年度に比べ約30兆円 22.8%増加 新規国債+借換で140兆円規模)
既往の最高は2005年度の約165兆円
計画では公的部門(日本銀行乗換)が11兆3000億円(5.5%増) 
個人消化は2兆8000億円で33.3%の減(2003年から個人国債発行始まる 満期まで保有すれば元金保証)
    民間金融機関の購入が148兆3139億円で26.4%の増
2011年度予算では2010年度予算の44兆3000億円を超えないことを目標にする(2010年5月11日の管首相記者会見発言)

国債の消化問題 国債が消化されない ⇒ 国債の相場崩れる ⇒ 長期金利上昇
国債が消化される ⇒ 国債の相場安定 ⇒ 長期金利の安定
国債が増えても国債が消化される 増えた貯蓄が国債消化に回っている その限りで財政見通しの不安はあるが、国債が安全資産として選好されている では国債にまわる貯蓄はどこから出てくるか

貯蓄=生産ー消費
S=Y-C
Y=C+I+X-M
S-I=X-M
貯蓄超過=経常収支黒字 今後も経常収支黒字が続くか
高齢化により貯蓄率が低下するとの指摘(ライフサイクル仮説)もある
現在は国内投資家の国債投資により消化されているものの
政府債務が増加する中、家計の貯蓄率の緩やかな現象、経済成長の見通しの困難などの問題が指摘されている。

国債保有状況
 日本の国債消化は海外の比率が低い。しかし現状は金融機関(銀行)ではこれは企業向け貸付が増えないことから余剰資金を国債に回している。国債の信用リスクの低さ(安全資産としての面 信用リスクの低いこと 株と比較すると景気後退の金利低下局面で国債相場が上昇すること)が好まれ、低金利の進行で利益確保の手段になることが理由。その背景には預金の増加がある。預金は増えるが貸出は増えない状況は2000年ころから。安全志向の高まり 銀行預金の増加 (消去法的に)国債投資増加。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りの低下。金融機関は金利低下局面で(国債相場が上がるので)売却して益出しに利用。結果としての低金利も持続。さらに中央銀行による買い支え。こうした状況はしばしば「国債バブル」「債券のキャッシュ化」と揶揄される。
 生保の国債保有(長期保有で利息が目的)も注目される。生保は将来の保険金支払に備えて長期的で安定的な運用が求められる(長期債を選好する)。
 低利でも国債に資金があつまる現象=国債バブルという。日銀が資金を銀行に供給しても資金は企業に流れず国債に集まる。円高・株安。企業は借り入れに慎重。その中で銀行の国債保有リスクは静かにの高まっている(金利が上昇したとき相場が下がり含み損を抱えるリスクが潜在している これを金利リスク変動とも言う)。また国債への信認が崩れるリスク(これを特にソブリンリスクという)もある。銀行の保有姿勢が今後も変化することはないのか議論されている。なお国債についてのCDS(credit defaoult swap)取引は国債の信用力を反映する。CDS取引制限の議論あり。

2009年3月末国債保有状況 残高680.8兆円
ゆうちょ銀行合同運用信託含む銀行 37.0%
保険年金基金 24.0%
政府地方公共団体など       12.0%
日本銀行              7.5%
海外 5.8%
証券会社など 5.4%
家計                5.2%
その他  3.1% 

 実質金利でみるとデフレ下の日本の金利は低金利でなく高金利との議論がある。今後の金利動向については金融緩和政策・時間軸政策の継続があり金利上昇の可能性は小さいとされている。
また財務省としては海外投資家の保有増加にも一時期待しているとされたが、海外投資家(とくにヘッジファンド)に長期金利を左右されることを警戒する議論もある(海外の保有比率はギリシャ53.8%、米国47.7%、フランス34.7%、イギリス32.0%、日本5.8% 欧米では3割から5割程度は海外、国内が5割から7割との言い方がある)。国債の海外保有増加は、日本国債の格上げ、ドル安などがあれば進む可能性がある。海外の中央銀行、年金、政府系ファンドなどが安定保有の担い手として期待されるが、実際には国内投資家による保有が安定して増えている。2010年3月末で国内投資家の保有比率は95.4%, 前年比で1.8ポイント上昇。2006年3月末以来の高水準。とくに銀行・保険など。
 2010年8月4日 1%割れ 新発10年物国債利回り 0.995% 1%割れは約7年ぶり(国債バブルの声)
 2010年8月18日 終値0.900%  2005年9月以来の7年ぶりの低水準
 米国債、米ドル安がリスクになる。金利上昇局面では、国債価格の下落リスクがあり、国債投資にもリスク管理が求められる。これまでリスク管理の場所としてまず利用されてきたのは先物市場、そしてオプション市場である。先物市場では、現物を保有すると同時に先物を売ることで価格変動リスクの回避を目指す。前提となるのは先物市場が現物債市場と連動して動くということである。

 国債市場では、通常、現物債と先物債の間で、割高な方(利回り的には低い方)を売って、割安な方(利回り的には高い方)を買う裁定取引が活発に行われて相場が形成されている。しかし先物市場だけで動く投資が増えると、先物市場の値動きが荒くなり、先物市場が現物市場の動きとかい離して、リスクヘッジの場所として機能しなくなる(=市場機能の崩壊)という問題が知られている。

政府債務残高の増加問題
1990年度 国地方債務残高 289兆円 利払い 16兆円 対GDP比率 3.5%
2005年度 国地方債務残高 912兆円 利払い 12兆円 対GDP比率 2.3%

債務残高の対GDP比率(2007年見通し)
     米国62% 英国47% フランス74% ドイツ69% 日本179% 
財政赤字の対GDP比率(2007年見通し)
     米国4.1% 英国2.7% フランス2.3% ドイツ0.3% 日本2.2%
参考 ユーロの参加条件は
   長期債務残高が60%以内 財政赤字が3%以内というもの

2010年6月末に国や地方自治体など政府部門の債務残高が前年同期比6.3%増の1035兆2060億円
 金融機関を除く民間企業のそれが3.4%減の1000兆2518億円 政府債務が民間を上回った(資金循環統計上)

2023年度には政府の借金が個人の金融資産を上回る見通し
(2010年6月22日に公表された経済財政の中長期試算)  

日本銀行の銀行券ルールについて
 日銀の国債買い入れには銀行券ルール(お札の発行額の範囲内に保有額を抑えるルール 2009年12月末で買い余力は約33兆円 2010年1月末には30兆円を割り込む見通し 日銀の国債保有は現在50兆円程度(2010年2月末で51兆5691億円)がある。2月末のお札の発行残高は77兆890億円
 日銀は09年3月に長期国債買い入れ金額を月1兆4000億円から1兆8000億円に引き上げている。
 買い入れ額の増加とお札の発行額減少とのため、ルールの制約が意識されている。お札の発行額の減少については、個人商品の減少による消費取引の減少のほかカード取引の増加も影響しているとみられる。銀行券ルールはデフレ対策の必要と矛盾? 銀行券ルールは中央銀行が財政赤字の穴埋めをしているとみなされないため必要?などの議論がある。

イールドカーブ 金利の期間構造
 2年など短気物 中期物 金融政策(当面の金融緩和政策)の影響受ける 
 年限の長い債券の金利低下圧力(景気・物価の先行きへの不安を反映 景気後退や金融危機を予測すればさらに下げる展開も 長期物 今後10年の金融政策 景気予測)

bull bear steepening or flattening
債券市場では強気は金利の下落を意味する。他方、弱気は金利の上昇である。債券市場は短期市場と長期市場に分かれており、それぞれ独立した要因で動く。たとえば短期市場は金融政策変更の影響をうけやすい。長期市場は、景気や物価の今後の見通しに影響されやすいなど。

その結果、金利の下落といっても長期と短期は独立して生じる。すなわち
bull marketsにおける
 long rate fallingと
short rate fallingはそれぞれ独立して生じる
金利の上昇も同じである。
bear marketsにおける
 long rate risingと
short rate risingは独立して生じる

yield curveはnormalな状況ではupwardである。これがflatteningになるのは
 long rate fallingあるいは
short rate rising
の2つが考えられる。それぞれ上記のことと考え合わせて
 bull flatteningあるいは
bear flatteningという。
金融政策が引き締めに向かうとして現れる変化は bear flattening
景気後退の不安があるとして現れる変化は bull flattening

つぎにnormal yield curveがsteepeningになる状況は2つ考えられる。
 long rate risingあるいは
short rate falling
である。こちらはそれぞれ同様に上記のことと考え合わせて
 bear steepeningあるいは
bull steepeningという。
金融政策が金融緩和に向かうとして現れる変化は bull steepening
景気過熱の兆候があるとして現れる変化は    bear steepening

地方債
 地方債は地方自治体が財源確保のため発行する債券。これまでは信用力に大きな問題はないが流動性に問題があるとされてきた(国債の回転率15回に対して地方債は0.5回など)。最近はその信用力が問われるようになり、そのことを反映して発行金利に格差(スプレッド)がつくようになっているとされていた。しかし直近では金融機関が地方債を活発に購入、スプレッドの差がほとんどでない「いびつな」状態にある。
 このように流動性が低い理由は、発行の時期や金額が安定しないためとされる。そこで工夫として登場したのが、複数の自治体がまとまって資金調達する「共同発行地方債」の仕組みである(連帯債務方式)。2003年度に開始され、2010年度には35団体が総額1兆6200億円を発行するまでに成長した(毎月1350億円ずつ発行)。投資家からも歓迎されており、地方債の発行の指標となりつつある。
 2010年4月時点の国内銀行の保有額11兆2389億円。2011年3月には地方自治体の借金総額は300兆円超える。そのなかで銀行が地方自治体向け融資を増やしていることが注目されている。不況で法人事業税など地方税収が落ち込むなか、地方自治体やその外郭団体は銀行からの融資でしのいでいるとされる。地方自治体の側でも、国からの借り入れを繰り上げ償還して、より低利の民間銀行融資に借り換える動きもある。
 国内銀行は運用難であり、縁故債の中でも証書形式での貸出を行っているが、流動性がなく、信用力でも問題がある。形式的に貸出を増やすメリットがある。そのため最低限の利回りでも応募するという。これを地方債バブルと呼んでいる。しかし国債や証書形式の地方債とも同様に、金利リスクを膨らませているだけという批判あがある。
 花田真理「地域金融機関を窮地に追いやる地方債バブルの実態」『エコノミスト』2010年12月7日, pp.34-35

 ●民間の借り入れに切り替えることで金利下げる 繰り上げ返済には将来払うはずの利息を払う違約金制度 07-09年度に限って違約金なしの繰り上げ返済認める 過去5%以上で借りていたものを1%台に切り替えるなど 銀行など民間金融機関からの借入れ 金融機関からの証書による借入は理論的には地方債。しかし金融商品取引法上は有価証券ではないので地方債ではない。
●シンジケートローン(期間を短くすることで金利低く)
    06年に夕張市が財政破綻した先例
    07年春 財政再建団体になる 銀行から一時借入金金利の減免受ける
    06年の横浜市を皮切りに格付け取得広がる
    金融機関の自己資本規制ではリスクウエイト0%
    満期保有ができるのなら投資選択枝に入るのではないか。
地方自治体 の借り入れ方法の一つ  
      政府からの借入れ
      公営企業金融公庫からの借入れ
      ●市場からの調達
       個別債(06年9月から個別の条件を決定する方式に変更)
       共同発行地方債
      →税制増 や 自治体の財政経営努力 は抑制要因
       ミニ公募債 2002春から発行始まる 3年あるいは5年 購入単位1万円程度 地方銀行や信用金庫などが窓口
 地方公共団体金融機構(地方公営企業等金融機構として2008年10月発足 2009年6月組織改組して現機構になる)
  地方公共団体の公営企業の事業に長期低利で融資
  地方金融機構債を発行。地方共同の資金調達機関として機能。
  2009年からは地方公共団体の一般会計も貸付対象とする。

 ○ 金利先高感から超長期債20年債30年債の発行が増えている
 ○ 自治体の格付け取得状況
  横浜市AA(S&P) 06/10
神戸市AA(R&I) 07/01
京都市Aa1(M) 07/07
京都市A+(S&P) 07/08
大阪市AA-(S&P)07/08
Aa1(M) 07/08
名古屋市Aa1(M)07/08  

実質公債費比率=(公営事業を含めた借金総額)/(税収+地方交付税など)
  18%以上 地方債発行に国や都道府県の許可必要
  25%以上 地方単独事業の起債のほか国と共同の公共事業向け起債でも制限

18%以上の都道府県 
  北海道20.6% 長野県19.2% 兵庫県19.6% 島根県18.1%
18%以上の政令指定都市
  千葉市24.8% 川崎市21.1% 横浜市26.2% 
  名古屋市20.9% 京都市19.3% 神戸市22.3%
  広島市20.9% 福岡市23.0%
04年度から06年度の3ヶ年平均 N07/09/08

仕組み債の活用への懸念
○地方債の起債において仕組み債の利用が広がっていた。問題は利払い経費の節約で単純なものとしては変動利付債の発行がある。金利が低下する局面では支払金利削減に有効であり、投資家にとっても金利が上昇するときのリスクを軽減することができる。
○問題はやや複雑な仕組み債で、長短金利差をトリガーにして金利差がある大きさより拡大(縮小)したところで、あるいは急激な円高があると、支払金利条件を変更するというもの。金利差の場合は、金利差が縮小したところで一挙に金利負担が上昇する。

金利差:一定以上:低い固定金利
金利差:一定未満:高い固定金利

○私募による場合や、ローンの形をとる場合、この様な金利条件は開示されないことが多いので、住民が知らない間に自治体が金利上昇リスクを抱え込む恐れがあると指摘されている。
○08年1月から海外投資家の保有する地方債の利子収入が非課税になることを受けて海外投資家の地方債需要が増加している。

中央銀行と国債
中央銀行である日本銀行は国債の売買=オペレーションを通じて市中に資金を供給したり、市中から資金を吸収したりしている。つまり国債(市場)は、さまざまな経済主体の資産の運用場所であり、同時に中央銀行の金融政策が展開される場所となっている。
 日本銀行の金融政策の手段としては、準備率操作や、公定歩合操作があるが、国債売買のように間接的な政策が好まれるようになっている。
その日本銀行の政策が働きにくくなっている。そこでオペの対象を拡大することが議論されている。
 なぜ国債ではいけないのか。国債以外に対象を広げる意味(日本銀行がリスクマネーを供給する意味)をさらに詰めて考える必要がある。中央銀行のバランスシートが傷むことの悪影響(たとえば日本銀行券、円に対する信用が弱くなるなど)を心配する意見もある。
 日本銀行の景気回復シナリオの失敗と不信:デフレの解除に失敗している。この点で日本銀行には世界の中央銀行と歩調を合わせるように様々な圧力がかかっている。日銀は合わせているフリをしているだけだと批判されている。
 日本銀行にかけられている圧力は、量的緩和政策など非伝統的金融政策を通じたバランスシートの拡大に現れている。方法としては市場での長期国債に加えてリスク資産の購入の購入である。もう一つは焦点はインフレ率の目安の設定である。一部の経済学者は目標の義務付けを主張している。
 2008年9月のリーマンショック以降、BOE(イングランド銀行)は目標中心値2%を公表、また利下げだけでは効果は限られるとして量的緩和に踏み切り市場で国債購入。欧州中央銀行ECBは望ましいインフレ率2%に近い水準を公表、資金供給オペの期間延長、カバードボンドの購入を進めた(2009年5月に異例の措置)。米FRBも1.5-2%を望ましい水準として住宅担保証券やCPなど民間リスク資産の直接購入、国有化した企業の資産管理会社への融資に踏み込んだ。
 これに対して日銀は1%程度が政策委員大勢が考える望ましい(09年12月中期的な物価安定の理解の明確化で踏み込む)としつつも明確化は拒否(この提示値は低すぎると猛しく批判されている)。国債買い入れの増額に加え、CP(08年12月)や社債(09年2月 09年3月買取開始)の買い入れにも踏み切ったものの資産の拡大テンポはゆるやかかつ低下気味でデフレ解除に失敗しているとの評価がある。
 日銀は米国との違いについて、日本では間接金融の機能が維持されていることと、危機の収束を示すものと説明している(日銀のバランスシート拡大でなく金利低下で効果は評価するべき、またテンポがゆるやかなのは資金余剰感が強いことを示すに過ぎない)。しかし間接金融の拡大は、CPや社債買い入れが、企業の資金調達につながらず、従来、CPや社債で行われていた資金調達が銀行借り入れに振り替わったとも指摘されている。
 09年12月に日銀はCPや社債(償還まで1年以内 A格相当以上の格付けを持つ社債が対象)の買取オペを打ち切る(買い取り価格が市場より低いため、札割れするようになった09/10)。また追加の金融緩和(新型オペ)に踏み切っている。目標値(目安)を公表するとともに10兆円規模の新型資金供給オペを公表(資金供給目標を設定せず)。これは国債などを担保に年0.1%の金利で金融機関に対して3ケ月間、資金を貸し出すもので固定金利オペとも呼ばれている(市場で調達できるようになり供給残高減少へ09/10)。(他方、財務省と日本政策投資銀行は2008年12月に導入した日本政策投資銀行によるCP購入:枠は2兆円を少なくとも2010年3月末まで継続することを決めた)
 日銀新型オペ(広い意味での量的緩和)の導入決定(2009年12月1日の臨時金融政策決定会合) 国債などを担保に年0.1%の超低金利で金融機関に3ケ月間、資金を貸し出すもの → 期間1年以内の短期金融取引で金利が0.1%に収束する効果 金融機関の日銀当座預金残高は11-13兆円から15兆円前後に拡大 → 米国はゼロ金利政策 なお円金利はドル金利に比べて高く円高傾向は変わらない
 2008年12月 日銀は政策金利を0.1%に引き下げた。このあとコール取引残高は急減してゆく。当座預金にも金利がつく(2008年11月から超過準備に付利。FRBでは2008年10月より超過準備に付利)。リスクを負って市場で運用する意欲が低下。
 2010年3月 日銀は新型オペの供給枠を20兆円程度に倍増した。週1回8000億円から2回で計1兆6000億円に引き上げ。 
 しかしインフレ目標の明示、資金供給の量(当座預金残高を資金供給目標に使用 これはマネタリーベース:日銀当座預金+紙幣硬貨残高 重視を反映)に重点を置いた量的緩和政策(2000年ゼロ金利解除。2001年3月から06年3月まで量的緩和政策実施。)への本格的復帰への圧力はなお高い。
 銀行の株式保有リスクを軽減する。2002年 日銀が株式買取。政府も銀行等保有株式取得機構設立 2009年2月日銀が買取再開。2009年3月機構を通じた買取も再開。
 さらに2010年6月には成長基盤強化支援貸付制度が導入された(4月末の金融政策決定会合で提言。その後、具体策を検討)。これは総額3兆円を、成長基盤強化目的で融資する金融機関に0.1%で貸し出すというもの(期間1年で3回まで借り換え可能)。民主党政権下での政権の混乱のなかで、これは日銀の側が政府さらには民間銀行」に対して成長戦略を促したものとも評価された。

参考  72の法則
  2%で複利運用して2倍にするには36年かかる
  10年間複利運用で2倍にするには金利は7.2%必要  など

originally appeared in April 10, 2008
corrected and reposted in July 11, 2010;November 7, 2010;Feb.1, 2011;April 28, 2011

証券市場論
 
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