Entrance for Studies in Finance

先進国の金融緩和政策と過剰流動性

途上国・資源国とくにアジアの中国、インドなど経済成長の高い国・地域に投資マネーが集まっている
 例 中国では2009の海外からの民間資本流入額は1200億ドル超(2008年下期の流出1300億ドル超をほぼ取り戻した)
 中国元 韓国ウオン インドルピー インドネシアルピア
 経済成長の高さ(アジア圏2011年の予想7%台 米国1%台 欧州2%台をはるかに上回る)
 通貨の切り上げ観測 為替差益を目指す海外マネーの流入 為替高(為替レートの急上昇)を生む
 利上げ観測(引き締め観測がさらに投資マネーを呼び込む構造) 
中国 2010年10月2年10ケ月ぶりの利上げ決定。
オストラリア 2010年10月下旬(物価上昇)利上げ観測(11月2日RBAが政策金利0.25%引き上げ決定 10月27日のCPIの伸びは市場予想を下回ったため利上げに意外感)から資金流入
引き締めには経済成長を抑えてしまう危険性もある(⇒株価の急落を招くなど)
弊害
 自国通貨上昇気配(為替介入 外貨準備⇒米国債⇒米国の低金利 新興国の外貨準備総額は2009年末で約5兆1100億ドル)
 景気過熱
 物価上昇(中国やブラジルは3-5%の上昇率)
 新興国の株価は2009年に軒並み8割以上上昇しリーマンショック以前の水準を回復
 不動産市場など資産バブルを過熱させ金融システムを不安定にする危険あり
他方先進国は
 高い失業率
 低いインフレ率(米国は1%未満 日本はデフレでマイナス)
 利上げは遠い(米国は実質ゼロ金利 2010年10月に追加的量的緩和政策 米国債の購入拡大などの量的緩和政策)
  日米欧主要国の国債発行規模は総額10兆ドルとされる
  世界で流通するワールドダラー4兆3000億ドルほど(2010年春の推計)
 欧州はギリシア危機を契機にソブリンリスク(国家の信用不安)浮上、財政不安
  2011年6月までにFRBは6000億ドルの国債を買い上げる
  2010年10月末のワールドダラーは約4兆5000億ドル(米国内の資金供給残高が2兆ドル。海外保有の米国債残高が2兆5000億ドル)。
  (こんほか新興国のドル買い介入操作)
  欧米のファンドがキャリー取引(carry trade)をしている
  一時は世界的な株安(株価変動リスク 景気回復への不安を反映)へ
  ⇒ユーロ、原油、資源国通貨売られる
  ⇒金、米国債(ドルを調達してドル資産で運用 日本国債よりは高金利 米金利の低下傾向)
  ⇒ 債券 やがて株式へ
 金融機関などの不良債権問題
先進国に対しても通貨安政策をとっているとの批判。
金融緩和政策は間接的な為替操作に等しい

 新興国の中には為替介入で対抗する例もある
  ⇒ 自国の通貨切り上げ(競争力の低下につながる)を容認しないということ 
  ⇒ 自国の株式市場の株価上昇が資金流入の一因になる例(韓国など)もある
 国際機関が短期の資本流入規制を容認するように姿勢を変化させている
   IMFなど2010年春のGFSRなどで転換
   為替介入には反対だが過度な為替の変動は金融安定化に逆行し望ましくない・・・など
 為替先物取引への規制(韓国)
 資本規制の議論(投機的資金に課税 金額に制限をかけるなど)
  1998年9月 マレーシア 外国人が保有するマレーシアリンギ建て資産の外貨への転換を制限 
  2009年10月 ブラジル 株式・債券への投資に2%の課税
  2009年12月 ロシア 投資家が金融取引で得た利益への課税や外貨の借入制限を検討中。
  2010年5月2日 ギリシャ 支援で国際合意
  2010年6月19日 中国北京 中国人民銀行による人民元弾力化強化
  2010年10月5日 日本銀行が包括緩和策を決定 
  2010年10月 ブラジル 外国人投資家による確定利付債投資への金融取引税率を2%から6%へ引き上げ
外国人投資家の先物取引証拠金にかかる税率0.38%から0.6%に引き上げ
Brazil raised taxes on FOREIGN INFLOWS OF CAPITAL for the second time
this month. An influx of dollars has helped the real to appreciate by
nearly 40% since the start of 2009. With currency tensions rising, Tim
Geithner, America's treasury secretary, told an audience in California
that no country could "devalue its way to prosperity". from Economist, Oct.22,2010

  2010年10月 タイ 外国人投資家のタイ国債投資に関する利回り益と値上がり益に15%の源泉徴収課税を決定 
        韓国 外国人投資家の債券投資への非課税特権廃止を検討
  2010年10月19日 中国北京 中国人民銀行利上げ決定 2年10ケ月ぶりの利上げ決定
CHINA jolted markets when it unexpectedly increased interest rates for
the first time since December 2007. The People's Bank of China upped
its one-year deposit rate from 2.25% to 2.50% and its lending rate from
5.31% to 5.56%. Recent data, such as September's 9.1% rise in property
prices, have heightened concerns among Chinese officials about
inflation. China's economic growth rate, meanwhile, slowed in the third
quarter, to 9.6% from a year earlier. from Economist, Oct.22, 2010

  2010年11月3日 米FRBが追加緩和策を決定 
  2010年11月9日 中国北京 違法な投機資金の監視強化発表
  2010年11月10日 中国北京 預金準備率引き上げ発表(インフレ対抗姿勢)
 通貨の競争的切り下げ回避で合意(G20 2010年11月12日まで韓国で開催 中国は人民元過小評価批判を警戒 人民元の上昇を容認? アジア通貨つれ高)⇒為替介入はしにくいため資本規制しか道がない
 EUは為替介入に反対。銀行への特別課税、負担金の導入もとめる

以上は先進国と新興国・資源国との対比で資金の流れは
 先進国(金融緩和 低金利 通貨安)⇒新興国・資源国(金融緩和 相対的高金利 高い成長率 通貨高)というもの
                  ⇒為替介入・通貨安競争 
                  ⇒弊害 景気過熱 物価上昇 金利引き上げ 景気後退      
日本は先進国のなかだが同様に投資マネーの影響を受けている
 欧米(金融緩和 信用不安)    ⇒日本(円高)
                  ⇒弊害 企業減益 輸出環境悪化(生産拠点の海外移転加速) 雇用悪化       
 欧米(金融緩和後退 信用不安後退)←日本(円高一服)


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