Entrance for Studies in Finance

上場REIT初の破綻

中堅REIT(不動産投資信託)のニューシティレジデンス不動産法人が2008年10月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し破たんした。負債総額1123億円余。上場REITの経営破たんは初めてで注目される。首都圏を中心に約100件のマンションを所有して中堅とされる。上場は2004年。東証は11月10日付けで上場廃止するとした。それまでは整理銘柄として取引できるが、その後は取引できなくなる。

背景は資金難とされる。金融機関からの不動産向け融資が細くなっている上(一部金融機関からの借り換えができなかった)、物件の売却もむつかしくなっている。

上場廃止により流動性は失われる。すでに昨年(2007年)5月の高値の5分の1に下落しているニューシティの価格はさらなる下落が予想される(2009年4月7日にニューシティの新スポンサーにローンスターが選ばれた。ニューシティの運用資産額は約2000億円とされる。首都圏を中心に105棟。これを1200億円で買収。5年後の再上場をめざす。)。

この破たんはREIT投資の危険性を示すものであり、REITへの投資を誘導してきた東京証券取引所や監督官庁である金融庁の責任は重大である。

REIT(2001年に登場 42銘柄 08/4現在)は個人に不動産小口投資の道を開くというのが宣伝文句。そうであれ個人投資家の保護のためには厳しい規制が必要だったはずである。

しかし投資家の実態は矛盾したもので01年の創設時で個人投資家の割合は1割強。
現在(08年)では金融機関5割 外国人が3割弱。金融機関の損切り。益出しの影響を受ける市場となっている。

矛盾は、流通市場ではさらに深く、売買では外人の比率が6割。06年後半から日本の不動産相場の回復を見込んで投資していた。これらの投資家は、サブプライム問題のなかで07年6月以降は換金売りを行い。これをみた金融機関は損切り売りに走った。その結果07/5 peak(時価総額7兆円)以降、REITは08/4までに4割下落。

新規上場も2007年は急減2件のみ 前年の6分の1 増資も05年peakに06-07-08と毎年低下。⇔ 新興不動産会社に打撃となった。

なおオーストラリア上場には日本の不動産を対象とするREITが4本
シンガポール上場に1本07年11月

国内REITはビル建て替え開発事業ができない
海外の物件への投資できないなど規制が多い(07/11末現在)⇔そこで海外の物件への投資ができるように規制緩和が行われた(08年4月)。

 投資家心理は冷え込み平均分配金が6%となっても投資が回復しない(新発10年国債1.5%との格差は4.5%)。金利格差は06年半ばまでは2%程度。

 REIT投資は個人には開示情報の検討は大変な手間であり、零細な個人投資家にはむいていない。オフィスか住宅か 物件の稼働率などもむつかしい判断を必要とする。

 他方で不動産私募ファンドは増えており、不動産への投資資金集中は続いている。08/6末 13兆円 昨年同期に比べ3兆2000億円増加。しかし銀行借入は困難になったため 投資は減退へ 金融機関の融資厳格化 レバレッジをきかせることはむつかしくなり物件価格は低下している。

 なおLTV=負債比率が高いと金利負担高い 5割超えると増資で分配金減る懸念
Loan to Value 内規で上限6割など。など負債比率は自己規制されている。それでも今回の破綻は起きた。負債比率が高くなるとたとえば5割程度になると増資の動きがでてくる(利益のほとんどを配当に使うので増資しなければ自己資本はふえない 破たんはひくくなるが分配金が薄まるリスクがある 私募ファンドでは7-8割のケースもある)。
 増資のときに割安な価格での第三者割当増資があると希薄化。分配金が減る。現在の割安感は根拠なしに。

 REITについては、違法な建築物件の取得(審査がずさん) 収益をあげるためわざとずさんにしているのではないか。 ⇔ 法律に反し公序良俗に反する
不動産会社系REIT 親会社からの不動産取得時の価格に疑問 不動産鑑定士に高値の評価を出させているのではないか ⇔ 親会社の利益に奉仕して投資家保護に反するなどの問題も指摘されている。

 REITは投資法人と投資主利益の90%超を配当するREITは分配金を損金に算入できる。しかし上位株主3人以下で5割超えると同族会社とみなされ法人税減免措置の対象外れるという問題もあり、REITが買収の対象となると、投資家は警戒するといった手間もある。

 REITを組み込んだ投信もあるが投資商品として、購入時手数料1% 保有期間中の報酬1%とコストがある点が問題視されている。
 
 2007年 REITを通じて豊富なマネーが国内の都心部、中核都市に流れ込んだ。私募不動産ファンドも不動産の有力な買い手だった。⇔ これが新興不動産会社(過大な棚卸資産) の転売型ビジネス(消費者向けに売るのではなくファンド向けに短期で売ることで高収益をえる=販売営業部隊の不在)を支えたが、現在はこれがゆき詰まり投げ売りで負のスパイラルに転じているとされる。そのことは新興不動産会社の相次ぐ経営破たんに示されている。

08年度不動産会社の大型倒産事例
会社名手続き開始日種類負債総額
ケイアール不動産08/04/04特別清算
1677億円
スルガコーポレーション08/06/24民事再生法620億円
ゼファー08/07/18民事再生法949億円
アーバンコーポレーション08/08/13民事再生法2588億円
セボンなど2社08/08/25民事再生法785億円


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