Entrance for Studies in Finance

キャリー取引・外為証拠金(FX)取引そして為替相場

Hiroshi Fukumitsu

ドルキャリー取引とデフレ傾向
 2009年に入って以降、デフレ傾向が続き(消費者物価指数、国内企業物価指数、企業業向けサービス価格指数は2008年夏以降下落)、政府日本銀行の警戒感は高まっている。背景には2008年9月のリ-マンショック以降の消費の低迷がある。マクロ的にも大きな需給ギャップの存在(年40兆円規模)が指摘されている。
 企業行動や家計行動が、抑制の連鎖を続けることが懸念される。企業は値下げ競争に陥り、消費者は消費の抑制に。設備投資に加え、雇用を控え、賃金の抑制(収入の減少)・失業の増加につながっている。量産効果や調達先への圧力で切り抜けられる大企業に比べて中小企業が苦しい。
 デフレスパイラル(物価下落と景気悪化の悪循環)から低成長のワナにおちいることが懸念されている。
 問題を錯綜させたことの一つは、資源価格の変動である。2008年の高騰とその後の急落がデフレ傾向を強めている。
 もう一つの背景が円高である。円高は日本の輸出のブレーキ(国内総生産の下押し)になるとともに、輸入物価を押し下げるので、デフレ圧力になるという理解がある(重原久美春「日銀 円高への警戒強めよ」『日本経済新聞』2009年10月12日)。2008年9月のリーマンショックのあと、1ドル108円程度から急激な円高が生じた。2009年1月頃には1ドル90円前後となった。2009年3月頃には100円前後まで円安に戻した。その後は、10月-11月に向けて90円前後にまで円高となっている。
 そして現在の円高については米国の金融緩和政策の影響が指摘されている。低金利のドルを元手に高金利通貨などに投資するドルキャリー取引currency carry tradeが活発化しているとされる(日本銀行が量的緩和政策をとった2000年代半ばには円キャリー取引が話題となった)。円は「高金利」ではないが、ドルよりは金利は上についている。米国の景気停滞長期化(=景気対策の持続)の観測が高まるとこの傾向が続くことになる。
 円高傾向は輸出企業のリスク対策としての円買いや、個人の投資目的での円買いを促し、さらに円高圧力を高める面がある。そして日本銀行(ゼロ~2%上昇程度の上昇という物価安定の目安)に対しては現在の超低金利政策(事実上のゼロ金利政策 政策金利を年0.1%前後に置く)に加えて、さらに追加の政策を要求する圧力が高まっている。

為替相場についての学説
 そもそも異種通貨の交換レートである為替相場は、市場で自由に変動するときはどのような理由で変動するのだろうか。伝統的にはまず購買力平価という考え方がある。通貨の需給の大きな要因を、通貨で買える商品やサービスの格差に求めて、交換されるレートのところで、購買力がバランスしているとみる。この考え方では貿易収支の不均衡や、それぞれの国の物価水準の動きに注目する。
 もう一つは金利平価という考え方。金利収益がバランスすることろで、平価はバランスしているというもの。この考え方では、国と国との金利格差の変化に注目する。
 かつて30年近くまえに大学の講義で、私は、為替相場について、長期的には購買力平価説purchasing power parityが成り立つが、短期的な変動については金利格差の変化が説明要因として大きいと説明した。つまり短期的には金利水準の変動が為替の変動に大きな影響を与えるが、長期の動きについては貿易収支の変化が依然として重要だと説明した。短期的には、現物相場・先物相場は、現物・先物それぞれの金利収益をバランスさせるように変動する傾向がある。こうした考え方を金利平価説interest parityと、呼ぶ。まとめていえば、短期的には金利平価、長期的には購買力平価が妥当するとした。こうした古典的ともいえる為替相場の学説は、現在も大きくは変化していない。
 熊野英生さんは購買力平価説、フローアプローチ(国際収支説)、アセットアプローチを為替学説として説明している。そしてアセットアプローチが最も現実に合うとしている。私は、アセットアプローチは金利差を理由とする資本移動で、為替需給を説明するもので、金利平価説と同内容だと考える。熊野さんは、実質長期金利差より名目の長期金利差の方があてはまりがよいとしている(参照 熊野英生「現在の主流はアセットアプローチ」『エコノミスト』2010年10月26日, pp.30-31)。

学説から考えられる基調
 貿易収支については黒字基調が続いている。長期的な購買力平価説に従えば、これは円の需要を高め、円高基調を促すと考えられる。ドル相場をみるときに対米の貿易収支でみるか、米国に限定せず貿易収支全体をみるかは議論の余地がある。
 米国からみた対日貿易収支は2005年2006年と過去最大の赤字だった。2007年には前年比6.5%減の827億ドル。この問題が目立たなくなっているのは、対中国の赤字がその2~3倍規模に膨れ上がっているためである。2007年には前年比10.2%増の2562億ドル。貿易収支の赤字計は、ドル安転換による輸出拡大もあり6.2%減の7116億ドル。米国の貿易赤字は2002年から2006年まで拡大したが、2007年は6年ぶりに縮小した。
 日本の国際収支。注目される変化は、日本企業のグローバル化もあって、貿易収支に比べて所得収支の黒字が大きく伸びていることだ。つまり円に対する実需で考えたとき、投資(直接投資・間接投資)に伴うものが大きくなってきているということだ。
 2007年の経常収支黒字は前年比26.0%増の25兆円。所得収支黒字が18.4%増の16.27兆円。貿易収支は30.8%増の12.37兆円。輸出・輸入とも過去最大で対米の鈍化をアジア・欧州などへの輸出が補ったという。
 他方では、日本では低金利が続いたのに2004年の後半あたりから海外の金利は上昇し、2007年にかけて内外金利格差が拡大した。これは金利平価説からみて、海外通貨への需要を高め円安要因になった。

固定相場制と介入操作
 次に為替相場制のあり方は大きく分けると固定相場制と変動相場制の2つ。この両者の中間にあたる相場制度もある。たとえば固定相場であるが、一定の変動幅(バンド)は許容するもの。固定相場制に近いほどその水準を維持する介入操作問題が浮上しやすい。
 固定相場制は、国際的に取引によく使われる基軸通貨との関係で表されることが多いが、とくにドルに自国通貨を結びつけるもの(対米ドル交換レートを維持しようとするもの)をドルペッグ制という。ドルが国際的に圧倒的だった時代は、ドル高に伴い自国通貨の相場も上がるメリットがあった。しかしアメリカの国際的な退潮とともにドルペッグを維持していると、ドル安とともに自国通貨の相場も下落するリスクが表面化。ドル離れの傾向も生じている。

円安の進展と円借り(キャリー)取引
 低金利で借りた円を売って米ドルや豪ドルなど金利の高い通貨を買い、金利差の利益を得る投資手法。ヘッジファンドが活発に行ったとされ円安進行の一因とされた。この投資では、円安が進行するほど円建てでみた収益は大きくなる。
 このような投資は日本の低金利(そして円安)が持続する条件で拡大し、日本の金利が上がりそう(円高になりそう)になると減少する。日本の低金利が続いた背景には2001年以降のデフレ傾向がある。その中で、日本政府としては財政出動余力乏しく日本銀行に金融緩和を求めざるを得なかった。
 また2004年3月 為替相場への介入停止(国内景気の回復 ブッシュ政権からの介入への否定サイン)は市場に相場を委ねることを意味したが、金融緩和に加え2005年以降は米国の金利引き上げによる金利格差が拡大。
個人も外貨へ投資を増やした(外貨預金 外貨投信 外国為替証拠金FX取引)。これらも円安を進めた。このようなFX取引など個人投資家の動きも無視できない要因になっている。
 なお円借り取引の規模については、広くとらえると残高規模10兆円から20兆円台(1500-2000億ドル)といわれる(ドイツ銀行やシティグループの推計 JPモルガンは40兆円とした)。世界全体の外国為替市場の取引規模が1日に70兆円規模(6000億ドル)に十分大きな影響力をもちうる大きさだというのである。なお東京外国為替市場の規模は1日110億ドル規模(1兆円規模)である(以上の数値は2007年前半のもの)。
 為替の変動で利益を出そうという動きは、株価の動きと関係があるともされる。株安が進行すると株の評価損を為替の評価益で補おうとするというのである。
 やがてより高い収益を求めて配分の変化(外貨預金→外貨建て投信 外国為替証拠金取引へシフト 07/01末外貨預金6兆5957億円:2005/08 9兆円近くから以来減少 外貨建て投信:01/07 4兆円弱以来増加)。2006末の段階で個人の外貨資産残高は40兆円を超え、生命保険会社の残高の39兆円あまりを超える。個人の資産運用の動向はいまや為替相場決定の無視できない要因である。

円借り(キャリー)取引の解消
しかしもし円安から円高への反転が予想されるとどうなるか。円高が進行すると、外貨での運用は円建てに戻したとき損失を抱える。そこで損失を回避するため
外貨資産を売って円に戻す、逆の動きが生ずる。これは円借り取引、外貨運用の解消につながる。解消は円買いでもあるから、円高の進行をさらに加速する。
 円安の進行は日本の輸出を促す効果があった。新興国経済の活発化もあり貿易収支の黒字幅が2007年には拡大した。2007年後半からは、サブプライム問題の表面化もあり、海外の金利は急速に引き下げられた。2006年6月に5.25%あった政策金利の日米金利差は2008年1月末には2.5%まで縮小。これらはいずれも円高反転要因であり、2007年後半に入って円は急激な円高を経験した。2005年以来の円安局面は2007年6月に底(124円)を打ち円高に転じた(08年1月23日には104円台)。

円相場の動きと企業収益
円安が進行すると輸出企業(自動車 電機 海運など)では、円で見た利益金額がかさ上げされる増益効果がでてくる。また国内経済が不振の場合は、経済を再建軌道に乗せるのに円安は役立つ。円高の場合は逆である。外貨建てのコストは上昇するが、外貨建ての売り上げの効果が大きくでる。正確には期初の想定レートを実際のレートが上回った分が、利益の上乗せになってくる。
 しかし企業はこのような変動の増益を単純に喜べない。むしろ利益変動要因として警戒している。海外の顧客に対して優位にある企業の中には、輸出代金を円建てに変えるところも少なくない。円高など為替リスクを回避できること、交換手数料を節約できることなどメリットは少なくない。
 このような為替変動に対して為替予約を入れて円ベースでみた損益を確定するというのが短期的にみたリスク管理の基本である。中長期的には海外生産や海外調達の拡大が、リスク管理に役立つ。
 しかし円安の進行はこの動きに制約となる。外貨で受け取ったほうがとくになるからだ。
 貿易の伸張という点でも円安は有利。しかし日本企業が国際化し、海外拠点を増やしているので、事態は複雑である。海外拠点での生産・輸入・輸出。円安の与える影響は、複雑になっている。

為替の季節変動
 日本企業が決算期を控える時期(2-3月、8-9月)は円買いが増え円高傾向。逆に米企業の決算期(12月)は円安傾向。新年度入りの時期(4-5月)は、国内機関投資家の新たな外貨投資で円安傾向とされる。

デフレ傾向とドルキャリー取引
 2009年に入って以降、デフレ傾向が続き(消費者物価指数、国内企業物価指数、企業業向けサービス価格指数は2008年夏以降下落)、政府日本銀行の警戒感は高まった。背景には2008年9月のリ-マンショック以降の消費の低迷がある。マクロ的にも大きな需給ギャップの存在(年40兆円規模)が指摘されている。
 企業行動や家計行動が、抑制の連鎖を続けることが懸念される。企業は値下げ競争に陥り、消費者は消費の抑制に。設備投資に加え、雇用を控え、賃金の抑制(収入の減少)・失業の増加につながっている。量産効果や調達先への圧力で切り抜けられる大企業に比べて中小企業が苦しい。
 デフレスパイラル(物価下落と景気悪化の悪循環)から低成長のワナにおちいることが懸念されている。
 問題を錯綜させたことの一つは、資源価格の変動である。2008年の高騰とその後の急落がデフレ傾向を強めている。
 もう一つの背景が円高である。円高は日本の輸出のブレーキ(国内総生産の下押し)になるとともに、輸入物価を押し下げるので、デフレ圧力になるという理解がある(重原久美春「日銀 円高への警戒強めよ」『日本経済新聞』2009年10月12日)。2008年9月のリーマンショックのあと、1ドル108円程度から急激な円高が生じた。2009年1月頃から2月上旬には1ドル90円前後となった。その後2009年3月頃には100円前後まで円安に戻したが、10月-11月に向けて90円前後にまで再び100円割れ90円前後の円高となっている。
 現在の円高については米国の金融緩和政策の影響が指摘されている。低金利のドルを元手に高金利通貨などに投資するドルキャリー取引が活発化している(日本銀行が量的緩和政策をとった2000年代半ばには円キャリー取引が話題となった )。円は「高金利」ではないが、ドルよりは金利は上についている。米国の景気停滞長期化(=景気対策の持続)の観測が高まるとこの傾向が続くことになる。
(資源国や新興国では保有や決済の面でドルから離れるドル離れが生じている)
 円高傾向は輸出企業のリスク対策としての円買いや、個人の投資目的での円買いを促し、さらに円高圧力を高めている。そして日本銀行(ゼロ~2%上昇程度の上昇という物価安定の目安)に対しては現在の超低金利政策(事実上のゼロ金利政策 政策金利を年0.1%前後に置く)に加えて、さらに追加の政策を要求する圧力が高まっている。

円相場の動きへの投機・リスクヘッジ 
 為替相場の進行の方向を読み取って、利益を得ようとしたり、損失の回避やヘッジをする動きが重なる。このような動きも進行を加速する。
 輸入業者は円安が進行するもとでは為替予約(先物の円売り)を入れてリスクヘッジをするが、円高に変化すると今度は輸出業者が受け取りドルの目減りを避けようと為替予約(先物のドル売り)を入れる。業者としては、相場にかかわらず半年ほど先まで半分ほどは予約を入れてあらかじめヘッジしている。それを増やすかどうかである。
 リスクヘッジの動きは、相場の基調をバランスさせる(円高なら円高を修正し、円安なら円安を修正する)ように働く。

外国為替証拠金取引の規制強化を怠る無責任な金融庁
 ところでこのような円相場の動きに、さきほども述べたが個人の投資が一定の役割を演じている。外貨預金、外貨建て投信、外貨建て債券などへの投資と外国為替証拠金取引を通じて。しかし為替相場の変動リスクは大きく、とくに証拠金取引はリスクが高い。FX取引に個人を巻き込んだことに私は批判的である。
 1998年の外為法改正で解禁された外国為替証拠金取引FX: foreign exchange margin tradingは、個人投資家にも証拠金取引の機会を提供した。証拠金に対する取引金額の比率がレバレッジで、レバレッジの比率は2倍から40倍程度まで(やがて数百倍といったサービスを提供する業者も登場した)。証拠金倍率規制を段階的導入。2010年8月1日から50倍、2011年8月1日からは25倍が上限。
証拠金に対してこの倍率の大きさのドル(円に対応したドル)が買える。
なお証拠金の一定割合を超える評価損が生じた段階で取引を停止して清算する契約(自動ロスカット契約)を結ぶこと、レバレッジの比率を低めに抑えることは、リスクを抑える役割がある。なお高金利通貨を買うと金利差がスワップポイントとして証拠金につみあがってゆくこともメリットとして喧伝される(逆の場合は支払いが必要)。円安にふれればもうけが出るので、円高から円安にふれるところが試すべきポイントになる。しかし円安にふれると思っていたら円高がさらに進行すれば大損である。
 外国為替証拠金取引forex margin contractsは、解禁当初から予想されていたとおり、市場にいかがわしい業者があふれ、多くの個人投資家を巻き込むことになった。
そこで2005年7月施行の改正金融先物取引法では、FX業者の登録制度を導入、問題業者には業務停止命令を出すことになり、400以上あった業者は100社強に減少したとされる。希望しない人への電話勧誘や断定的判断による勧誘を禁止し(取引所取引の勧誘や訪問勧誘は解禁するなど矛盾した面もある)、登録を資本金5000万円以上の株式会社と金融機関に限定。自己資本規制比率を120%以上とした。
 登録制度はそれまでの野放しよりはましだが、登録業者で取引したから投資家は為替変動リスクから解放されるわけではない。業者は、顧客の預かり資産を分別管理するように規制されたが、「信託保全」により顧客の預かり資産の全額保護を行っている業者はなお大手に限られた。業界全体で基金などを作って顧客の保護をするといった制度も存在しない。金融庁の態度は極めて無責任なものだった。
 07年度のFX売買金額は、金融先物取引業界分(相対取引)が694兆円、東京金融取引所が運営する外為証拠金取引「くりっく365」(05年7月取引開始)が46兆円。あわせて740兆円の巨額に達している。同時期の3取引所株式取引取引の個人投資家分235兆円の3倍に達している(しかしレバレッジを考慮すると、外為証拠金取引で動いている個人投資家の資金はなお株式取引で動いているお金よりはるかに小さい)。(2009年7月には大阪証券取引所がFX市場開設)
 取引所取引は倍率は20倍以内。取引通貨は、米ドル、ユーロ、ポンド、豪ドルの4つ。取引事業者5社でスタート。取引は土曜、日曜、元日を除く24時間。証拠金は取引所に預託されるので証拠金保全は相対取り引きより進んでいる。
 ちなみに2006年3月末の外為証拠金の預かり残高は約6000億円で1年前の1.6倍(03年3月末の4倍以上)。08年3月末のFX口座数は約105万口座で5年前の20倍(矢野経済研究所推定)。
 これは個人投資家が極めて高い倍率で(教科書では初心者は2倍に抑えろというが実態は高倍率で投機的)、小さな値動きでの短期売買を繰り返していることを反映している。
 他方で企業が外為証拠金取引の利用を拡大している。これは24時間ネットで取引できること。銀行の外貨両替に比べ外貨との交換手数料が5分の1程度と安いことが理由利用だとされる。そうだとすればますます、取引業者には財務の健全性や、顧客資産の保全への配慮が求められる。

予想されていた混乱と金融庁の無責任
 最初から予想された混乱を行政がなぜあえて引き起こしたのか、そして最低限の規制強化だけで必要な規制をなぜ後回しにているのか。理解できないところだ。金融庁も外国為替証拠金取引を宣伝した記事を掲載した新聞や雑誌も生じた結果に対してあまりにも無責任である。
 2008年1月FX取引の9割を占める店頭取引に対しても、税務署への支払調書提出が義務付けられた。これまでは取引所取引だけに義務付けられ、店頭FXは実質的に野放しの脱税の温床になっていた。常識では考えられないことだが、金融庁、国税庁ともこの脱税市場を長年にわたり放置した。この市場をこのように放置して育成することに、どのような政策目的があったのかは不明だ。
 2009年8月。ようやくFX取引規制の順次実施が決まった。主な内容は3点。①証拠金を信託銀行にあずける区分管理の導入(金銭信託 既存業者は半年の準備期間を置き2010年2月から義務化)。②証拠金倍率規制を段階的導入。2010年8月1日から50倍、2011年8月1日からは25倍が上限。③顧客の損失がある水準に膨らんだ時点で強制的に取引を終えるロスカットルールの整備・順守義務化。

主流のFX店頭取引に残る疑惑:ストップ狩り
 FX市場は、店頭取引と取引所取引に別れている。主流の店頭取引は競争が激しく売買注文手数料が無料のところが多く、売買スプレッドも1ドル当たり2銭程度と低い。他方、取引所取引は手数料は店頭より高いが、税制上、取引所の方が有利とも言われる(申告分離課税か総合課税か 株価指数先物・オプション取引との損益通算が可能、損失額は翌年からの3年間にわたり繰越控除可能 他方 店頭FXは給与所得2000万以下でFXの利益が20万以下でほかに雑所得がなければ申告不要というメリットもある)。
 取引所FXの代表格が東京金融取引所の「くりっく365」(マーケットメーカー5社が提示した買値・売値から投資家にとり最も有利な水準を取引所が提示 投資家は手数料を払う)。2008年5月には大証もサービス開始。
 なお注文処理の過程で相場が変わり約定価格が注文価格とずれることをスリップページと呼んでいる。こうしたスリップが起きるのは注文の出し方と関係がある。指値の注文ならその値段でだけの売買になる。しかし逆指値といってある値段になったら買い(あるいは売り)という注文なら、その指値より上のところで買い(売り)注文が成立する可能性がある。これは逆指値では指定した値段を超えると成行注文になっていると理解できる。このようなスリップをコントロールするには許容できるスリップの範囲を指定することが有効だとされている。
 指値注文limit order
成行注文market order
逆指値注文stop order or stop-loss order
業者の側は、買値(売値)を一瞬動かして、安値で外貨を取得して、それをすぐに転売して儲けます。こうした手法をストップ狩りといいます。これは疑惑ですが、問題はこうした取引を業者側がする余地があるのが現在のFX店頭取引だといえる。
 最近では証拠金倍率を1として、実質的な外貨預金としての利用も広がっている。外貨預金に比べた売買コストの安さ(外貨預金が1ドルにつき往復手数料ネット銀行50銭からメガバンク2円のところ、1-4銭程度)が注目されている。ただしFX口座から外貨を引き出すには多くは別途手数料が必要だから使い勝手は外貨預金と全く同様とはいえないのではないか。
 
 なお外貨への交換手数料を安くして外貨建て金融商品に誘う例は、ドル建てMMFなどでもみられる。逆に外貨預金や投資信託購入を条件にセットの円預金の金利を引き上げる手法もある。
 外貨預金は通常は1ドルにつき為替手数料を日本では片道1円とる。往復で2円。つまり円預金より2%擦り減る計算だ。だから少々金利が高くてもそれが2%程度であれば、実はお話にならない。
 
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author. 
originally appeared Ma.24,2009.
correctd and repostd Nov.25, 2009 and Dec.10, 2010.  

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