宇野淳監修 日本証券投資顧問業協会投資信託協会編『アセットマネジメントの世界』東洋経済, 2010
日本では金融機関による融資が多い。融資はリスクを敬遠する(事例 1990年代後半、バーゼル規制のもとで貸し渋りが加速した)。融資だけでは機動的な資金調達はできない。資本市場にはリスクはあっても高いリターンが見込まれる資金を供給する役割がある。
証券市場の3つの役割とは 1)流動性の供給 2)多様な参加者によるリスク負担 3)価格発見機能 である。市場はこうした機能を果たすことを求められている。他方でこの役割の背景にある基礎概念については、疑問も出されている。たとえば市場の効率性。市場の効率性をそもそも仮定できるかに疑問がだされている。あるいは裁定取引。常に迅速に行われているかについても疑問が出されている。
資産運用会社の顧客に対する責任=受託者責任fiduciary dutyは、忠実義務(誠実・公正義務)と注意義務に分かれる。信任義務とは、信任関係に基づき信頼を受けたものが、相手方に対して真に忠実に、かつ職業専門家として十分な注意を持って行動する義務のこと。
算術平均arithmetic mean
幾何平均geometric mean 何%の複利で運用できているか
リスクについての仮定1)
リスクには(ベータ値で測られる)市場リスクと固有リスクがある。固有リスクは分散できるが、市場リスク(システマテックリスク)は分散できない。
収益率についての仮定2)
1)市場の各資産の収益率は不規則かつ激しく変動している:ランダムウオーク
2) 長期間で見れば変動の激しい資産は収益率が高い:リスクとリターンはトレードオフの関係にある
3)各資産の変動の方向や程度は必ずしも同じでない:分散投資により全体として変動する程度を緩和できる
4)収益率が変動する度合いは長期間では小さくなる傾向がある
投資のリスク管理
1)基本とするアセットアロケーションをみだりに変えない。
2)ターゲットアロケーションに戻すリバランスを怠らない(定期的リバランス)
3)適切なリスクレベルを維持する。とりすぎすのもとらな過ぎるのも不適切(許容可能なリスクの中でリターンの極大化)
4)保守的であること、一つに偏ることを避ける(分散投資)。
シャープレシオ:リスク対比でみた収益率。高いものを選択。
レバレッジ:レバレッジの二面性を理解する。
市場の現実を理解する。
1)投資対象としてホームカントリーバイアス、自国への偏在がある。
2)ブラックスワン:過去の事実からの推測では想像できないことが起こりうる 統計学的確率では何十億分の1の確率でしか起こりえないことが何度も起こっている low predicability(unpredictable) and large impact/after the fact ,explainable and predictable bell curve method cannot handle them-Nassim Nicholas Taleb, The Black Swan, The Random House:2007
3)アクティブファンドの成績は時間がたつと下がる。インデックスファンドに比べて10年後には勝るものは1割以下。それでも販売会社にとって報酬が高いため大量販売が続いている。手数料稼ぎのため乱売続く。→ 投信業界に根深い顧客軽視体質。
4)同様にプロが批判する毎月分配型が市場では売れる。→ 投資信託の運用に顧客は不信。だからこそこまめに現金化(配当)を求める。
ヘッジファンドとは。運用の柔軟性、絶対的リターン志向、成功報酬(インセンテブフィー)などが特徴。その運用スタイルとして、アルファ型とベータ型があるとされる。
ベータ 市場全体の動き ベータリスクをヘッジして
アルファ=市場全体の動きからは独立した収益を追求
ベータ型をロング・ショート、グローバルマクロなどに分けることがある。
アルファ型をレラテブバリューとイベントドリブンに分けることがある。
2008年金融危機の後ヘッジファンドの数は急減したとされる(2007年世界では1万前後)
#受託者責任 #ブラックスワン #インデックスファンド #ヘッジファンド #PRI