Hiroshi Fukumitsu
製品管理の質を示す言葉として6シグマσ(シックスシグマ)がよく指摘されます。これは100万個の製品を作って3.4個の不良品率の意味だとされ、この比率以下に不良品の比率を下げることが製品管理の質として問題にされます。(またsix sigmaのプロセスの流れはMAIC とかDMAIC define-measure-analyze-improve-controlと呼びます*。このプロセスについては後述します)。
six sigma from managers-net
debate over six sigma and kaizen (ところで品質管理の手法として日本発のkaizenはボトムアップ型。これに対してsix sigmaはkaizenをアメリカの企業に応用したものでtop down型だと指摘されています。第二次大戦後、日本の工業製品が優位に立ったことを背景にkaizenは国際的に研究学習されました。その成果は関心を呼んだものの、kaizenは日本の企業社会のありかたを前提にしているので、そのままアメリカの企業社会に導入しにくいとも考えられます。そこでアメリカで工夫してでてきた手法がsix sigmaです。ただし両者も目指すのはzero defectsだとされています。このzero defectsについては、このあと論じます。つまりまとめますと、kaizenとsix sigamとを比較して、企業文化や社会環境が、どのようにあるかでどちらの手法がより適合するかという問題を提起しなおしてもよいと考えられます。そして日本の企業や社会のアメリカ化とともに、かつてkaizenを世界に広めた日本でsix sigmaという手法が再学習されていると私は理解しています。)
Kaizen :a Japanese word for the process of continuous self-improvement. It means the changing attitudes, behaviour methods, systems and porcedures- it involves everyone and needs commitment. It encapsulates everyone:managers, staff, suppliers, distibutors, and wholesalers. The kaizen philosophy assumes there is room for improvement in all aspects of life both in the workplace and outside it.
Chris Sivewright, 25 Key Topics in Human Resources, Studymates, 2000, pp.110,167.
なおシグマsigmaは標準偏差standard deviationのことで、標本平均から1標準偏差(プラスマイナス1=±1シグマ)の範囲に存在するデータは68.26%といったように使われる。これを正規品の割合とみると不良率は31.74%となる。
しかし正規分布であれば100万に3.4の不良品率は4σと5σの間に該当するという疑問がでてくる。実は正規分布のシグマとは違っているのです。
the squared root of the variance = standard deviation, represented by the Greek letter σ (pronounced sigma)
the mean of the squared devation = variance
mean = arithmetical average, represented by the Greek letter μ (pronounced mu)
medean = the middle term, when data are in order
mode = the item of data that occurs the most often
Graham Lawlor, Understanding Maths, Studymates, 1999, pp.109-146, esp., 134-141.
乖離範囲 | 含まれるデータ | 含まれないデータ | その概数 |
±1σ | 68.26% | 31.74% | 10に3つ |
±2 | 95.44% | 4.56% | 100に5つ |
±3 | 99.74% | 0.26% | 1000に3つ |
±4 | 99.9994% | 0.0006% | 100万に6つ |
±5 | 99.999943% | 0.000057% | 1000万に6つ |
実は製品管理における6σは正規分布のσでは±4.5σ程度だともされます。実態にあわせて1.5σ程度ゆるめているのです。そこで製品管理におけるσを議論するときは、正規分布のσと区別してσレベルという表現を用いるべきだともされる。一流企業でも正規分布で4σの水準。売上高の25%が修理リコール費用の計算。
statistical definition of six sigma
σレベル | 現実のレベル | 想定不良品率 | 概数 |
4σ | 2σ~3σ | 100万につき6210 | 1000につき6 |
5σ | 3σ~4σ | 100万につき233 | 1万につき2 |
6σ | 4σ~5σ | 100万につき3.4 | 100万につき3.4 |
6σの議論は品質管理を重視するzero defectの議論とよく似ています。
つぎにzero defectsについて。
なお欠陥を減らすことがより廉価で効率的な生産に結び付くとの主張から、質quality orientedを強調した生産の在り方、欠陥ゼロzero defectsを提言した議論が背景にあります。zero defectsは検品・代替品再輸送の不要化など多くの経済効果があります。欠陥がないことは顧客満足や顧客の支持につながります。シックスシグマ論は限りなくzero defectsに近い状態を作り出すことを意味しますのでゼロデフェクト論とかさなります。zero defects論はPhilip B. Crosbyの名前と結びついています。またこの議論は品質管理論のWilliam Edwards Demingの名前と合わせて記憶されていることもあります。
zero defects from mindtools.com
zero defects from managers-net
なお以上とは全く違う発想として、最近注目されているのは「ロバスト設計Robust design」(頑健な設計)です。→ロバスト設計(パラメータ設計:田口玄一)製造状況や材料にばらつきがあっても製品が安定して作動するように、ばらつきを織り込んで設計する。ささいなミスが大きな問題につながらないようにする。「フェイルセイフFail-safe」。これは顧客とか従業員の誤操作によって作動したり機能を停止したり、危害を及ぼすことを防ぐ機能(装置)のこと。ロバスト設計の考え方では、設計企画段階から発想を切り替えることで、品質の悪いものをそもそも設計しないことを目指している。
さまざまな環境のもとでも安定して機能する商品をそもそも設計段階で作ろうとするものです。これは目標とする機能から出発して設計から議論するわけですが、モノを作ったあとで不良品を検査で取り除く発想とは全く異なった魅力的な考え方になっていて支持者を増やしています。
シックスシグマのDMAIC define-measure-analyze-improve-controlはマーケテイングのAIDMAと紛らわしい。4文字も重なっているものね。こちらはattention-interest-desire-memory-action 認知(AI)-欲求(DM)-行動(A)と読むようだ。そしてインターネットの時代にはAIDMAはAISASに変化していると説かれる。こちらはattention-interest-search-action-shareである。欲求の部分が探索あるいは検索searchに代わり、購入actionのあとの情報は共有shareされる。
なおマネジメントのサイクルとしてはPDCA plan-do-check-actionとかPDSA plan-do-study-actionもしばしば問題にされる。
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
orginally appeared in April 15,2008. corrected and reposted in Oct.11, 2009.