Entrance for Studies in Finance

武田薬品のシャイアー買収

医薬品売上高で世界トップはロッシュ543億ドル(5.9兆円)2位はファイザー(5.6兆円) 3位がノバルティス5.3兆円。武田の売上高1兆7000億は世界で18位の規模で世界の上位メーカーに比べて大きく見劣りする。武田にとって今回のシャイアー買収は起死回生の策。日本企業のM&Aとして過去最大で、武田としても巨額負債に加え、希薄化による株価下落のリスクも高いが、半面、仮にうまく行けば、1株あたり利益はかえって改善。武田は売上高で世界トップテンに入る国際的な医薬品メーカーに変身。規模を倍増させることで、国内の他の医薬品メーカーを引き離す可能性は高い。武田の買収戦略の成否は、日本企業の今後を在り方を占うものとなる可能性もある。

2018年5月8日 正式提案 武田(2014年からクリストフ・ウエバー社長 負債は1兆円)の売上高は1.7兆円(世界18位 時価総額で3兆9700億円) アイルランドのシャイアーは1.6兆円(世界19位 時価総額で5兆1000億円)免疫不全や血友病など希少疾患領域に強い(=ライバル少なく利益率が高い 米国での売上が多く海外売上高を増やしたい武田の希望ともあう。またアイルランドにあるため法人税率は12%と低いことも利点。売上高利益率28% 武田は9%で国内のアステラス13% 中外14%に比べても低い) 買収金額は7兆円弱。中枢神経 遺伝子難病の治療薬に強み 実現すれば武田薬品は売上高規模で世界18位から世界8位に浮上。2018年4月6日現在 時価総額で武田3兆9700億円に対しシャイアーは5兆1000億円(シャイアーは2016年に米バクスアルタを約4兆円で買収 そのため2兆円の負債あり このバクスアルタは不調とされそのためシャイアーの株価は2017年にPERで8倍程度に低迷していた。このことがシャイアー側が買収を望む理由になっていた)。4月20日4度目の提案で買収価格を1株47ポンド(7100億円)に引き上げ(4月18日の株価の24%高)、合意に至った。提案はそのうち21ポンドを現金で26ポンドを武田株で払うと言うもの。

シャイアーの純利益は43億ドル=4600億円で武田の1150億円の4倍。今回のEV/EBITDA倍率は約12倍。製薬業界のM&Aでは13-14倍とされるなか、今回の買収金額は割安との評価もある。医薬品会社は保有している薬が特許切れになると収益力が急低下する宿命がある。武田は糖尿病治療薬アクトス(かつては年4000億稼ぐ)の特許切れにより収益力低下。この買収は実績のある企業を丸ごと買収する旧来型M&A。中長期的に人材流出により継続的な新薬開発につながらないリスクあり(失敗のリスク高いとの指摘もある)。他方開発費の高騰で製薬会社は巨額の投資に臆病になっていることが医薬業界でM&Aが多発する背景になっているとのこと。近年のM&Aはスタートアップ企業(優秀な研究者や有望な新薬候補をもつ)が中心。

買収発表後、大型買収による武田の財務の悪化が懸念されている(すでに武田の負債は1兆円 今回の買収で3兆円を借り入れ=メガ3行がそれぞれ1兆円ほどの協調融資これは過去最大規模、シャイアーも2兆円の負債を抱える。負債合計は6兆円。武田の自己資本比率は現在4割程度。2008年3月の8割程度からこの間、5000億超の大型買収を3件手掛けており低下。シャイアー買収後の利息は少なくとも年1000億超。元金の返済を合わせて3000億円。これが年間の予想利益6000億円をむしばむことになる。年間の1株あたり180円の配当を維持できないのではとの懸念も出ている。そのため現在の配当利回りを維持できないとの不安が個人の売りを誘っている。もう一つの懸念は新株発行による買収資金調達。これが4兆円とずると武田の時価総額3兆4800億円時価総額の2倍以上。)株主にとっては株価が2分の1に希薄化する恐れがある(希薄化についてはシャイアーの利益が加わることで1株あたり利益は改善するとの意見もある。ただ仮にそうだとしても、買収後、武田株を受け取った欧米の機関投資家がアジア株は運用対象でないとして武田株を機械的に売却。武田株が値下がりするリスクがある=フローバック(逆流)現象。武田の株主にとってはいずれにせよ株価低迷のリスクは高い。)。買収に必要な資金は6兆円。これは2016年のソフトバンクによるアーム買収時の3兆3000億円を上回り過去最大規模。買収規模で日本のM&Aの歴史で過去最大となることは間違いない。必要資金は460億ポンド6兆円(同社の純利益は43億ドル4600億円で武田の4倍。武田の2017年3月の純利益は1150億円。大型の新薬がないことが武田が低利益の背景。シャイアーの買収金額の EV / EBITDA倍率は12倍で製薬業界の平均13-14倍より割安だとされる)。日本企業による買収としては2016年のソフトバンクによるアーム買収3.3兆円(既存事業との直接相乗効果がない買収である点が注目された)を抜き過去最大。必要資金の半分を借入3兆。残りは増資(シャイアー株主に新株を発行)とみられる。→負債規模は現在の1兆円から6兆円に達する見込み。利払い償還負担に耐えられるか? 株式の希薄化で株価は下がる?。これに対しウエーバー社長は売上が2倍 EBITDAが3倍になり1株当たり利益が大幅に増えるとしている。試算では株数は2倍に増えるが1株あたり利益は50%増えるため、合理的買収との評価がある。
Bloomberg 2018-05-08
2018-05-27(2018-08-08更新)

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