生保 販売ルートの多様化 透明性の低い保険商品
銀行の手数料収入として投資信託とともに保険の手数料が注目されている。2001年以降 保険の銀行窓口が始まると銀行窓口で販売される貯蓄性商品(変額年金や一時払い終身保険)の市場が急拡大。その売れ行きが生保各社の保険料収入を左右するようになった。生保側にとって貯蓄性商品は収益率は低いが、顧客との取引を広げる糸口として拡大された。
またいわゆる保険ショップも拡大した。保険ショップは従来型の営業の限界を補う存在になっている。
しかしこれらの貯蓄性商品は運用環境の悪化のなかで、継続がむつかしくなっている。顧客からみても利回りの低下のなかで、商品性の魅力は低下。これは、手数料の開示を進めるには、好ましい環境ではないか。販売が伸び悩んでいるいまだからこそ、手数料の開示を進めて、顧客の信頼を確保するべき。ところが開示に一部の地銀が抵抗。 → 時代錯誤にみえる地銀の抵抗
1998年に投資信託の販売が解禁
2001年4月に団体信用生命保険、損害:海外旅行傷害保険が解禁
2002年10月個人年金保険(定額、変額)、損害:年金払い積み立て障害保健
2005年12月 一時払い終身保険 一時払い養老保険 損害:積み立て火災保険 →一時払い終身保険 貯蓄性が注目され急速に伸びる 退職金の運用先としても人気 → 中途解約のリスクが理解されず 2010年以降(窓口販売件数 2009年度23万件 2010年度55万件) 苦情が急増(預金との混同 解約金の減額などの説明不足)
2007年金融商品取引法の完全施行とともに、2007年にはすべての保険商品(平準払い終身保険 医療保険 介護保険 損害:自動車保険)の銀行窓口販売が解禁された。
ネット専業保険(2008年開業のライフネット生命保険など) 外資(アフラック:アメリカンファミリー生命保険など)の攻勢 既存契約に逆ザヤ問題(予定利率2.75%以上の契約を指す バブル期は6%程度の予定利率を約束) → 2013-2014 一時逆ザヤ解消 死亡保険の需要が減り 医療・年金への対応が必要 消費者は格安保険に流れている
2013年4月 標準利率の引き下げ 個人年金 一時払い終身保険などで保険料引き上げ 2013年4月―9月 2001年の数値公表開始以来初めて「逆ザヤ」(予定利率>運用利率)解消 9生保の合計値で なお予定利率はバブル期には5-6% 2014年初で1%程度
他方で2014年 生保の販売は 円安 株高で(運用利回りが上がった)投資信託などに資金が流れ 一時払い保険の販売(利回りが下がり)は不振となった。逆に外貨建て終身保険は人気を集めたとされる また保険会社自身は 国内債券(2014年10月末 日銀の追加金融緩和)から外債に資金を振り向けたとされる
2012年度に保険商品の販売手数料は、販売手数料の4割程度、投資信託が6割程度だったが、2015年度には約半分が生命保険になるなど、保険の比率が増えている。なかでも外貨建て保険は平均7%弱という高い手数料
保険ショップ(乗り合い代理店):2社以上の保険会社の商品を扱う 大手4社 ほけんの窓口 保険クリニック 保険見直し本舗 みつばち保険 など 全国で2000店以上(大手4社で2014年9月末で1050店 ここ5年間で急増) 各社を比較したい 自宅訪問外のニーズを拡大
ネット販売にも限界。スマホでは時間がかかる。ネット専業の保険会社(アクサダイレクト生命保険、ライフネット生命保険:2008年開業など)にも窓口販売のニーズあり。
ライフネット:保険料の手数料の内訳を公開した。同社の手数料に比率は約2割(30歳 期間10年の死亡保険 3500円弱)。大手の保険料7000円の6割が手数料で消えていることを示した。
手数料収入 医療保険で初年度3-6割 翌年度以降1割程度 中立を装って実際は手数料の高い保険を売りつけている疑惑
生保の販売時手数料は 円建ての保険で2-3%
外貨建てや変額保険では4-7% ものにより10%
外貨建て保険の手数料 平均7%弱 6-7% ものによって10%とされる
投信の手数料 3.2% に比べかなり高い
保険には手数料の開示義務がないことも問題。株式や投資信託は開示されている。
金融庁 金融機関に対して顧客利益の優先を求め 2015年9月 フィデュシュアリ―デューティー(受託者責任)を求めた。 2016年年初より 変額年金(円建て) 外貨建て保険(定額年金 定額終身)について 手数料開示を生保業界に求めた。生命保険業界では2016年10月より開示の方針・・・メガバンクも開示の方針 大手地銀も開示 しかし一部地銀は開示に抵抗したとされることには本当に驚かされる。一部地銀にとって、生保の販売手数料が貴重なドル箱になっており、手数料の減少につながることを恐れたとされる。
他方で 2016年1月末以降 円が円高に転じたこと しかし他方では 一段と金利が下がり、国内の資金運用環境は厳しい。このため生保では一時払い終身保険の販売停止 予定利率引き下げ=保険料引き上げの動きが広がっており(2016年2月末) 一時払い終身保険の販売の低迷 その収入の減少にもつながっている。つまり、顧客にとっての有利さは減少し、販売も落ちている。手数料などの情報開示を進めるには、良いタイミングではないか。
2016年4-6月 円高 株安 マイナス金利 という環境のもとで資産運用収益は減少 他方 契約者の約束する利回りが低下するなか 売上にあたる保険料等収入も減少。生損保マネーは 外債 インフラファンド 社債 VC 未公開株 航空機ファイナンスなど 脱国債化を急いだ。外債投資の規模は年間ベースで4-5兆円 中心は米国債とされ そのほか インフラ 環境 医療 物流 発電など今後の成長分野への投融資もが拡大されている こうした外債・インフラへの運用シフトは2014年円安 株高 低金利 局面でも盛んに議論されたが、今回2016年の局面でも 議論されている。
生命保険協会 投資性の強い商品について開示を言明 20160415
手数料開示にあたって留意すべき事項 生命保険協会 20160901
他方で 生保は大きな流れとして 国内市場縮小に対応して 海外展開を急いでいる。背景1996年頃から市場は縮小(1997年のpeak 1500兆円:死亡保険総契約高 2014年11月末で859兆円) ピーク時の6割の市場に縮小している
アジア展開が先行するが出資規制が厳しく少額出資しかできない。
第一生命 2010年12月豪タワーオ-ストラリアG(TAL)を1000億円で買収(2011年完全子会社化)。この買収は利益安定効果(2013年にTALがオーストラリア首位に 2008年時点では4位 その後個人保険伸ばす)
住友生命が12年12月にベトナムの保険最大手バオベトHDに18%280億円出資 すでに2007年に現地生保を買収
日本生命が12年 インドの資産運用大手リライアンスに200億出資 14年10月にインドネシアセクイスライフの株式20%を440億円で取得 インドネシアは生保市場は2ケタ成長
住友生命 2015年8月 米シメトラファイナンシャル(ワシントン州)を4650億円(4666億円 個人・団体向け網羅的に扱い)で
明治安田生命 2015年7月 米スタンコープファイナンシャルグループ(中堅生保 団体保険に強い)を6250(6246)億円で
准大手として プルデンシャル(米系) T&DHD メットライフ アフラック(ガン保険に強い日本郵政と提携) ソニー
三井はさらに下の中堅
日生による三井生命買収 2015年9月発表 これでふたたび保険料収入で第一を抜くことに(3000億円弱とされる)。
2015年ナショナルオーストラリア銀行傘下の生命保険買収で大筋合意(2000億円規模)
終身保険の保険料上がる 結果として商品の魅力は低下 販売休止に踏み込む生保も増える
長期金利の低下 運用利回りの定価 → 一時払い養老保険 定額年金保険販売中止へ(2015年初)
2015年 一時払い年金保険や養老保険の標準利率の引き下げ 1%から0.5%へ
日生 第一 明治安田 住友の順位
外債投資へのシフト
2013年1月末で 国内生保の運用資産は332兆円 国債に43.9% 外国証券15.4% 貸出12.2%
20年国債利回り 2014年3月末1.5% 2014年8がつ1.3%台 外債やインフラへ
2008年度以降 生保は外債投資の比率を上げている 2015年年度当初 米国10年債2%程度 日本の20年債1.05% 契約者に対する予定利率は1%程度
資金運用 脱国債 外債 海外の社債 インフラファンド 航空機ファイナンス