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サブプライム問題:野村とみずほ

サブプライム問題でもっとも多額の損失を計上したのは「みずほ証券」と「野村證券」であった。

 みずほの損失額は2007年12月までに外貨建ての証券化商品保有額4700億円(大半はトリプルA)に対して2200億円を計上していたもののそれではおさまらず、08年1月末には2600億円。08年3月下旬には3000億円規模になるともされた。3月末には4500億円弱にまで拡大。みずほコーポレート銀行の損失1200億円弱とあわせてみずほFGの損失は5600億円にまで広がった。この損失額は欧米金融機関と肩を並べる大きさで少なくない。
 みずほについては、日本の金融機関が欧米の金融機関に比べてサブプライム関連の損失が少なかったというのは嘘だ。

 その結果、みずほは予定していた新光証券との合併を、2007年11月に08年1月から08年5月7日に延期。3月20日には09年1月に再延期するこになった。これは損失額が確定しないため、合併比率を確定できないからだとされる。そしてその後4月23日には09年1月に予定される株券電子化と重なりシステム負担が増えることを避けるとして合併は09年春以降へとさらなる延期を発表した。
 なお損失はロンドンをはじめ英米での証券化業務がつまづいた形で、ロンドンのリストラを進める方針。
 しかしみずほFGが本当にすべきことは、このような損失を生み出した「みずほ証券」の投資銀行体質を改めることではないだろうか。
 以下は推測が入るが、みずほ証券は旧興銀系とされる。ロンドンはその拠点。みずほコーポレートも旧興銀系。つまり旧興銀が2005年のご発注問題に続きまたしてもしくじったのである。
 旧第一勧業銀行、旧富士銀行系とすれば、みずほ証券系の失態の連続にはあほらしくて責任がとれないのかもしれない。

 他方、野村は2008年3月にモノライン7社との契約について、うち1社を破たん状態と認定。同社との契約保額1320億円を全額損失処理にまわした。2007年末で1700億円とされる米国のCMBSの評価損をどれだけ計上するかに関心が集まった。
 野村は2007年度中にサブプライム問題であわせて2600億円の損失を計上。07年4-12月に1100億円。さらに08年1-3月にCMBSの評価損が200億円に、金融保証会社の取引に関して約1300億円の計1500億円。これを受けてこれまでも問題を繰り返したアメリカの関連事業からの撤退をようやく判断したとされる。しかしインサイダー事件表面化が4月になることを想定して08年3月末に首脳陣の入れ替えを公表したが、新設のポストに旧経営陣を移して誰も責任を取らない形を貫いたことは理解しにくい。
 野村については海外業務での巨額損失の責任がこれまでもあいまいにされてきた。この規律のなさは何を意味するのだろうか。

 興味深いことに、みずほFGの場合も、FGの3首脳は08年4月以降もそのまま続投であった。
 サブプライム問題は外から持ち込まれた問題だから自分たちは責任がないという解釈もあるのだろうか。しかし日本の金融機関の中でこの2つの会社が出した巨額損失は突出しており、結果責任は隠しようがないと思われる。このようなありようは極めて不可解だといえる。

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Written by Hiroshi Fukumistu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
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