Entrance for Studies in Finance

Research: 依然 泥沼にあるユーロ経済

クロアチア(人口440万人 1991独立 2011年EU加盟交渉終わる)
 2013年7月1日 欧州連合の28番目の加盟国となる。(今後 セルビアとの加盟交渉開始 ラトビアのユーロ導入承認
 セルビア 偏狭な民族主義が今なお支配する国 欧州主要国と対立 コソボと軍事衝突 2008コソボが独立
 チェコ  2004年EU加盟
 スロベニア 2004年EU加盟 2007年ユーロ導入 人口200万 緊縮財政で景気低迷 
2013年6月28日 ユーロ首脳会議)
 メルケル 独首相(九月 連邦下院議会選挙)
 キャメロン 英首相 2017年の国民投票でEU加盟の是非を問う予定

ユーロの経済状態は破綻 責任を自覚しない中央銀行ECB
 銀行検査監督の来夏一元化 欧州中央銀行へ 進みそう
 預金保険制度一元化 ドイツ オストラリアなどが反対 棚上げか
 ユーロ共同債 ドイツ オーストラリアなど財政健全国が反対 まとまらず
 失業率 深刻 
 2013年4月 失業率11% 若年層の失業率は23%台 緊縮財政による経済悪化続く
2013年5月 失業率12.2%(1999年ノユーロ発足時より2ポイント高く過去最悪)
 2012年の成長率 マイナス1.5% 2013年の実質成長率見通しマイナス0.6%
 2013年1-3月 マイナス成長続く
 2013年6月11日 ギリシャで国営放送の閉鎖委
2013年7月1日 ポルトガル(2011年5月 IMF EUから780ユーロ支援)で首相辞意表明
 2013年7月4日フランクフルト ECB ドラギ総裁 
 低金利政策の持続(要するに何もしない決定) 過去最低の0.5%に据え置く

スペインとイタリアが政策転換 依然として泥沼のユーロ経済
ユーロ圏は2013年1-3月期 マイナス成長だった(前期比0.2%減 マイナス成長は6四半期連続)。3月の失業率は過去最悪の12%台。信用危機から実態経済の不振への流れは、かつての日本を想起させる。
 2013年4月 欧州中央銀行ECB(ドラギ総裁)は政策金利を年0.5%とした(5月2日に0.25%下げて0.5%とした 利下げは2012年7月以来10ケ月ぶり)。ドイツ、フランスの融資金利は年3%前後。しかしイタリヤでは4%超。スペインでは5%。背景には銀行システムの健全度の差があるとのこと。この分断を維持を主張するのは、ドイツなどシステムが健全である側。
 緊縮財政を迫られた南欧諸国を注人に雇用情勢は悪化している(2012/-4→2013/-4)。(スペイン24.4%→26.8% ポルトガル15.4%→17.8%
イタリア10.6→12.0%)これに対し ドイツ(メルケル首相)5.5%→5.4% フランス(オランド大統領)10.1%→11.0%
 この失業率はあくまで平均。イタリア(エンリコレッタ首相)の25歳未満の失業率は40%を超えたとされる。財政の緊縮に加えて増税もあり、このような引き締め一本で経済は立て直せるものだろうか。エンリコ・レッタが就任演説(4月29日下院就任演説)で緊縮路線からの転換を示したことは当然だ。
 こうした動きはスペイン政府が4月26日に発表した経済計画で財政赤字比率の達成期限の先送り(GDP比3%達成を2014年から16年に先送り)したこととも対応する。足元の雇用情勢悪化(1-3月期の25歳未満失業率は実に57.22%)をみれば、決断は当然である。
 ではなぜだろうか。実はECBは白川日銀同様に保守的。国債の大量購入などの政策を回避している。それが各国政府のモラルハザードに
つながるとの伝統的思考。こういう保守派が欧州には多い(代表格はドイツのジョイブレ財務相 他方緩和派にバローゾ欧州委員長)。・・・しかし伝統的思考が結果として政治や社会の不安定性につながっていることに注目するべきだろう。
 国家が機能していないとも言えるほどの高失業率のなかで、緊縮政策の先延ばしは当然の判断。これに対してECBはしかし期待に応えているのだろうか。確かに金利は下げている。しかしそのほかの面ではどうだろうか。
 緊縮の成果はいくばくかの財政健全化。しかし犠牲が大きすぎるのではないか。市場の関心はPIGSの債務より、いまではFISH(フランス イタリア スペイン オランダ)の景気低迷とも。南欧の若者が大量にドイツに流入しているとされる。ドイツによる自国優先主義は結果としてドイツ社会の不安定化という、しっぺ返しをもたらしているのではないか。流入しているのは高学歴の若者が多いとされるが、その数は2012年前半だけで50万人。ドイツはこれらの若者に仕事を与えられるだろうか。
 この混乱のなか 中東欧諸国がユーロ加盟を目指していることにも驚かされる(EU加盟は現在27ケ国 ユーロ加盟は2013年4月現在で17ケ国。2007年以降にスロベニヤ、キプロス、スロバキアが加入。2014年にラトビア加入が決まっている。他方 英国 スウエーデン デンマーク ポーランドなどはユーロ圏には参加していない)。
 各国の国債の外国人保有比率の低下 融資の国内回帰が進んでいるとのこと。そうであれば、ユーロはゆっくりと分裂の方向にあるのかもしれない。

調整能力喪失を示した ユーロ圏財務相会議による課徴金決定(2013年3月16日土曜日)
 2013年3月16日 前日15日から開催されていたユーロ圏財務相会議はキプロス救済の合意を発表したが、
この合意内容が新たな問題の火種になった。これは預金者に不安を広げる愚策だが、これをユーロ圏財務相会議が
決定したところに、ユーロ圏財務相会議の無責任ぶりは極まっている。
 地中海東部に位置するキプロスは人口112万9000人(2012年推定)。面積は9251平方キロメートルで四国の約半分。
首都はニコシア。キプロス政府は2012年6月に、欧州連合ユーロ圏諸国と国際通貨基金IMFに対して金融支援を
申請したものの救済合意まで時間がかかった。
 財務相会議は今回合意を成立させたがその内容は無責任で、落ち着いていたユーロ問題をユーロ財務相
会議は自ら再燃させた。この決定は世界経済や金融システムに対して極めて無責任なもので強い非難に値する。
 合意は最大100億ユーロの金融支援をすること。問題は見返りで10万ユーロ(1250万円)超の預金者から9.9%。それ以下の預金者
から6.75%の課徴金を1回限り徴収するという点。また法人税を10%から12.5%に引き上げるとのこと。
 こうした課徴金はそもそも前例がない上に課徴金の規模は支援額100億ユーロに対して58億ユーロとかなり大きい。
 ・銀行破たん時に預金者に広く負担を求めるべきか。しかし今回の銀行はまだ破綻していない。
 とくに問題があるのは少額預金保護の前提を勝手に崩したこと。これまで信用制度を維持するために作り上げられていた根幹を
ユーロ財務相会議は無責任にも否定した。
 支援の合意が15日(金)。18日(月)は銀行休業。そこで19日朝営業開始前に課徴金を差し引くというのが当初案。
 予想されることだが16日朝から人々は銀行ATMに殺到して資金を引き出そうとした。
 大口の移動を止めるオンライン取引対策は取られたとのこと(大口の決済取引を凍結)。

債務危機国の銀行預金を守らないことを決定公表したユーロ財務相会議の無責任さと無能ぶり
 しかしこうなると銀行預金の信頼は地に落ちたに等しい。そもそも論で国債のような市場性商品と銀行預金とは本来
区別するべきもの。しかし財務相会議は実に簡単に預金者保護を否定した。しかも少額預金の保護という最後の一線すら
否定した。この決定の影響は大きく、この態度は極めて無責任だ。
 銀行預金が一夜にして国家間の合意で減るということになれば銀行預金をする人は今後いなくなるだろう。
 ほかの債務危機国ですでに見られる預金流出は一層加速して、これらの債務危機国では広く預金流出が加速して
金融システムの破壊が進み(資金の流れが悪くなり)、経済再建が阻害されることになる。
 この財務相会議の決定は金融商品で預金の扱いを区別していた大原則を崩すもので、
取り返しのつかないとんでもない愚策、蛮行だといえる。
 背景には、キプロスの銀行がマネーロンダリングに使われている問題があり、銀行業務の実態が、国際的な資金の仲介業務に
なっていたのかもしれない。その意味では銀行業務とは何か。どうあるべきかという議論をするべきだというのはその通りだ。
 またその中心に租税回避目的のロシアからの預金があるとされる。キプロスの銀行資産はGDPの8倍(約7倍)。EUの平均は3.5倍。
 キプロスは地政学的に重要な位置を占める。
 ロシアはトルコとの対抗上 キプロスとの交流を重視している。トルコとの関係が冷え込んでいるイスラエルもキプロスに接近。
 他方、英国はキプロス内に空軍・海軍基地を維持、シリア反政府派と連携している。他方、ロシアはシリアに基地を維持しており
アサド政権が崩壊することに危機感がある。アサド政権が崩壊すれば、キプロスに接近する可能性も大きい。逆にロシアとキプロスの
接近は 欧州諸国として阻止したいところ。焦点の一つはキプロス東南 大陸棚での天然ガスの採掘と開発。
 銀行部門の規模はGDP比で適性規模はあるか どれ以上が過大か。
  → 日本の一部の学者は金融立国を理想視していた。しかし金融立国の危うさがヨーロッパの危機では
   浮彫になった面もある。
  → 金融立国アイスランドの破たん 2008年10月6日 非常事態宣言

再び浮き上がる「金融立国」論の結末
 こうした過大な銀行業務も焦点でEUはこれを3群の1程度まで縮小見込む。
 銀行預金の3分の1はロシアマネーともされる
 そのうち3分の1はロシアからのもので190億ドルに達するとも。となるとロシアによる救済も現実的。
 実はキプロスはロシアから2011年末に25億ユーロの支援融資を既に受けている(2016年が返済期限)。
 そして現在、事実ロシアとも支援問題(返済繰り延べなど)を協議している模様だ。
 見返りは国営銀行の株式や、天然ガス田の権益の譲渡とされる。→ 結果としてまとまらず
 ロシアのほかは英国、中東欧などの富裕層などが大口預金者。
 経済規模はギリシャの10分の1程度。
 なおキプロスの銀行の経営が傾いたのはギリシャ国債を大量に保有しているため
 同様の状況のスロベニアでも起きている 同国では不動産バブルの崩壊があったほか
銀行が東欧向け不良債権抱える。しかしキプロスと違い、スロベニアは銀行の資本増強の資金を自前で
まかなえる。

ギリシャ議会は預金課税案を全員で拒否 銀行は休業へ 少額預金全額保護に転換:時すでに遅し
 18日 預金者の反応におどろいたユーロ圏は少額預金(10万ユーロ以下)の全額保護の方針を示したが時すでに遅し。愚行の決定への
不信感が広がってしまった。加えて58億ユーロの課徴金額は見直されなったので、大口預金に対して当初案以上に過酷な徴収が
予想される。19日 議会は預金額2万ユーロ以上に負担を負わせる課税案を全員で否決した。
・銀行破たん時に高額預金者に負担を負わせるべきか。
 キプロス政府は銀行預金に対する課税案を議会で通そうとしたが、賛成する議員は一人もいなかった。そこでキプロス政府は
19-20日の銀行休業を決めた。

銀行預金への信頼を奪った、ユーロ財務相会議の無責任 無策ぶりは目に余る
 もともと銀行預金者に負担を求める案は、ギリシャ政府側が持ち出したというのが、財務相会議の弁明。しかし経緯をみると
財務相会議の無責任ぶりは明らかだ。銀行預金保護撤回という信用制度の根幹をゆるがすということが
今後の処理のルールになれば、混乱の拡大は止めようがないのにその決定を下したからだ。
 ユーロ財務相会議は、極めて無責任なかつ混乱した状況を自ら作り出したのでありその責任は重大だ。
 こうした無責任な決定しかできないのであれば ユーロ圏は速やかに解体するべきではないだろうか。

 3月22日  キプロス議会が
      預金課税に代わる財源案(不良債権処理による救済資金の圧縮など)・預金引き出しに対する資本規制案などを可決
3月23日 キプロス政府 IMFと交渉 
  24日 ファロンパイEU大統領と直談判 → 10万ユーロを超える大口預金について削減
     10万ユーロまでは全額保護 10万超は4割カットの可能性
     → ロシアは反発 
3月25日未明 キプロス支援でユーロ圏諸国合意
     キプロス二大銀行の縮小整理で高額預金者に大幅な負担求める(預金カット)
 3月25日 キプロス中央銀行は銀行の休業期間について26日からの営業再開を否定 27日までの延長を発表 
 3月27日夜 欧州中央銀行から50億ユーロの現金が到着

銀行が営業再開 混乱続く 経済危機がロシアに波及する懸念も指摘されている
 3月28日(木)正午 キプロスで銀行が営業を再開 預金引き出しを1日300ユーロに制限。国外送金についても5000ユーロ超の商取引
には当局の承認が必要。現金の国外持ち出しは1000ユーロまで。(1ユーロ 120円程度)
 今後 法人税率の引き上げもあって キプロスに拠点を置く法人がキプロスから移転。キプロスの経済モデルはここに終焉し、
経済的に完全破たんすることも。
 こうしたキプロスの混乱は、キプロス預金の3分の1を占めるロシア経済に混乱をもたらす懸念も指摘されていた。

original in March 24, 2013
re-posted in June 2013

アイスランドの非常事態宣言(2008年10月6日)
ドバイショックについて(2009年11月25日)
ギリシャへの資金支援で合意(2010年5月2日)
アイルランドへの金融支援決定(2010年11月28日)
ポルトガル EUに金融支援要請(2011年4月6日)
綱渡りのユーロの信認(2011年7月11日)
2011年10月27日 EU首脳会議 orderly defaultで合意
2011年12月9日 EU首脳会議 財政規律強化の新条約づくりで合意
2012年1月14日 S&P ユーロ圏9け国の格下げを実施
出口のないユーロ問題(2012年6月)
キプロス:銀行預金課税をめぐる混乱(2013年3月)
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