Entrance for Studies in Finance

HPの企業買収戦略と英オートノミーの不正発覚(2012年11月)

IT企業の間では高成長の企業を割高の価格で買収することで 成長鈍化を免れる戦略がみられる。マイクロソフト、グーグル、フェイスブックも例外ではない。
多くのハイテク企業が実施しているが「危うさ」が伴う。買収後、ギャッシュを稼げず、お荷物になるケースが多い。今回問題が表面化したのは米HP。

資本市場の不正を示す オートノミーの不正経理事件
2011年米HPは英国の業務用ソフト大手英オートノミー(ロンドン証券取引所上場)を約110億ドルで買収
→2012年11月 オートノミーの不正経理が表面化 8-10月決算でHPは88億ドル(約7200億円)の減損処理(このうち50億ドル以上が不正経理によるもの)
68億ドル5400万ドルの最終赤字。
オートノミーの監査はデロイト
HP側の資産査定はKPMG
買収助言は英国はバークレイズキャピタル 米国はゴールドマンサックス
いずれも会計不正を見抜けず 買収手数料は受け取っていた。彼らはなぜ不正経理を見過ごしたのか。

HPの買収時のCEOは前任のレオ・アポテカー
現在のCEOはメグ・ホイットマン(2011年秋就任)
ホイットマンは5月にオートノミーのCEOマイク・リンチの退任後に不正経理が分かったとした。
5-7月期にも、過去の企業買収に伴うのれん代減損処理で90億ドル近い最終赤字。これは2008年にITサービス大手の米EDSを139億ドルで買収したもの(狙いはサービスやソフトへの移行にあったが、サービス価格の下落やクラウドコンピューテイングの普及が逆風に)について80億ドルの減損処理(業績と株価の低迷を受けて)をしたもの。
ホイットマンは5月に事業再編計画を発表。全社員の8%にあたる2万7000人を2014年10月末までに削減とした。その後 9月に削減数の2000人上乗せ、リストラ費用を35億ドルから37億ドルに増やすとしていた。
前任者の企業買収戦略の後始末。景気減速とタブレットとの競争激化で、主力のパソコン事業が減収。業務用機器の売り上げも減っていることが背景。スマートフォンやタブレット化の大きな流れに、HPは対抗しきれていない。

2012年7月 HPはジム・チェイノス(2001年に破たんしたエンロンの不正経理を見抜く)から空売り宣言を受けた。
度重なる買収で企業価値を破壊している!
企業買収にもかかわらずCFがそれほど増えない
Value Trap(株価が割安でも株価が上がらない状態)
Value(割安株)とValue Trap(割安株もどき)とはよく議論される用語のようだ。割安株だと思って購入しても、なかなか上がらない株のことのようだ。fundamentalsが悪いという言い方がある。その企業が業界が大きな困難にあるといったいった言い方ある。
value trap = investopedia

HPの株価は2012年11月20日に一時11.35ドルまで下落。同日終わり値ベースでも年初来55%以上下落。時価総額は約230億ドル(約1兆9000億円)

他社は大型小型のタブレットで激突中
 HP同様の企業買収戦略をとっていたのがMS(マイクロソフト)。そのMSは2012年10月サーフェスの発売に踏み切っている。
 MSは2007年にネット広告のアクアンテイブを63億ドルで買収したが、ネット広告でグーグルとの差を埋められず(2008年ヤフー買収に失敗)、2012年4-6月に62億ドルののれん代減損処理の追い込まれている。やはり企業買収では成功していない。2007年にフェイスブックに出資。2011年にはスカイプを買収。しかしMSのオンラインサービス部門は赤字が続き(オンライインは赤字 ゲームも不振。ゲーム部門も赤字)、(基本ソフト、ウインドウズそして業務用ソフトのオフィスをもつビジネス部門、サーバー用ソフトSQLサーバー(競合するのはオラクルのノソフト)を保有するサーバー&ツール部門などは高収益:在庫をもたずOSをPCメーカーに売るビジネスモデルは高収益であるにもかかわらず)次の成長戦略はまったく見えない状況が続いている(クラウド部門の拡充を急ぐ グーグルはOSを無償提供するビジネスモデルでスマホのの世界で地歩を占めた)。
 こうしたなか2012年10月新OS「ウインドウズ8」の発売開始(前回ノウインドウズ7発売2009年10月から3年経過。このセブンよりは好評であるようだ ウインドウズフォン7搭載の携帯は2010年10月に発売が始まった)、MSがそれに合わせて自前のタブレット「サーフェス」の発売に踏み切ったことが、注目されている(スマホ用OSとしてはウインドウズフォン8を発売)。過去最大の20億ドルの販売促進費を使うこともあり、攻勢を強めている。
 タブレットの発売で先行するのはアップル(工場をもたずしかしかわりに直営店を全世界に展開)のiPad(2010年4月発売 9.7型の大型で粘ったが:2012年3月にはThe New iPad発売。他社の小型に押されて2012年11月に7.9型の小型タブレットiPad miniを投入 コンテンツ販売での収益確保を目指す他社に比べて329ドルの高値に投入したことからアップル株は急落した、なお日本ではソフトバンクモバイルにク加えてKDDIが発売することになった。ところでKDDIはソフトバンクによるアップル端末販売独占を2011年10月のiPhone4S販売開始で崩し、今回さらにタブレットでも崩した形。これらはデータ通信収入の増加につながる。KDDIは2012年9月のiPhone5:3.5から4に大型化・薄く軽量・処理速度早く・LTEに対応。発売開始でテザリング機能導入を表明。その後 ソフトバンクにテザリング機能導入で追随させた。これに対してアップル端末を持たないNTTドコモは、次第に縮小している。なおスマホ端末でのアップルのシェアは3割。しかし利益のシェアは7割とされている。スマホ端末でのアップル優位は続いている タブレットでのアップルノシェアは6割とされる)に対して、アマゾンのキンドル(2011年に小型 2012年11月に大型も投入)が争う中、グーグルがネクサス(2012年6月末にネクサスセブンを投入 2012年11月にはネクサス10を発売開始)を投入した。これは、自前のタブレット(最終製品)で、検索での広告料収入や、コンテンツ配信ビジネスに乗り出す構えを示したもので、グーグルのビジネスモデルの転換を意味している。
ここで大事なのはもはやパソコンかタブレット(あるいはモバイル端末)かという形態ではなく、さまざまな端末に対応できるプラットホームの提供にあるのではないだろうか。その中ではっきりしていることはパソコンの比重の低下。場所とか時間の制限を受けないモバイル機器(スマホ タブレットなど多機能端末)にネット機器の比重が移っていること。その対応を各社が競っている。
 MSによる独自タブレット、サーフェス投入も同じで、ビジネスモデルの転換を示したもの。このようにタブレットの世界が、IT巨人間の激戦となっているなかで、HPの苦境は、少し次元が違っている。HPなりの新たなモデルを提示する前に、争う前に不正経理(あるいは過去の買収戦略の破たん)で足を取られた形だ。

Area Studies Business Models Business Strategies
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