2016年6月に拡幅工事が完了したことは記載のとおりであるが、直近の報道によれば(2023年8月―9月)、干ばつの影響で閘門の上げ下げに必要な水が不足し、パナマ運河では2023年の初めころからの航行制限が解かれていないとのこと。1日あたりの通過船舶数のほか、積載量も上限を規制しているようだ。異常気象の影響はこのようなところにも及ぶわけだ。
パナマはスペインがまず占領。やがてコロンビアの一つの州の形となった(1855年)。その後、この地に運河を建設しようとしたアメリカは、コロンビアからの独立を画策して成功した(1903年)。そして1914年にパナマ運河が開通し(約80km)、太平洋と大西洋を南米南端のマゼラン海峡経由に比べ大幅に短縮した。パナマ運河には米軍施設が置かれ運河も米国が管理することが続いたが、第二次大戦後、パナマでも民族主義が高まり、1977年に米国との条約で1999年に返還することが定まり、1999年末に返還された。その後 2006年に拡張工事が決まり(主幹事はみずほコーポレート銀行)、2007年から拡張工事が始まり、2016年6月26日 予定より2年遅れで開通した。総工費52億ドル。幅の拡幅のほか水深を深くし、大型水門が整備された。これまでより大型の船やLNG船(通常の幅は40m超)の航行が可能になり、日数、輸送コストともに下がる見込みとなった。
拡幅によってこれまで幅32mの船しか通れなかったが、最大で幅49m 全長366m 喫水15mの大型船でも航行可能になり、懸案のシェールガスの輸入のコスト引き下げにつながる。ところで原油安と荷動き鈍化による船舶過剰の影響で、2015年夏以降 日本発欧米向けの海上コンテナ運賃 ばら積船運賃ともには大幅に低下した。そこでパナマ運河に大型船を投入することで、大手海運会社は採算の改善を期待している。
なおパナマでは国外源泉所得は非課税。パナマ文書により、そのオフショア金融センターとしての在り方も注目されている。