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デジタル化の未来都市

2024-07-04 02:07:59 | 日記

デジタル化の革新とリスク

人類の繁栄を牽引してきた空間は

都市である。

 

技術や社会を変革し、時代を動か

す原動力を生み出してきた。

 

近年はデジタル技術で都市を刷新

する試みが世界で加速しているが、

そこには新たなリスクが潜んで

いる。

 

現代文明の礎は何処に?

文明は約5000年前に古代メソポタ

ミアの都市で誕生した。

 

文字、暦、数学、法律、車輪、冶金

など現代文明の礎はいずれも都市で

生まれたものだ。

 

なぜ都市が重要なのか?

 

それは人が集まることで、技術や

社会にイノベーション(革新)が

起きるからだ。

 

多様な人々が交流すると異なる

知識が結合し、新たな発想や

技術が生まれる。

 

車輪と馬が結びついて馬車が

誕生したのが典型であろう。

 

都市は産業や経済だけでなく、

文化や学問の中心地でもある。

 

情報の共有と蓄積で教育や医療

も向上し、多くの人を引きつけ、

さらに繁栄して行く。

 

この構図は現代も変わって

いない。

 

都市の形成は、技術革新の

歴史と密接に関わっている。

 

大型帆船が登場した大航海

時代は貿易拠点として港湾

都市が栄えた。

 

産業革命によって農村から

工場に人々が移動し、鉄道

や自動車の普及で都市は郊外

に拡大した。

 

高層ビルが立ち並ぶ近代都市は

鉄骨とエレベーターによって

誕生した。

 

故に、テクノロジーは都市の

興亡を左右すると言える。

 

現代は都市に住む人が急増して

おり、世界人口に占める都市人

口の割合は、2050年までに70

%近くに達する見通しだ。

 

そんな中、途上国で深刻な交通

渋滞や環境汚染が懸念される。

 

また、先進国では地球温暖化

への対応が急務で、省エネで

持続可能な都市への変容が

求められている。

 

こうした都市問題の解決手段と

して浮上したのがデジタル技術

である。

 

インターネットや人工知能(AI)

を駆使し、都市をより効率的で

便利な空間に変える動きが世界

中で広がっている。

 

データの宝庫

都市のデジタル化は、

「スマートシティ-」

と呼ばれる。

 

内容は地域によって異なるが、

日本総合研究所の主任研究員

のA氏は、

「デジタルの技術や道具を賢く

 使って、暮らしやすく、持続

 可能な社会を構築する取り組

 みだ」

と解説する。

 

代表的なスマートシティーは、

全てのものをインターネット

に繋ぎ、都市にセンサーを

張り巡らせる。

 

人の活動や交通、環境、イン

フラ設備などのデータをリア

ルタイムで大量に収集し、AI

で分析して都市全体の機能を

最適な状態に制御する構想だ。

 

例えば、信号の制御で交通渋滞

の緩和や物流の効率化につなげ

たり、電力のデータを省エネや

安定供給に役立てたりする。

 

センサーで大気汚染や災害の発生

を監視するほか、ゴミの量を自動

的に感知して効率的に収集できる

ゴミ箱や、銃撃音を検知すると

警察が急行する防犯システムも

ある。

 

A氏は、

「都市はデータの宝庫である。

 企業や自治体のデータも資

 源として活用すれば、医療

 や産業などさまざまな分野

 で改善策が見えてくる。

 人の生き方も変えるだろう」

と指摘する。

 

欧州や米国では既存の都市を

基盤とするスマートシティー

が多いが、中東や中国では

新たに建設する都市に導入

するケースが目立つ。

 

いずれも経済のグローバル化

が進む中、魅力を高めて都市

間の国際競争を勝ち抜く狙い

がある。

 

現在のところ、日本は出遅れて

いる、と揶揄されている。

 

サイバー攻撃の懸念と現実

スマートシティーは交通事故

や災害を抑制する反面、大き

なリスクを新たに抱えこんで

いる。

 

データ流出や故障によるシス

テム障害の他、最も懸念され

るのはサイバー攻撃による

インフラの連鎖的な被害だ。

 

従来の都市は電力や交通など

インフラを別々のシステムで

管理するが、スマートシティー

では、これらを繋いで全体の

効率化を目指す。

 

このため、どこかに攻撃を受

けると全てのシステムに障害が

波及し、全体の機能がマヒして

しまう恐れが高まる。

 

この脆弱性がサイバー戦争で

狙われる可能性がある。

 

北大西洋条約機構(NATO)などの

サイバー防衛協力センターは

2020年の報告書で、

「スマートシティーへのサイ

 バー攻撃が安全保障上の

 重大な脅威になる」

と指摘し、30年に起こりうる

シナリオを示した。

 

それによると、

「同盟国の首都の大都市が

 サイバー攻撃を受け、

 通信システムがマヒし、

 ネットワークがウイルス

 に感染する。

 ほぼ同時に、行政のコン

 ピューターは機能しなく

 なり、衛星利用測位シス

 テム(GPS)は切断されて

 しまう。

 都市人口の半数で電気と

 水道が止まる中、運河と

 ダムの制御システムが

 ウィルスに操作され、

 大規模な洪水が発生する

 深刻な事態に発展する。」

 

報告書は、

「今後10年間で、欧米の自治

 体の大半がスマートシティー

 を導入するだろう。

 地域を超えてシステムが繋が

 ると、複数の都市が同時に

 被害を受ける可能性が高い」

と警告した。

 

スマートシティーの課題は

他にもある。

 

それは、収集したデータの

権利やプライバシーの問題

である。

 

以前に、企業側が収益確保の

ためデータの利用を拡大しよ

うとして住民側の反発を買い、

計画が中止に追い込まれた

ケースがある。

 

一方で、AIによる省エネは、

スマートシティーの売り物

だが、AIはコンピューター

の消費電力が膨大なため、

それを含めると本当に省

エネになるのかは不透明

である。

 

未来の実験場

スマートティーは「都市OS」

と呼ばれるデータの連携基盤

が重要な役割を果たす。

 

PCでいえば、基本ソフト(OS)

のWindowsに相当するもので、

これを普及させた者が世界の

デジタル都市づくりの覇権を

握る、と言われている。

 

そんな中、つばぜり合いをして

いるのは欧州と中国である。

 

野村総合研究所のエキスパート

B氏は、

「欧州連合(EU)と中国はスマー

 トシティーの基盤技術を標

 準化して輸出したいという

 野望を持っている」

と話す。

 

背景には米国の巨大IT企業に

対抗し、その支配から逃れる

狙いもある。

 

ただ、スマートシティーの

構築には巨額の費用が必要で、

B氏は、

「問題はその投資を回収できる

 かどうかである。

 かなり難しいだろう。」

と強調する。

 

都市づくりは、これまで

建築家や建設会社が手掛

けて来たが、

「スマートシティー」

時代の到来で、IT企業の

影響力が強まる地殻変動

が起き始めている。

 

IT企業は、都市空間をデジ

タル空間に再現することで

支配領域に取り込み、将来

は、都市開発の主導権を握る

可能性が大きい。

 

都市には、

「人口集中による変革」

の利点、

「密集に伴う環境汚染」、

「感染症」

などの弊害、

が古代から常に併存して

いる。

 

新型コロナウイルスの

大流行で、都市の弱点が

露呈し、テレワークの

実施で人口集中が緩和

されたが、

「スマートシティー」

の導入が加速すれば

人口密度が逆に高まる

に違いない。

 

都市は革新技術が投入

される場であり、今後

も、イノベーションの

舞台となることは間違い

ない。

 

人類は直面する課題を

デジタル技術で克服

できるのか?

 

スマートシティーが、

その壮大な実験場に

なることは明確である。

 

 

<未来の都市>

 

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