概要
家事は、
生活をする
上で、
必要な行為
である。
それ故、
人間は、
その負担の
軽減方法を
考え続けて
きた。
様々な方法を
生み出したが、
その1つに
家電がある。
近い将来
その家電の
能力を超す
革命が
人工知能(AI)
によって
現実化する
かもしれない。
家事負担の歴史
家事は、
人間の生存と
直接かかわる
行為である。
その担い手は、
生活様式や
社会の変化で
様変わりした。
狩猟採集時代
の家事は
火おこし、
料理
などが主で
家族全員が
担い手で
あった。
その後
文明の発展
と共に
家事をしない
支配層が
生まれ、
家事は奴隷が
するものと
なった。
そんな中、
近代西洋では、
産業革命に
より
農業社会から
工業社会に
移行した。
それ故、
男性は現場で
働き、
女性は主婦と
なるのだが、
中流以上の家庭
では、
家事を使用人に
やらせていた。
ところが、
使用人が低賃金
を不満に感じた
ため、
使用人の数が
減少していく
事となる。
そのため、
主婦が自ら家事
をする状況と
なり、
結果として、
主婦の負担が
増え、
その軽減策と
して、家事を
機械化する
需要が大きく
なった。
この事が
家電製品の
誕生に繋がる
流れとなる。
結果的に、
家事は
自分でする
ものから、
機械にさせる
ものとなった。
また、
家事は
生活する上で
重要な労働で
ありながら、
身体的な負担が
大きく、
手間もかかり、
無報酬の労働で
あるため
敬遠されてしまう。
そんな中、
家事の軽減に
影響を及ぼした
のが、
水道とガスの
登場である。
従来の
「井戸水の
くみ上げ」
「かまどの
火おこし」
という
重労働から
主婦を解放した
のである。
さらに
20世紀に入り
家電製品が家事
に革命をもたら
した。
例えば、
洗濯は、
洗濯板を使う
大変な重労働で
あったが、
電気洗濯機の
登場でかなり
楽になった。
とは言え、
残念ながら、
多くの家電で
生活が便利に
なっても、
家事に要する
時間はそれ程、
減少していない
事が国内外で
報告されている。
所謂、
「パラドックス
現象」
が現実になった
のである。
因みに
「パラドックス」
とは、
正しそうな前提
と妥当に思える
推論から、
受け入れがたい
結論が得られる
ことを指す。
では、
どうしてこの
現象に陥った
のであろうか?
専門家のS氏に
よると、
戦前から
高度成長期に
渡り、
日本の家事
時間を分析
した結果
洗濯機が、
戦後普及した
にもかかわらず、
洗濯の時間は
殆ど減少しなか
ったのである。
その理由だが、
衣類の購入増加
や
清潔志向の向上
で、
洗濯の量や頻度
が増加したから
である。
背景には、
経済成長に伴う
生活水準の向上
がある。
と言うのも
戦前は
氷を利用した
冷蔵庫に食物を
保存したが、
戦後は
電気冷蔵庫が
人気となり、
同時に
電気炊飯器も
普及したので
ある。
ところが、
生活の質が
向上して
食材も豊富
になり、
買い物や食器
を洗う時間が
増加したため
結局のところ
主婦は多忙と
なったのである。
S氏は
「家電の普及で
家事の時間が
減少した事実
は存在しない。
家事の中で
裁縫の時間は
減ったが、
その理由は
ミシンという
家電の普及では
なく、
既製服を購入
する現象が
起きたから
である」
と指摘する。
終わりのない課題
日本女性の家事
時間は
高度成長期以降、
概ね減少傾向に
ある。
概ね、
という部分が
ポイントで、
主因は少子化や
結婚しない女性
が増加したこと
にあり、
既婚や育児中の
女性の家事時間は
相変わらず減少
していないので
ある。
これこそが
現在、
抱えている
大きな課題と
言える。
言うまでもなく、
家電メーカーは、
家事時間を減らす
「時短」タイプの
製品開発に注力
している。
例えば、
①自動で乾燥する
食器洗い乾燥機
➁干す手間が要ら
ない洗濯乾燥機
③床を自動的に
掃除するロボ
ット
などである。
加えて、
④食材を入れる
だけで料理を
作ってくれる
自動調理鍋
⑤無洗米や
水を
自動的に
計算する
炊飯器
も登場した。
家電にとって
「時短は終わり
のない課題」
であり、
子育てや共働き
世代の家事時間
を減らすための
開発がさらに
加速しそうで
ある。
ところで、
AIによる技術革新
は、家事の時間を
いかに減らせる
のであろうか?
その問いに対して
専門家のN氏が
英オックスフォード
大と行った共同調査
では
日英の専門家が
17種類の家事の
自動化について
調査した結果
10年後に、
家事の時間を
約4割減らす
ことが技術的
には可能だ、
との事である。
内訳として、
時間を減らせる
可能性が高い
家事は
①食料品の
買い物
➁食器洗いと
片付け
③料理
④家の掃除や
片付け
などで、
時間を減らせる
可能性が低い
家事は
①手がかかる
育児
➁ペットの世話
であった。
更に、
それぞれの家事
に要する時間や
テクノロジーを
利用する際の
費用負担などを
考慮すると
日本の30代女性の
家事時間は約2割
減らせる
と予測した。
N氏は、
「日本は女性の
賃金が安いため、
安価でなければ
テクノロジーは
利用しづらい。
家事の時間を
減少するには、
女性の賃金上昇
が必要不可欠で
ある」
と話す。
テクノロジーの進化
家電に続く
テクノロジー
として、
将来に期待が
かかるのは
ロボット
である。
では、
全てをやりこなす
家事ロボットは、
いつ頃登場する
のであろうか?
専門家のM氏は
「以前から、
20年後
と言われ続け
ているが、
すでに
50年が経った。
これからでも
さらに20年は
かかるであろう」
と開発の難しさを
語る。
その理由は、
家の中は人間には
簡単でも、
ロボットには難しい
ことが多いからで
ある。
例えば、
工場のロボットが
扱う製品は同じ
大きさだが、
家には
食器だけでも
多様な大きさが
あり、
掴む事さえ厳し
い。
また、
床にも移動を
阻む多種多様
なものがある。
つまり、
ロボットにとり、
家は
かなり過酷な
環境の職場なの
である。
即ち、
人間の手足の様に
様々な動きをする
性能を持つハード
の開発は現時点
では難しい。
とは言え、
頭脳に当たる
ソフトの開発は、
AIの登場で
解決策や突破口が
見つかりつつある。
具体的には、
二足歩行の人間型
ロボットの利点は
階段を上れること
や
食器棚のような
高い所に手が届く
ことだが、
欠点として
倒れないように
制御することが
難しいのである。
この問題は
AIで解決可能
である。
全てをやる
家事ロボットは
当面無理でも、
ある特定の作業
だけを行う
専用ロボットなら
実現する可能性が
ある。
例えば、
特定メニューを
調理する、料理
ロボットである。
更に、
①食器や部屋の
片付け
➁洗濯物を畳ん
で収納
をするロボット
も開発が見込ま
れている。
M氏は
家事ロボットの
開発を進めると、
人間の能力の高さ
を実感するという。
「家政婦や家事
代行サービス
という人間の
行為には、
太刀打ち出来
ない。
とは言え、
人間より時間を
要し、
不器用な部分が
あっても、
家事を自動的に
行う価値は相当
大きい」
と話す。
ところが、
家事のテクノロジー
には、大きな懸念
材料がある。
家の中にカメラを
設置し、
インターネットで
外から家族の見守り
などを行った場合、
画像が流出し、
家庭環境が漏洩する
可能性があり、
念入りな対策が必要
である。
一方で、
自動調理器に頼る
と、食事の作り方
を忘れたり、
食の伝統が脅か
されたりする
可能性がある。
結局
便利さを追求
するあまり、
人間は将来、
家事の全てを
機械に任せて
自分では
やらなくなる
のであろうか?
S氏は
「それは人類が
家庭生活を
捨てるのと
同じである。
家事を嫌う
社会は育児を
嫌う社会で
あり、
少子化を更に
招く恐れが
ある。
人類が存続
するためには
家事は必要だ」
と強調する。
家事は単調な事
も多いが、
臨機応変な行動
や工夫が必要で、
料理は創造性を
育む。
人間が成長する
ためには、
必要な経験で
ある。
誰かのために
行う行為でも
あり、
また、
社会的な動物で
ある人間の本質
を映しているの
である。
そんな中、
人類は多くの
活動を機械化
にして、
今日の繁栄を
築いた。
勿論、
家事も例外では
ないが、
生存に関わる
行動をどこまで
機械に委ねる
のか?
それは人間が
将来
どのような
生活を切望
するのか?
という問いに
匹敵する。
と同時に
人口減少を
いかに補う
のか?
という問い
でもある。
<データと資料>