AI開発競争は戦国時代に突入
最近、生成AI(文章、画像、動画、音楽、コンピュータープログラム等を
作り出す人工知能)に関する話題がメディアを賑わせている。
令和4年11月に世界を驚かせた生成AIであるChatGPTが無料で、
令和5年3月にはその性能を格段に向上させたChatGPT-4が有料で、
公開された。
令和5年11月初めにはそのTurboが発表され、先日はその開発企業の
トップであるサム・アルトマン氏が取締役会から解任され、他者への
移籍が発表されたが、また復帰するなど、まさにAI開発競争は
戦国時代に突入している。
こうしたAI開発競争に対して、英国で開かれた初の国際会議
「AI安全サミット」で、国際的な研究機関を創設してAIの安全性を
事前検証することや、安全対策の指針を作ることで各国が合意した。
その背景には驚異的な発展を続けるAIが人類を滅ぼす危険性があると
世界が危惧したことがある。
これはAIの発展が益々加速するという予想からだ。
なぜAIの技術は日進月歩で発展するのか?
それは世界中に巨大なニーズがあるからだ。
パソコン、スマホ、インターネット、クラウドなどの技術無しでは、
我々は仕事や生活ができない。
それと同様に、自動運転の車や電話の自動応答など幅広い分野で既に
AI技術も我々の仕事・生活に入り込んでおり、生成AIの登場によって、
今まで自動化が難しいと思われていた分野でも無人で業務遂行が
可能になるからである。
生成AIは「わが社の製品の売り上げが倍増する方策を出して」と
要求すれば、人が考える以上のアイディアを列挙してくれる。
「配送業務の効率化を説明する図を描いて」と要求すれば、人が
描くレベル以上の図を何枚でも描いてくれる。
すでに多くの広告会社は原案をAIで多数作成し、デザイナーが
選択し必要な修正を加えて最終版を作成している。
飲料や食品のパッケージ図案をAIが作成したものも出てきた。
7時間の作業が10秒に
生成AIはあらゆる分野で、平均的人間以上の仕事をしてくれる。
すでにChatGPT-4は、米国の医師国家試験で、人間の平均点より
高い点数を出し、日本の医師国家試験でも、医師の専門分野の
知識を追加したAIで合格ラインを超える点数を出している。
もはや生成AIを仕事に活用することは当然の選択である。
しかし、生成AIの活用については当然ながら注意が必要である。
すなわち、生成AIが得意なことと不得意なことと見極め、得意
分野でのAI活用を推進すること、及び人がAIに問いかける言葉を
適切にすることである。
生成AIは経済、社会、経営、商業、法律、工業技術、医療、音楽・
一般的な生活など知識が普遍的に確立している分野は得意である。
「国債価格と金利の相関関係を教えて」「外形標準課税の問題点は」
「Tシャツを冬にも売る企画を5つ考えて」などと尋ねると適切な回答が
得られる。
生成AIはコンピュータープログラムの作成が格段にうまい。
エクセルの複数シートを使い、ある協議会の年会費請求書作成をAIに
依頼すると、完璧に動作する30行ほどのプログラムをすぐに作成して
くれた。
ある企業では、プログラム言語の書き換えに従来7時間かかっていたのが
10秒で終わったという。
質問力高いと活用も広がる
一方、学習に用いるデータの不足により、固有名詞に関することや
最近の話題については不得意である。
「10月から開始されたインボイス制度について教えて」「最近、
渋谷でz世代に流行っている服を教えて」などと尋ねても満足できる
回答はない。
また生成AIに問いかける言葉であるが、「美味しいカクテルを5つ
提案して」よりも、「z世代が好むウイスキーベースのカクテルを
7つ提案して」のように、より具体的な条件を含めて問いかけると、
それに沿った適切な回答が得られる。
創作を依頼するときも「子ども向けのお話を作ってください。
登場するのは可愛い動物、目的は仲間の大切さ、話の展開は、
最初は喧嘩するが、最後には友情が生まれるという話です」と
書くと、700字ほどの楽しい物語を書いてくれた。
すなわち質問力が高いと活用範囲が広がる。
最近、A教授が不動産企業の役員が集まるセミナーで建物のAIに
関する講演をする機会があった。
関係者が興味を持つ具体的な質問をChatGPT-4に与えた結果の文章・
図・コンピュータープログラム等を示した結果、参加者には大変興味を
持って頂き、熱い議論となり、最後に「社内でのAI活用を推進する
方策は?」という質問が出た。
A教授は「トップの皆さんが実際に生成AIを使い、いろいろな結果が
出て来るのを楽しんで社内に広報すれば、下の人たちもトップに
負けじと新たな活用法を考えると思います」と答えた。
”まずはAIを楽しむ”
ということ、これはChatGPTでは出なかった回答である。