「春の今宵には一刻千金もの価値があるくらい素晴らしい」という意味です。
中国・宋代の詩人の蘇東坡さんが詠んだ詩です。
春宵一刻直千金
花有清香月有陰
歌管楼台声細細
鞦韆院落夜沈沈
春宵(しゅんしょう)一刻(いっこく)直(あたい)千金(せんきん)
花に清香(せいこう)有り月に陰有り
歌管(かかん)楼台(ろうだい)声細細(さいさい)
鞦韆(しゅうせん)院落(いんらく)夜沈沈(ちんちん)
春の夜のすばらしさは、ひとときが千金にもあたいするほど貴重なものだ。
花には清らかな香がただよい、月はおぼろにかすんでいる。
高殿から聞こえていた歌声や管弦の音は、
先ほどまでのにぎわいも終わり、今はかぼそく流れるばかり。
人気のない中庭にひっそりとブランコがぶら下がり、夜は静かにふけていく。
「一刻」はわずかな時間の意味で、昔の一時の4分の1、約30分。
「千金」は千両・大金の意味。
「値」は本来「直」と書きます。
華やいだ後の静寂が、春宵の価値を高めていると言えます。
日本では春の夜の素晴らしさをあらわす句ですが、中国ではほとんどが男女の恋情をあらわすときに使われます。
さて、中日ドラゴンズが今季2度目の同一カード3連勝を飾りました。
先制となった2回の火付け役となったのは、一軍初昇格だった19日の広島東洋カープ戦で4安打3打点、20日は2安打を放って決勝ホームランと連日活躍しているスティーブン・モヤ選手でした。この日も先頭で打席に立つと、3戦連続安打で出塁。平田選手の内野ゴロでランナーが入れ替わりましたが、福田選手の二塁打で先制。さらに大野奨選手の三塁打で2点目を奪いました。
3回には大島選手が出塁し、2アウト二塁から、またもやモヤ選手がヒットを放ち、この打球をカープのバティスタ選手がエラーして、大島選手が一気に本塁へと生還し、リードを3点に広げました。
このリードを投手陣が守り抜き、先発のガルシア選手は2点を失ったものの、カープ打線を7回4安打、10個の三振を奪う好投で、無傷の3連勝。8回は前日プロ初勝利を挙げた鈴木博選手が封じ、9回は守護神の田島選手が締めて逃げ切りました。
なお、モヤ選手は6回の3打席目にもヒットを放って3戦連続のマルチ安打&打点とし、2度目の猛打賞となりました。
スポーツニュースなどで野球の場合には「値千金の一打」とか、サッカーの場合には「値千金のゴール」とか言っていますが、本来は上記の詩が語源になっています。この場合は「試合を決定づける」とか「逆転した」とかという、高い価値のあることとして、使われることが多いです。
水島新司さんのマンガ「あぶさん」の第35巻 第6話のタイトルが「春宵一刻値千金」です。
開幕戦で主人公・景浦安武さんがホームランを打った時、「春宵一刻値千金 花に清香有り、月に陰(かげうら)有り」と、水島流にアレンジされています。
このカープ3連戦は、まさしく「春宵一刻値千金 花に清香有り、月に靄(モヤ)有り」ってところでしょうか。