現在のプロ野球で一球投げるごとに、大きな歓声を聞くのは久しぶりです。
中日ドラゴンズ 鈴木博志選手
(https://blog.goo.ne.jp/full-count/e/f529296241411ef2df14ca584c7ad655)
投じる1球1球が楽しみなピッチャーです。
昨日の広島東洋カープ戦では3-3の8回2アウト二塁の場面で登板すると、代打・鈴木誠也選手を空振り三振に仕留めると、直後の8回裏に、今やドラゴンズの打の救世主・モヤ選手が、来日第1号となる勝ち越しホームラン。ドラゴンズの攻撃が終わると、球場内からの“ヒロシコール”を背に、初めての回またぎとなる9回もマウンドに上がり、カープ打線を3者凡退に封じ、プロ入り初勝利を挙げました。
ここまで、セットアッパーに抜てきされ、8試合目の登板。計8回1/3を投げ、いまだ無失点と抜群の安定感を誇っています。
鈴木博選手の自慢の武器は、最速157km/hの力強いストレート。豪快なボールがキャッチャーミットに吸い込まれるたびに、視線は思わず球速表示へ向かってしまいます。しかし、一方で高まる周囲の期待とは対照的に、鈴木博選手は「球速は特に気にしていません。一番大切なのはチームが勝つことなので」と冷静です。
鈴木博選手の出身は静岡県掛川市です。掛川市立大浜中では、直球よりも変化球を得意としていました。スピードがどんどんと上がっていった磐田東高時には球速を追い求めることもあったそうですが、社会人・ヤマハに入社して意識が変化し、仕事として賃金を得ながらプレーすることで、チームの勝利への責任感がさらに増したそうです。
この生まれ育った掛川市・磐田市の一帯は古くは遠江国といわれ、この地で生まれ育った子どもは「遠州っ子」と呼ばれたりするそうです。遠州っ子の気質を代表する歴史上の人物といえば、幕末から明治にかけて東海道一の大親分といわれた清水次郎長さんの子分で、浪曲や浪花節にもたびたび登場する、森の石松さんです。弱きを助け、強きをくじく、俠客の有名人ですが、おっちょこちょいで「馬鹿は死ななきゃ直らねぇ」と、からかわれたりもした人です。
その石松さんの最も有名な(?)台詞が、「森の石松三十石船道中」に出てくる「食いねぇ、食いねぇ、寿司食いねぇ」です。船で出会った江戸っ子が「海道一の親分は清水次郎長」と言ったのに気を良くして大盤振る舞いするのですが、これが遠州っ子の義理人情の厚さを物語っているのです。
ちなみに、どうでもいい話ですが、石松さん勧めたお寿司は、「江戸前」ではなく、大阪の「押しずし」だったそうです。石松さんが三十石船に乗る前に立ち寄った大阪本町橋で名物の押しずしを買っていたようです。
鈴木博選手も、弱きを助け、強きをくじく、という遠州っ子の気質を引き継いでいるとしたら、昨年までのドラゴンズにピッタリな選手だと言えるでしょう。さらに、石松さんは出身が掛川市に隣接する森町であることから。「森の」と名付けられたとされていますが、ドラゴンズの監督も「森」というのは単なる偶然ではないと思えてきます。
さて、1球で球場の雰囲気を変える鈴木博選手。これからも活躍を続け、真の救世主となってくれることを期待しています。