「逃げるは恥だが役に立つ」とは、講談社Kissで2012年22号より連載中の海野つなみさんのマンガです。2016年10月11日~12月20日にTBS系列「火曜ドラマ」枠で新垣結衣さんの主演で放送され、平均視聴率は14.5%と高く、星野源さんの唄う主題歌「恋」に合わせてエンディングで出演者がダンスを披露する「恋ダンス」をまねて、動画サイトには視聴者が踊った動画で溢れ返るという社会現象にもなり、日本国内におけるドラマ関連の賞を総なめにしました。
放送から一年を過ぎてもブームが収まることがなく、再放送も多く、TBSでは年末年始の特番最中の2017年12月31日と2018年1月1日に全話一挙放送され、長野ローカルのSBCでは2018年4月21日、22日にも全話一挙放送しています。
さて、先日、国際柔道連盟(IJF)がルールの改正を行いました。大きな変更点としては、「有効」の廃止、指導差だけでは試合の決着をつけないなど、より攻撃的でわかりやすい柔道とするためのものです。2017年1月、2018年1月の改正を経て「一本」による決着が増加する傾向にある一方で、指導3つによる「反則負け」のリスクもあるルールとなっています。
最も大きな特徴は、「指導差」で決着をつけないことです。きっかけはリオデジャネイロ・オリンピック男子100kg超級決勝になります。手堅い闘いに徹した王者・リネール選手(フランス)は投げる意思を見せないまま、指導1-2で原沢久喜選手に勝利。世界が注目した中で凡戦を演じ、IJF理事の山下泰裕さんは「がっかりした。王者を決めるのに指導差1つでいいのかという話になった」と語っています。
つまり、「逃げるは恥だが役に立つ」という試合をなくそうというのが、新ルールになります。指導差がついて試合時間が終わっても延長戦として、技のポイントが入るまで決着がつかないようにします。ただし、「反則負け」(一本扱い)という例外はあるものの、終始、技を狙わないと勝てなくなります。
実際に序盤からスピーディーな展開が増え、積極的に技をかけようとするようになった印象が強くなっています。
毎年2月に行われているグランドスラム(GS)パリ大会で比較すると、全試合における「一本」による決着の割合は、リオデジャネイロ・オリンピックと同ルールの2016年は男子53%、女子48%。1度目の改正があった2017年は男子60%、女子54%。2度目の改正後に行われた2018年は男子77%、女子74%と、ルール改正のたびに着実に増加傾向にあることがわかります。
ただし、名目的な「一本」での決着が増えた一方、消極的な試合展開での「反則負け」が増えているとのことで、2月のGSデュッセルドルフ大会100kg超級決勝では、原沢選手と王子谷剛志選手が両者反則負けで優勝者なしという前代未聞の決着となっています。
さてさて、ドラマ「逃げ恥」が人気番組となった要素は色々あると思います。恋愛模様はもちろんのこと、結婚をめぐって2人が人間関係に悩みながら前に進んでいくストーリーは、現代的なテーマでもあります。
柔道においても、退屈な攻防は許さないというIJFの徹底した考え方の元、ルールに対応できない者は生き残れないと適応力をテーマにしています。
人は誰もが多様な価値観や考えを持っています。生きていればそれらがぶつかり合うことだってあります。
でも、お互いが理解するよう努めなければ、いつまで経っても前に進み、決着することはできないのです。
つまり、これからは「逃げるは恥で役は立たない」ということになります。