「ご当地」とは、「この土地」「この地方」という意味の「当地」の丁寧な表現です。「御当地」とも書きます。特に、その地域や地方に敬意を表したり、あるいはその地域に特有であることを強調したりする場合に、単に「当地」ではなく、「ご当地」といいます。
一般的に「ご当地ソング」「ご当地グルメ」などという言葉がよく使われています。こういう「ご当地」ものはいいものです。
最近話題になった「ご当地」といえば、クラウドファンディング(CF)で約89万円の支援を受けて誕生した、「ご当地ヒーロー」が東映制作の特撮ドラマ「仮面ライダーシリーズ」のヒーローと酷似しているのではないかと問題視され、活動期間わずか1ヶ月で休止となってしまいました。こういう「ご当地」ものはちょっと微妙なものです。
一方で、次のような「ご当地」ものは、ご勘弁願いたいものです。それが、各地にあるご当地交通ルールというやつですが、なかには一般的に交通違反とされるようなものもあります。
本当ならば、「ご当地」なんて丁寧語な言葉で紹介すべきではないでしょうけど、ここでは、「ご当地」としておきます。
2021年時点では、長野県の「松本走り」、茨城県の「茨城ダッシュ」、山梨県の「山梨ルール」、愛媛県の「伊代の早曲がり」、愛知県の「名古屋走り」といったご当地ルールの存在が報告されています。
そのなかでも松本市では、2018年に「松本走り」に当てはまる右折時の交通事故が松本市内で78件発生しています。
■松本走り(長野県)
交差点で左折する対向車とほぼ同時に右折するほか、ウインカーを出さずに進路変更をすることだといわれます。左折する対向車と同時に右折をすると、直進してくるクルマやバイクと事故を起こす危険があります。実際、数10年前に私と同じ職場の方が、このような状況でなくなっています。
道路交通法第37条では、「交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない」と定められていますので、松本走りは明確な違反行為となるため注意が必要です。
また、もちろんウインカーを出さずに進路変更を行うのは、道路交通法第53条に違反する行為です。場合によっては、周囲のクルマを巻き込んだ事故に繋がるため大変危険です。
「松本走り」が発生したのは、松本城を中心とした市街地は狭い道路や信号機が多く渋滞が発生するため、強引な右折が横行し出したともいわれています。ときどき、交差点では直進車が右折車に道を譲るという、謎の場面に出くわします。
■茨城ダッシュ(茨城県)
青信号に変わった瞬間、先頭のクルマが対向車よりも早く強引に右折をする行為だとされています。「松本走り」と同じに、右折車と直進車が衝突する「右直事故」と呼ばれる事故の発生原因となり、大変危険です。
全国交通事故弁護士団では、右直事故は交通事故のなかでも、バイクが直進している場合の発生件数がことさら多くなっているといいます。車の左側をすり抜けて直進してくるバイクや、車の隣で停止しているバイクは、対向車の死角であるため発見できません。
そのため、青信号と共に交差点に進入したバイクと、「茨城ダッシュ」した車が衝突し、右直事故に至るケースが少なくないようです。
なお、松本市近辺でも「ダッシュ」はよく見られる光景です。
■山梨ルール(山梨県)
「対向車線の直進車のスキをついて強引に右折する」「右折待ちの車を優先的に右折させる」などの行為だとされています。
「右折するクルマを思いやる」とも感じられるルールですが、もちろんこのようなルールを知らない人も存在します。そのため、このルールを「知っている人」と「知らない人」が交差点で衝突する事故が多いそうです。なかには、右折時に減速をしないで右折する人もいるといわれています。
山梨ルールには、信号機が設置されていない横断歩道で、右折や直進時に歩行者を無視するというものもあるようです。
横断歩道は、道路交通法第38条で歩行者優先と定められています。同法では、「停止することができるような速度で進行しなければならない」と定められています。最近は、警察庁などでも、「横断歩道は歩行者優先」という広報して、横断歩道で歩行者を無視する場合に違反行為で検挙されることが多いようです。
警察庁によれば、2014年から2019年までの5年間で、車と歩行者が衝突した交通死亡事故は6275件発生、そのうち4599件が歩行者横断中の事故であり、横断歩道での事故は1439件とされています。
■名古屋走り
信号無視、車線変更禁止場所での車線変更、強引な割り込みなどさまざま行為をいい、愛知県名古屋市や近隣の自治体に見られるようで、TVや新聞など報じられることが多く全国的にもっとも知名度があるようです。
警察庁によれば、2003年から2018年にかけて愛知県の交通事故死亡者数は全国でもっとも多かったとされており、愛知県の交通事故件数の要因に関連付けられることが少なくないようです。「信号無視」「スピード超過」「車線をまたいでの走行」などは事故につながる運転です。なかには、車1台分の車間距離があいていれば、強引に割り込んでくるものもあり、「名古屋走り」は「強引な運転の代名詞」といえるのかもしれません。
ちなみに、「大阪走り(大阪府)」も同義語です。
■伊予の早曲がり(愛媛県)
「茨城ダッシュ」よりもさらに早く右折をする行為とされるようです。
信号が赤信号でも少しずつ交差点に進入し、青になる直前や、青になった瞬間に右折を行い、対向車が動き出す前に右折してしまうもので大変危険です。
■阿波の黄走り(徳島県)
これは、「信号が黄色になったら、アクセルを踏んで信号を渡りきってしまう」というもので、黄色信号で止まらないことです。速度超過や信号無視はもちろん、衝突事故が起こった際に大事故に繋がる危険もあります。
ちなみに日本自動車連盟(JAF)が毎年「信号機のない横断歩道で手を挙げたときクルマが止まる確率」というのを調べているのですが、2020年では徳島県は大阪府と並んで全国ワースト5位でした。
■播磨道交法(兵庫県)
もともとは兵庫県播磨地方独特のご当地交通ルールを皮肉った「神戸新聞」の連載記事名なのだそうです。これも「名古屋走り」と同じく、乱暴な運転マナー全般を指すようで、頻繁な車線変更やウインカーを直前まで出さない習慣、クラクションの乱発などが挙げられるとのことです。
■岡山ルール(岡山県)
「車線変更や右左折時にウィンカーを出さない」なるものです。そのため、岡山県の道路にウィンカーを促す「★合図」と緑色で書かれた、路面標示が設置されているほどです。
ほかにも、名前がないものも存在するようです。
「ご当地(悪)交通ルール」は「ルール」ではありません。相手への思いやりから発生したものもありますが、道路交通違反となるものが多いですので危険であることは事実です。
だからといって、これらの場所に住んでいる方や、これらの地域に該当するナンバーの車がすべてこのようなことではありません。「正しい交通ルール」を守って、安全運転されている方は多いと思います。
2021年9月21日からは秋の全国交通安全運動が始まっています。全国共通の交通ルールを守って、安全運転に努めましょう。
今日も、私のブログにお越しいただいてありがとうございます。
今日がみなさんにとって、穏やかで優しい一日になりますように。そして、今日みなさんが、ふと笑顔になる瞬間、笑顔で過ごせるときがありますように。
どうぞ、お元気お過ごしください。また、明日、ここで、お会いしましょう。