有名お笑いコンビのボケ担当の方が3年分の法人所得の約1億1800万円が無申告状態にあったと発覚し、一部TV番組を降板する状況になっています。
通常、脱税事件は国税局の査察部(マルサと呼ばれていますが、必ずしも女性とは限りません)が強制調査し、所得隠しの金額、手口の悪質さ、情状面などを検察庁と総合的に協議。多くは在宅のままで、国税局が検察庁に刑事告発するのが一般的だ。そして告発を受けた検察庁が公判請求(起訴)するか否かを決めます。ほとんど起訴されますが、刑事処分をするまでもないと判断されれば、今回のように行政処分の追徴課税で済むケースもあります。
さて、税金の始まりは中国の秦王朝時代(紀元前2世紀)と言われているそうです。当時の中国にはすでに貨幣と戸籍があったため、本格的な税体系があったことを意味します。貨幣は税徴収をしやすくするため、戸籍は男女の人数と年齢を把握することで、人頭税(人口に対して無条件に徴収する税)を正確に徴収しつつ、若い男性に労役や兵役という、別種の税を課すためだったそうです。この当時の脱税手段として、「贋金づくり・戸籍に載せない・年齢詐称(老人のフリ)」があったそうです。
日本で過去最大の相続税脱税事件は2008年に、大阪に住んでいた姉妹が75億円以上の父親の遺産のうち約60億円を隠し、相続税28億6千万円を脱税したのでした。父親生前から預金を現金化しては自宅ガレージに隠していましたが、2人が逮捕された時、ガレージは1万円札が詰まった段ボールや紙袋でいっぱいで、下のほうの紙幣は湿気でどろどろになっていたそうです。ちなみに姉曰く、「うっかり申告し忘れた」とのことです(今回と同じ言い訳)。
2018年には、中国の有名女優の巨額脱税事件が起こりました。中国芸能界長者番付1位の超人気女優は、なんと1億4千万元(約23億円)もの脱税があったと、国税当局から指摘されたのです。その後支払いに応じましたが、追徴課税はこれまた信じられない金額で、何と8億8千万元(145億6千万円)というものでした。
さて、消費税率の引き上げに伴い、食料品などの税率を据え置く「軽減税率」が導入されましたが、店内で飲食する場合は軽減税率は適用されず、税率は10%となりました。
しかし、持ち帰り用として8%の税率で購入したものを店内で飲食し、2%分の消費税を免れる行為が、「イートイン脱税」 として話題となっています。
愛知県名古屋市のお店では、店内や入り口に商品を食べられるスペースを設け、お客さんの注文時に持ち帰りか店内飲食かを尋ね、それぞれの税率にあわせた代金を請求していました。しかし、持ち帰り用として購入したにも関わらず店の入り口のベンチに座って食べるお客さんが後を絶たなかったことから、「2%分多く代金を支払って店内で飲食してくれる客に申し訳なく」とのことで、10月中旬以降、ベンチを撤去してしまいました。
麻生太郎財務相は10月8日の会見で、この問題について、「業界団体などを通じ実態把握に努めないといけない」「周知、広報を含め、軽減税率制度の円滑な実施・定着にむけて必要な対応を講じたい」とコメントしています。
国税庁は「倫理上はともかく、制度上の問題はない」としており、罰則もない。「イートイン脱税」を見つけても、お店側は深追いしない運用をしていることもあり、お客さんに申告を促す以外に、止めようがない状況でもあります。
それにしても、「イートイン脱税」とは誰が考えたのか、すごい言い方です。
そもそも、消費税についての納税義務者は、飲食品やサービスを提供する側の事業者になります(消費税法5条)。飲食品を購入する消費者は、消費税分を対価の一部として負担しているとしても、消費税の納税の義務を課されてはいませんので、消費税を「脱税」している立場ではありません。ですから、「イートイン脱税」という表現は、倫理上はともかく、正しい表現とは言い難いものです。
と、ここまで書いて、新たな疑問が湧いてきました。
例えば(あくまでも例えばです)、事業者が消費税を申告する際に、お客さんの申し出に従って消費税分を含む代金の精算をして計上していれば、商品の受け取り後にお客さんがイートインコーナーを実際に利用していたかどうかまで、国税庁は把握できません。よって、お客さんから、「イートインコーナーを利用したい」という申し出があって、10%の税率で代金をもらっていた分を、持ち帰りで8%の税率で計算した代金を受け取ったことにして、差額の売上を事業者が隠す、ということは充分にありえることです。
これこそが、「イートイン脱税」と言えることだと思います。
ということで、私たち消費者側として脱税の疑いからは解放されるのですが、注意しなければならないことがあります。
レジで支払いをする時にイートインを利用するつもりなのに、「持ち帰り」であると嘘を告げてお店側をだました場合、「詐欺罪(刑法246条1項)」に該当する可能性は否定できそうもありません。ただし、これは、お店側が「だまされた」とならない限り、成立はしません。
ちなみに、国税庁は「イートイン脱税」について、「軽減税率が適用されるかどうかの判定は、事業者がお客さんに飲食料品を譲渡した時点で行われる」「(その後にお客さんが店内で飲食していたとしても)制度上の問題はない」と説明しているとのことです。
そもそも、外食って贅沢なものなのでしょうか?
イートイン=10%って、必要なのでしょうか?