「千早振る(ちはやぶる / ちはやふる)」は、1776年に出版された笑話本「鳥の町」の一篇である「講釈」とされ、山東京伝の「百人一首和歌始衣抄」(1787年)の類話を原話とした古典落語の演目の一つです。
別題は「百人一首」「無学者」で、長屋に住んでいる何でも知っている博識のご隠居が短歌にいい加減な解釈を加える話です。
八五郎は娘に小倉百人一首の在原業平さんの「ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」という歌の意味を聞かれて答えられなかったため、長屋の住人から「先生」と慕われているご隠居に教えを請いにきます。
しかし、実はご隠居もこの歌の意味を知らなかったのですが、「知らない」と答えるのは面子にかかわると考え、次のような、いい加減な解釈をします。
昔、人気力士で大関の「竜田川」が吉原へ遊びに行った。その際、「千早」という花魁に一目ぼれ。ところが、千早は力士が嫌いだったため、竜田川は、振られてしまう。これが、「千早振る」だ。
振られた竜田川は、次に妹分の「神代」に言い寄るが、こちらも「姐さんが嫌なものは、嫌い」だといいます。これが、「神代も聞かず竜田川」だ。
このショックで成績不振となった竜田川は、力士を廃業し、実家に戻って豆腐屋を継いだ。それから数年後、竜田川の店に一人の女が訪れ、「おからを分けてくれ」と言う。喜んであげようとした竜田川だったが、なんとその女は千早の成れの果てだった。
振られたことを根に持っていた竜田川は、おからを放り出し、千早を思い切り突き飛ばした。千早は、井戸のそばに倒れこみ、こうなったのも自分が悪いと井戸に飛び込んでしまう。これが、「から紅(くれない)に水くぐる」だ。
この解釈を聞いた八五郎は、「失恋したくらいで廃業しますか」「いくらなんでも花魁が落ちぶれますか」などと、その都度、ご隠居に質問しますが、ご隠居は強引に八五郎を納得させますが、最後に八五郎は、「『千早振る 神代も聞かず竜田川 からくれないに水くぐる』まではわかりましたが、最後の『とは』は何ですか?」と突っ込みます。
すると、ご隠居はこう答えます。
千早は源氏名で、彼女の本名が、「とは(とわ)」だった。
さて、相撲を観ていますと、力士は生まれ故郷の山、川や海の名から四股名としている場合が多くみられます。例えば、長野県出身の現役関脇の御嶽海久司関は、出身地近くの「御嶽山」の「御嶽」からという感じです。
2020年9月場所における十両以上の番付表では、70人中「山」にまつわる関取は15人、次に「海」は8人となっており、実は「川」がつく関取は0人となっています。
歴代横綱においても、水戸士族の出身で「角聖」と言われた常陸山関、不世出の大横綱・双葉山関、31回の優勝・53連勝を記録した千代の富士関ら19名、次いで「海」が第61代・北勝海関や第57代・三重ノ海関など12名です。
一方、「川」を冠しているのは、2代・綾川関、5代・小野川関、14代・境川関、34代・男女ノ川関のたった4名しかいません。
また、横綱以外においても、「川」については、徳瀬川関が2009年7月場所に十両となり、2010年3月場所で新入幕しましたが、2011年4月に引退してしまいました。
相撲界は縁起をかつぐ世界です。なぜ、「川」がつく四股名がなくなったのかは、そのはっきりとした理由はわかりませんが、「千早振る」が原因だとは思えません。ちなみに日本相撲協会の年寄名跡に読みが同じ「立田川」が存在しているため、実在の力士が「竜田川」の四股名を名乗ることはありません。
なお、「ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」の本来の意味は、紅葉の流れる竜田川を描いた屛風絵をお題にして、詠んだとのことです。紅葉を浮かべる竜田川のさまを、くくり染めの織物に見立てた歌で、現代的に意訳しますと次のような感じです。
「ちはやぶる(=枕詞(まくらことば))神代(かみよ)も聞かず竜田川(たつたがは)韓紅(からくれなゐ)に水くくるとは」
→ 「マジでぇ? ヤバいょ! 謎だらけだった神の時代の話でも、竜田川の水が真っ赤っかになるなんて、俺は聞いたことねぇし、ハンパねぇな!」
秋ですね・・・。
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