野球小僧

与座海人 / 埼玉西武ライオンズ(入団予定)

今年、神宮球場などで開催された第66回全日本大学野球選手権大会に、岐阜経済大という地方大学が出場し、二回戦で石巻専大に1-0で勝利しました。岐阜経済大は東海地区大学野球連盟の岐阜リーグに所属し、昨年は同連盟の代表・中京学院大が初出場初優勝を果たしています。

そのマウンドに立っていたのが與座海人(よざ かいと)選手です。身長170cm、体重65kgと一見、セカンドあたりを守っていそうな選手です。マウンドに上がりアンダーハンドからのストレートは120~130km/h台。それでもバッターには分からないようにストレートにバリエーションをつけて打ち取ります。アンダーハンドにとって、本当の意味の”緩急”のピッチングです。ボールの握りをわずかに浅くしたり、深くしたり、テイクバックをわずかに大きくしたり、小さくしたり、踏み込んでいくスピードをわずかに素早くしたり、ゆっくりにしたりという、投げるボールに緩急をつけるのとは違い、”間”を調整するのです。

そのピッチングに重なるのが、埼玉西武ライオンズの牧田和久選手です。「よく緩急って言うじゃないですか。でも、僕らアンダーハンドって、ストレートと変化球で緩急をつけるだけじゃダメなんですよ。アンダーハンドって、140km/h台を投げられるわけじゃない。僕だって120km/h台ですし、基本のスピードがないわけですから慣れられたら弱いんです。だから、わからないようにタイミングを外さないと通用しない。僕はストレートにバリエーションをつけて、打者を打ち取ります。アンダーハンドにとって、本当の意味の”緩急”ってそういう次元のことだと思っています」と語っています。

大学選手権での與座選手のピッチングは、まさしく牧田選手の投球だったそうです。バッターに考える間を与えないテンポで、変化球は横に曲がるスライダーだけ。あとは、ストレートを操作し、沈む系のボールもわずかに動かす。右バッターを相手にしたときはプレートの一塁側を踏み、左バッターを相手にしたときはプレートの三塁側。これによって横の角度もつけるなど、可能な限りの工夫を駆使して立ち向かい、初戦の石巻専大戦で1安打、10奪三振の完封勝利。圧巻の全国デビューを飾りました。

岐阜経済大は、このアンダースローのエース与座選手や技巧派サウスポーの栄野川盛隆選手、最速152km/hの浜口雄大選手ら四年生ピッチャーが安定し、春の公式戦では1試合あたり平均1.15点しか奪われていませんでした。

実はここにもう一人、小森茂監督が「一年春から登板し、頭一つ抜けた子。順調にいけばプロ注目の投手になっていた」というピッチャーがいました。それは今年の夏の甲子園にも出場していた、香川県立三本松校出身の中野宏紀さんのことです。高校時代のマウンド度胸と躍動感あるフォームにほれ込んだ小森監督が声を掛け、岐阜経済大に進学。与座選手とともに一年春からリーグ戦に登板し、与座選手が8回、中野さんが9回を任されていた。中野さんは直球の最速が140km/h台を掲示し、将来はプロ入りも期待できるピッチャーでした。

ですが、3年前の2014年5月2日夜、練習後に銭湯から下宿先まで原付きバイクで走っていた中野さんは電柱に衝突し、意識不明で病院に運ばれてしまいます。小森監督と当時監督だった上田和宏コーチは連日見舞いに訪れたが、8日後に亡くなってしまいます。

「中野を全国へ連れて行こう」

以来、岐阜経済大は中野さんの背番号15を永久欠番として、公式戦はベンチにそのユニホームを掲げ、公式戦では登板前のピッチャー、守備に就く前の野手が背番号15のユニホームに触れ、グラウンドに向かいます。小森監督は「(中野さんは)チームの守り神ですね」。選手は亡き戦友の思いを胸に刻み、大学創立50年目の今年、念願の全国大会出場を果たしました。全日本大学選手権二回戦は中野さんにささげる全国大会初勝利となったのです。

中野さんが亡くなった後、与座選手が野球なんかしていていいのだろうかと悩んでいたある日、中野宏紀さんからのメールが届きます。「体に気をつけて野球と勉強に頑張って下さい。また暖かくなれば、宏紀を連れて試合を観に行こうと思っています」というメッセージでした。これは中野さんのお母さんは、宏紀さんが生前に利用していた携帯電話をずっと持っていて、送ったものです。

また、LINEの登録名は「中野宏紀」のままで、節目に野球部員のLINEグループへメッセージを書き込んでいるそうです。石巻専修大との試合前にも「頑張って」と選手を激励のメッセージを送りました。この全国での1勝のウイニングボールは中野さんのご両親に渡されています。

2017年NPBドラフト会議 埼玉西武ライオンズ 5位指名 与座海人 岐阜経済大学 ピッチャー


コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
これ、ドラフト会議当時の夜のTV特番でもやっていました。そこだけ、ちょうど見ました。
大学の地方リーグはなかなか注目されることはありませんが、知名度はなくても実力は引けを取らなくなってきました。
カープの菊池選手、ジャイアンツの吉川選手も同じ岐阜リーグですし、今年はもう一人同じリーグから指名されています。
地方リーグは注目ですよ。
eco坊主
おはようございます(*Ü*)ノ"☀

writerKUROSUKE氏は色々見ておられますね~
私は勿論知る由もなく^^;
牧田投手のことは知っていますが。

NPBへ進んでも探究心を怠ることなくスタイルを確立して欲しいですね。

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