野球小僧

大学野球 新時代

今秋の第48回明治神宮野球大会・大学の部は、来年のドラフト上位候補と言われている松本航選手(明石商高)と東妻勇輔選手(智弁和歌山高)の両三年生右腕が3試合をわずか1失点に抑えた日本体育大学(日体大; 首都大学野球連盟)が37年ぶり2回目の優勝を飾りました。

日本体育大と星槎道都大(道都大; 札幌学生野球連盟)の決勝戦となり、両校ともここまで勝ち上がった要因は投手力と言われています。日体大の松本選手はキレのある球と制球力、東妻選手は150km/hを超えるストレートで押していく投球で、松本選手は球速こそ140km/h前半だったのですが、伸びのあるストレートにツーシームやスプリットなどを左右高低へ巧みに投げ分け、九州共立大戦は6回1失点、準決勝の東洋大戦では大学球界屈指の強力打線を相手に4安打完封を果たしています。東妻選手は今大会初戦の九州共立大戦で7回から延長タイブレークの10回までリリーフ登板。緊迫した試合展開で、時に雄叫びを上げて投じるなど気迫を込めて、ストレートや曲がりの大きいスライダーで打者11人から9三振を奪っています。中1日で先発した決勝戦では、一転して打たせて取るピッチングで、三振はわずか4個ながら9回を105球で投げ切っています。

北海道勢初の決勝進出に大きく貢献した道都大の三年生左腕・福田俊選手(横浜創学館高)は、身長170cmと小柄ながら140km/h台のキレのあるストレートにチェンジアップなどを織り交ぜた投球で全3試合に先発して18回3分の1を投げて自責点はわずか2点。一躍来秋のドラフト候補に名乗りを挙げました。

道都大には甲子園出場者はほとんどいません「だからこそのハングリーさや素直さがあって、選手が伸びていきます」と山本文博監督は言います。雪の多い冬場での自主的な振り込みなどにより、打力が強化されたことも北海道勢初の全国大会決勝進出に欠かせなかったそうです。

日体大を優勝に導いた古城隆利監督は就任9年目。それまでは2部降格こそないものの、成績の波が大きかったこともあり、一昨年冬から「大学スポーツで勝ち続けているチーム」を参考に組織作りを変えてきました。

まず1つ目は、2012年に明治神宮大会で創部7年目ながら優勝を果たし、以降も春秋どちらかではリーグ優勝を続けている桐蔭横浜大(神奈川大学野球連盟)だそうです。もともと親交のあった齊藤博久監督のもとを訪ねて、練習を見学。各部門の責任者となる部員同士の活発なコミュニケーションを見て、日体大でも各部門に部員の幹部を置きました。その中でミーティングしたり、首脳陣と幹部が意見交換したり、など権限を与えました。これは体育大学で指導者志望の部員も多いだけに、浸透は早かったそうです。

次に取り入れたのが、「体育会イノベーション」と称する改革です。これは大学選手権8連覇中の帝京大ラグビー部(対抗戦グループ)が行っている取り組みを参考としたもので、それまで下級生が行っていた雑用を上級生が行うようにしました。これにより、下級生は新しい環境により早く順応でき、上級生は行動で下級生に模範を示しました。この成果が、今大会全試合で一年から四年の各学年の選手がスタメンに名を連ね、野手陣のヒーローが日替わりという成果に繋がりました。

また、メンバー外の選手を数チームに分けて試合を行う部内リーグも数年前から導入しており、ここですべての成績を数値化。これに担当の学生コーチの意見も加えて、一軍の昇降格を決めて競争を活性化させています。今大会で二番を打った坂本耕哉選手(松阪高)は一般入試からの入部で三軍からのスタート、五番を打った谷津鷹明選手(向上高)は一度降格を経験しながらも部内リーグで結果を出して一軍復帰を果たした選手です。

この部内リーグは初戦で慶應義塾大を破る金星を挙げてベスト4入りした環太平洋大も取り入れており、就任5年目の野村昭彦監督は「頑張れば報われるシステムを作ろうと思ったんです」と説明しています。

そういえば、昨年の第65回全日本大学野球選手権では初出場の中京学院大(東海地区大学野球連盟)が中央学院大(千葉大学野球連盟)を破って優勝しています。近藤正監督はかつて、広島東洋カープの菊池涼介選手についてこう語っています。「高校までは堅実なプレーを指導されますが、大学ではランニングスローやジャンピングスローなど、菊池が今までやりたかったプレーを自由にやらせました。早く投げられるのであれば、そっちの方がいいわけです。菊池は頭ごなしに言うよりも自分で考えてやる方がいいタイプ。せっかく能力があるので、野球が嫌いにならないようにと自主性を重んじました」。

モットーは「エンジョイベースボール」。中京学院大は部員約160人のほとんどは「強豪高校なら背番号2ケタの三番手、四番手クラス。その他は東海地区を中心に県大会三回戦レベルの高校出身で、大学でも硬式野球を続けたい選手が集まっている」と言うチームです。

専用グラウンドはなく、中津川市内の球場を転々とする日々で練習時間も限られており、プロ野球のスカウトが「最初に見た時は衝撃でした。ある日の練習は、選手が好き勝手に打って『じゃ、バイトがあるんで失礼します』とおのおのがあがっていく。間借りしているグラウンドだから、練習はだいたい午後6時には終わっています」というくらいです。「大学野球は金がかかる。寮に入ってやると学費を含めれば年間100万円は優に超える。それでも、アルバイト禁止という大学がほとんど。中京学院大は逆に推奨している。生活費、遠征費、道具代など、家計を助けながら野球を続けられる。広島の菊池だって大学時代はバイトをしながら仕送りなしで頑張っていたんです」と中京学院大関係者は言います。

全日本大学野球選手権の優勝回数を地区別に見ると、東京六大学25度、東都23度、関西学生(旧関西六大学)7度。それ以外は昨年の中京学院大を含め計11度で首都大学の東海大が4度、大学日本一になっており、13年前の日本文理大(九州)や3年前の上武大(関甲新)の優勝あたりから、大学野球の勢力図にも変化が見られるようになっています。

また、秋に行われる明治神宮大会も規模は小さいながら勝てば「大学日本一」です。東京六大学はこの秋の大会を重要視しない傾向でしたが、最近は意識せざるを得なくなっています。今秋は全国大会出場はできませんでしたが、東京大が東京六大学野球で15年ぶりの勝ち点を獲得し、大阪市立大が全国大会出場まで1勝と迫るなど、各地で国公立大も力をつけてきています。

大学野球は決して“選ばれた選手”だけで行うものではなく、それぞれの部員が目的意識さえ強く持てば、花が開きやすい環境となり、今までの大学野球の勢力図が変わっていく時代になって来たのかも知れません。


コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
中国地区大学野球連盟は近年躍進していますね。ここであまり書くと、本番ネタがなくなっちゃいますので。

高校野球に比べてあまり注目されない大学野球ですが、ここから楽しく発信できれば・・・ん、気が早いかな。
eco坊主
おはようございます(*Ü*)ノ"☀

最近の新聞記事でも確かにこれまでにない大学名を目にします。
常連校の衰退ではなく台頭だとおもっていました。


「中国大学野球3部リーグ戦にて3季連続3回目の優勝」
「岡山大学との2部3部入れ替え戦において、2連勝を果たし、2部昇格」
鳥取大学もそのうち全国大会で聞くようになりますかね~
や、ここのブログで取り上げてもらえるようにならなくっちゃ!!
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