「ポリス・ストーリー / 香港国際警察」は、1985年に公開されたジャッキー・チェンさん監督・主演のアクション映画です。1983年の「プロジェクトA」と並ぶ代表作で、ジャッキーさん自身もっとも好きな映画に挙げるアクション映画でもあります。
本作製作のきっかけは前作「プロテクター」(1985年)だったそうです。ハリウッド製作だった「プロテクター」においてジャッキーさんはあくまでも出演者であり、自分の思ったようにアクション演出ができず、その出来に大いに不満だったそうです。そのためアジア地域ではジャッキーさんが香港で追加撮影を行い再編集したものを公開しています。「これが本物の刑事アクションだというものを作りたい」ということで、ジャッキーさんが、刑事アクションの決定版に挑んだ作品です。
「ポリス・ストーリー / 香港国際警察」では、村を全部壊してしまうカーチェイス、走っているバスに傘1本でぶらさがったり、デパートの中でのアクションシーンなど、どれもジャッキーさんの名場面集に必ず登場するほど有名になりました。
本作は大ヒットにより、「ポリス・ストーリー2 / 九龍の眼」(1988年)、「ポリス・ストーリー3」(1992年)、「ファイナル・プロジェクト」(1996年)とシリーズ化され、ほかにもスピンオフ・シリーズが制作されています。
もちろん、組織的には実在はしていませんが、香港警察の一部署である「香港警察公共関係科(いわゆる広報部門)」は香港で制作される映画の多くのスペシャルサンクス(中文:鳴謝、日本語:協力)として、映画で警察のシーンが出てきたら必ずといっていいほどエンドロールにはこの名前が出てくるようになっています。
香港は「1国2制度」という、中国の政治制度において、本土領域から分離した地域を設置し、主権国家の枠組みの中において一定の自治や国際参加を可能とする構想であり、1997年7月に英国から返還された香港に対し、中国は外交・防衛を除く分野で高度の自治を2024年までの50年間維持すると約束したものでした。
つまり、中国と香港という関係は、米国では連邦政府と州、日本では日本政府と都道府県という関係だと思いますが、日本の場合、国会が制定する法律と地方自治体が作る条例には整合性が保たれています。しかし、中国と香港の場合は1国2制度が採用されているため、中国本土で適用される「全国性法律(全国法)」は適用されず、香港では「香港基本法」が最高の法律となっていました。
中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法(香港国家安全維持法)は、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会により2020年6月30日に全会一致で可決され、同日午後11時より施行されています。この法律については1国2制度の根幹を揺るがすものとして世界中の国々から懸念の声が上がっています。
もともと、香港は英国植民地だったこともあり、法体系については判例を積み上げていくコモン・ロー制度であり中国本土とは法律体系そのものが異なっていました。その状況で中国返還後に、法律的矛盾が出てきてしまい、法的解釈権は全人代が持つことになっていきました。
香港政府が最初に全人代に解釈を委ねたのは、1999年に香港市民が中国本土の人との間にできた子どもが中国で出生した場合、「子どもに香港の居住権はあるのか?」という問題でした。このとき、香港の終審法院(最高裁に相当)は居住権があるとしましたが、香港政府は中国からの移民が大量に来ることを懸念して、全人代に香港基本法について解釈を求めたところ、終院法院の判決をつくがえして無効としました。その後、これまでに5回、全人代が解釈したことがあり、そのうち3つが中国本土側に有利なものになっているそうです。
ここで、いろいろ書いてしまいますと、次回、香港もしくは中国へ訪問した際にいろいろとまずいことになりかねないリスクもあります。
香港国家安全維持法の取り締まり対象は、「国家統一を破壊する行為(国家分裂罪)」 「国家を転覆する行為」 「テロ活動」 「外国、海外勢力との結託」の4つになります。
こんなことは、どこからどう見ても、まったく怪しくない平凡な日本国民の私が関わる余地もないのですが、どうやら、実際の行為がなくても、相談したり、メールを送ったり、金銭支援をするだけで取り締まりの対象となってしまう可能性はあるようです。つまり、今回、何人か逮捕されてしまいましたが、おそらく、これらが解釈されたものだと思います。
また、ここからが外国人にとって要注意になるのですが、「永住権を有さない者が本法の規定する犯罪を実施した場合は、独立して適用または国外追放を付加して適用することができる」としています。つまり、外国人をも取り締まりの対象となるのです。たとえば、日本で普通に売られている本などに、批判するような内容のものを持って香港に入ったりしたら、逮捕される可能性すらあります。
さらに、「永住者の身分を有さない者が香港特別行政区以外で香港特別行政区に対して本法に規定する犯罪を実施した場合、本法を適用する」という条文もあり、つまり、ストレートに解釈しますと、外国人が香港以外の場所であってもこの法律は適用されるのです。よって、一部の国では香港と犯罪者の引渡し条約を結んでいるため、条約の急停止手続きを開始しているのです。
なお、「永住者の身分を有さない者が香港特別行政区以外で・・・」ということは、極論では地球外に居ても、違反すれば逮捕されることになってしまいます(これはこれで、イスカンダルに行っても不安です)。
なお、ジャッキーさんのほか、2000名を超える香港の芸能関係者が、この法律成立前に連名で支持を表明しています。ジャッキーさんは中国の国政諮問機関、全国政治協商会議の委員を務めるなど中国との関係も深く、署名リストの先頭に名前がありました。ただし、署名が呼びかけられた経緯は不明で、ジャッキーさんらのコメントも伝わっていません。香港芸能界にとって中国本土は重要な市場であり、支持を表明しなければ、中国で活動ができなくなるのだろうと推測されています。
さてさて、当時のジャッキーさんは31歳。2020年には年齢を重ねて66歳になりました。現在でも自らアクションスタントをこなしますが、さすがに全盛期のようにはできなくなりつつあります。これは、人間、誰しも仕方がないことでしょう。また、当時の香港も全盛期の輝きを持っていたと思います。しかし、こちらは、別の意味で全盛期の輝きを失ってしまったと思います。
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