【実験碁の周辺での巻】
■9月1日投稿「190901別荘」の続きです。
■相手は上級(2級)で、5子局です。
■あらかじめ5子を置いてもらっているので「60目以上のハンディがあるところから追い上げて、持碁(引き分け)か1目以上勝とう」とするわけです。
■本手(正しい手)ばかりを打って勝てるならいいのですが、わたしのチカラでは難しい。でも、相手のミスを待ったり、だましたりするような打ち方ではなく、構想を工夫したり技を繰り出して逆転を狙います。
■この碁では、破天荒な構想を試してみました。
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❶実験
左下スミは黒の石がたくさんあります。白2子のほか、白3子の取り跡もあります。
ここは石を捨て気味にし、それを利用して下辺に白地を作ったところです。
相手は石を取りきろうとして、余分な手がかかっています。
この部分のみ、ざっくり確定地を比較すると、黒30目、白20目。
でも外周りに白石があって、白には発展性が期待できます。
仮に天元の黒石がなければ、つまり4子局だったなら、わたしは「もらった!」と思うでしょう。
❷実験
左辺に白石10子が取り込まれています。
ここは相手が間違わずに打った結果ですから、やむを得ません。
そのかわり、キキがあるので、それを活用して下辺と右辺に大きな地を作りました。
右上スミも、ちょっとした技を使って黒石を上辺に圧迫したのがミソです。
ざっくり確定地を比較してみてください。
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■この様子を、しばらく見ていたH八段。
■こらえきれず「これは本番ですか」と聞いてきました。本番とは「リーグ戦」のことです。もし自由対局だったら、途中で何か言いたかったようです。
■対局が終わった後「あれ(左下スミから中央にかけての捨石10子)は失敗したね」と言われました。
■わたしはあいまいに笑っておきました。もちろん「部分的」には失敗にみえますが、失敗ではないのです……。
■Hさんは、人格、棋力、指導力、どこから見ても上質の碁打ちであることを断っておきます。
■しかし、わたしは「同好会の自由対局であっても真剣勝負。『対局中に』横から口をはさまれるのを好まない」のです。プレーヤーと応援団との関係は、野球やマージャンとは違います。
■一方では「局後の検討」は大好物。上手にはお願いしにくいですが、初二段・上級で相手によっては序盤だけでも並べてみます。50手ほどですが、終わったばかりなので、最後まで並べられそうです。これは暗記力ではなく、自分で考えたことですから流れで分かります。相手がどう考えていたかを知るのも興味深いことです。
■付け加えると、この場では「こういった実験碁の意味を簡単に説明しても、なかなか分かってもらえそうもない」ので、余計なことを口にしませんでした。
■相手によりますが、高段者でも「柔軟な発想のヒトか」「生真面目に棋書を信じ切っているヒトか」を見極めるのには一定の時間が必要です。言い換えると「芸の幅を広げたいという変なヒト」「勝負優先の本道を突き進むヒト」との違い。言葉では分かり合えない「暗くて深い川」があるようです。
「囲碁の神様が『100』を知っているなら、自分は『4』か『5』くらいだ」
▼孫娘(藤沢里奈)も愛弟子(高尾紳路)も応援しています
人間力があり、碁も厚み重視の本格派で、清々しい