【苑田理論の肝の巻】
■「手書き棋譜の効用=アナログ的勉強法の一考察」の一連の投稿で、「西の宇宙流」苑田勇一九段の独創的理論「美人を追わず」に触れました。気になっておられる方もいると思います。少し説明しておきます。
■まず定義から。
「美人の石」=自分の石数より、相手の石数が一つか二つ少なく、直接攻めてもうまくいかない場合の石のこと
「美人は追わず」=直接追いかけても攻め得が見込めない。逃がしてしまう。それならばカラメ手で攻めていくべきだという考え方。少し遠くから網を張っていく作戦。つまり「モタレ攻め」の極意なのです。
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■では実戦解説です。黒が趙治勲九段、白が苑田九段。
実戦図(美人を追わず)と途中失敗図(美人を追いかけてしまった)をどうぞ。
▼黒1~白12
プロ・アマ問わず、よく現れるツケヒキ定石。黒は地を持って安心、白も収まりの形。ともに生きの形ですから、一番遠い場所が次の戦いの場になります。つまり左上スミ。
▼黒13~白18
黒13のカカリに対し、白14と厳しい一間バサミ。左辺が大きいので、aとゆっくりハサムのもあった。白18のコスミツケは黒を重くした手。
黒13のカカリに対し、白14と厳しい一間バサミ。左辺が大きいので、aとゆっくりハサムのもあった。白18のコスミツケは黒を重くした手。
▼失敗図
白18で、白1は定石。しかし「美人を追いかけた手」。ダメです。黒2の手筋から、黒8となれば、黒が左辺を打ち越した形となり、白の失敗図。白が美人を追いかけたため失恋の道をたどります。恋愛は、マニュアル通りにはまいりません。
白18で、白1は定石。しかし「美人を追いかけた手」。ダメです。黒2の手筋から、黒8となれば、黒が左辺を打ち越した形となり、白の失敗図。白が美人を追いかけたため失恋の道をたどります。恋愛は、マニュアル通りにはまいりません。
▼白18~白20(18は再掲)
白が黒を重くした後、白20。上辺の黒石にツケてもたれるのが「美人を追わずの手」。
▼黒21~黒29
一本道の進行。白は、上辺を黒に与え、左辺の黒4子を攻めようとしています。白30は、左辺1子から一間トビ。
なお黒29でaとハネたくなりますが、これはうまくいきません。白から29にキリが入ると、黒は対応に窮します。検討してみてください。手拍子でハネると、ここで碁をダメにしてしまいます。