混沌とした世界。
それは今朝遭遇したような事を言うのだろう。
今朝…と言っても時刻は12時半過ぎだが、夜が遅く、従って朝も遅い自分にとってはこの時間帯はまだ"朝"なのだ。
兎にも角にも、12時半過ぎ。電車に乗る俺。混雑率は110%くらいになっている。座席が埋まり、立っている人が何人かいる感じだ。
普通の日常だった。
優先席に座る黄色いスエットの男を見るまでは…。
年は30歳半ば程。自分より幾分年上に見える。
髪の毛は整えられておらず、茶色に染めたところか斑になっている。
加えて、無精髭で、2~3日剃ってないような印象を受けた。
身嗜みにルーズな事以外、特に目立った特徴はない。
ふと、目線を落としてみる。男が手に何かを持っていた。
10cm×5cm×2cmくらいの箱。
ずいぶんボロボロになっているが、辛うじて手の隙間からその箱に記されている文字を読み取る事ができた。
『GAME BOY ADVANCE』
ゲームボーイアドバンス。
一瞬、自分が過去にタイムスリップしてしまったような錯覚に陥る。
この男、任天堂DS-LL、任天堂DSライト、任天堂DSを超え、アドバンスを未だにプレイしているのだというのか。
いや、それはそれでいい。無骨なドット絵が好きな人間もいるし、自分もその一人だ。
しかし、ソレだけは理解し難い。
その左手に持っているカセットテープレコーダーだけは。
なぜ今、ゲームボーイアドバンスなのか。また、なぜゲームボーイアドバンスのソフトを箱ごと持ち運んでいるのか、そんな数多の疑問を打ち消すかのように現れたカセットテープレコーダーに、俺は釘付けになった。
純粋に"凄い"と感じた。
現役で稼動しているゲームボーイアドバンスとカセットテープレコーダー。凄い。
それを何の臆面も無しに持ち歩く男。凄い。
そして、この日最高気温9度の中、サンダルで外出しているこの男。
…凄い。
駅に着き、立ち上がる男。見上げる身長182cmの俺。身長が優に190cmを超えている。凄い。
なにもかもが常軌を逸していた。時代も季節も頭の中で混沌となる。西暦何年の何月なのか…何かがおかしい。
発狂しそうになった時、目に映った中吊り広告の『2010年』の文字。少し安堵した。自分は2009年を生きている。
落ち着いて前を見たと同時に電車の扉が開く。
外の風は冷たかった。
それは今朝遭遇したような事を言うのだろう。
今朝…と言っても時刻は12時半過ぎだが、夜が遅く、従って朝も遅い自分にとってはこの時間帯はまだ"朝"なのだ。
兎にも角にも、12時半過ぎ。電車に乗る俺。混雑率は110%くらいになっている。座席が埋まり、立っている人が何人かいる感じだ。
普通の日常だった。
優先席に座る黄色いスエットの男を見るまでは…。
年は30歳半ば程。自分より幾分年上に見える。
髪の毛は整えられておらず、茶色に染めたところか斑になっている。
加えて、無精髭で、2~3日剃ってないような印象を受けた。
身嗜みにルーズな事以外、特に目立った特徴はない。
ふと、目線を落としてみる。男が手に何かを持っていた。
10cm×5cm×2cmくらいの箱。
ずいぶんボロボロになっているが、辛うじて手の隙間からその箱に記されている文字を読み取る事ができた。
『GAME BOY ADVANCE』
ゲームボーイアドバンス。
一瞬、自分が過去にタイムスリップしてしまったような錯覚に陥る。
この男、任天堂DS-LL、任天堂DSライト、任天堂DSを超え、アドバンスを未だにプレイしているのだというのか。
いや、それはそれでいい。無骨なドット絵が好きな人間もいるし、自分もその一人だ。
しかし、ソレだけは理解し難い。
その左手に持っているカセットテープレコーダーだけは。
なぜ今、ゲームボーイアドバンスなのか。また、なぜゲームボーイアドバンスのソフトを箱ごと持ち運んでいるのか、そんな数多の疑問を打ち消すかのように現れたカセットテープレコーダーに、俺は釘付けになった。
純粋に"凄い"と感じた。
現役で稼動しているゲームボーイアドバンスとカセットテープレコーダー。凄い。
それを何の臆面も無しに持ち歩く男。凄い。
そして、この日最高気温9度の中、サンダルで外出しているこの男。
…凄い。
駅に着き、立ち上がる男。見上げる身長182cmの俺。身長が優に190cmを超えている。凄い。
なにもかもが常軌を逸していた。時代も季節も頭の中で混沌となる。西暦何年の何月なのか…何かがおかしい。
発狂しそうになった時、目に映った中吊り広告の『2010年』の文字。少し安堵した。自分は2009年を生きている。
落ち着いて前を見たと同時に電車の扉が開く。
外の風は冷たかった。