一人の男が、ネクタイを持って首をかしげている。
首に掛けては結ぼうとするが上手くいかない。
また首をかしげる。
この作業を繰り返して、かれこれ10分が経とうとしていた。
何か腑に落ちない、何故こうなったのか理解できない混沌とした表情。
それもそのはず。彼は毎朝、何百何千と繰り返してきた『ネクタイの結び方』を、完全に忘却したのである。
いや、『忘れた』のではなく、今まで全自動で首にネクタイを巻いていた両手の機能が完全に停止し、バグを起こしているような感覚。
何故そうなったのか…その理由は解らない。理由が解った所で、手が瞬く間にネクタイを結び出す訳でもないのだが…。
また首にネクタイを掛ける。
どっちを長くするのか。右が上か、左が上か。
序盤でつまづく有様である。
もはや中学1年生の『初ネクタイ』である。ジャメビュを見ているかのような感覚に陥りつつ、アプローチ方法を変える。
まずネクタイをハンガーに掛ける。シャツを脱ぐ。
そう、仕切り直しである。リズムが大事なのだと思った男は、シャツを着るところから再度挑戦を試みたのだった。
今一度シャツを着る。ボタンを止める。ネクタイを手に取る。ネクタイを結…べない。
やはり同じ所で手が止まる。
ネクタイを首にかけた途端、催眠術にでもかかったように全身が硬直した。
結ばれないネクタイを両手に持ったまま、時計を見る。一瞬焦る顔。
観念した男はそのままネクタイをバッグに押し込むと、自宅を後にしたのだった。
結局その日はネクタイを結べず、翌日何も考えずに着替えていたらいつの間にか結んでいたのでした。
何だったのだろう。
考え過ぎは良くないって事かね。
首に掛けては結ぼうとするが上手くいかない。
また首をかしげる。
この作業を繰り返して、かれこれ10分が経とうとしていた。
何か腑に落ちない、何故こうなったのか理解できない混沌とした表情。
それもそのはず。彼は毎朝、何百何千と繰り返してきた『ネクタイの結び方』を、完全に忘却したのである。
いや、『忘れた』のではなく、今まで全自動で首にネクタイを巻いていた両手の機能が完全に停止し、バグを起こしているような感覚。
何故そうなったのか…その理由は解らない。理由が解った所で、手が瞬く間にネクタイを結び出す訳でもないのだが…。
また首にネクタイを掛ける。
どっちを長くするのか。右が上か、左が上か。
序盤でつまづく有様である。
もはや中学1年生の『初ネクタイ』である。ジャメビュを見ているかのような感覚に陥りつつ、アプローチ方法を変える。
まずネクタイをハンガーに掛ける。シャツを脱ぐ。
そう、仕切り直しである。リズムが大事なのだと思った男は、シャツを着るところから再度挑戦を試みたのだった。
今一度シャツを着る。ボタンを止める。ネクタイを手に取る。ネクタイを結…べない。
やはり同じ所で手が止まる。
ネクタイを首にかけた途端、催眠術にでもかかったように全身が硬直した。
結ばれないネクタイを両手に持ったまま、時計を見る。一瞬焦る顔。
観念した男はそのままネクタイをバッグに押し込むと、自宅を後にしたのだった。
結局その日はネクタイを結べず、翌日何も考えずに着替えていたらいつの間にか結んでいたのでした。
何だったのだろう。
考え過ぎは良くないって事かね。