『あなた、頑固だよね』
突然投げ掛けられた台詞に、反射的に返してしまった。
『頑固じゃないよ』
しかしその主張も彼女の耳には届いていないのか、また先程と同じ台詞が発っせられた
『あなた頑固よ』
『いや、頑固じゃないよ』
『頑固だと思う』
『いや断じて違う』
一体何なんだ。覚めない夢でも見ているかのように、同じシーンが幾度となく繰り返される。
『だって…』
『頑固じゃない!!』
彼女の台詞をインタラプトして一蹴
その瞬間、気付いてしまった。
頑固さを否定すればする程、頑固さを露呈させている事に。
『俺は頑固じゃない』『頑固じゃないよ』『頑固じゃない!!』
これを頑固と言わずして何と言うのか。
『怒らないからこっちに来なさい!!』
と、怒りながら息子に叫ぶ父親の心境に似る。
逆に
『あぁ、言われてみれば確かに頑固かもな』
と言ってしまえば良かっのかと考えた。
自分の頑固さを安易に肯定する事により、逆に頑固さを否定する事になる。
なぜなら頑固者は他人に言われたからといって、簡単に考えを変えないものだからだ。
逆転の発想。早速実行してみる。
『あ、い、いや確かに頑固かも?』
『そうでしょ!やっぱりね!』
予想していた通り。うまくはいかないものである。
そもそも上記の逆転の発想のカラクリを、相手が理解してないと意味がない返しだったのだ。
これで自分は自他共に認める頑固者となってしまった。
結局『あなた頑固よね』の問いに、真意を持った答えを返すのは難しい。
このような問いが来たら気をつけた方がいい。
相手は9割方あなたを頑固者だと決定しているのだから。