忘憂之物

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             渋沢栄一

車いす客を乗車拒否 草津のバス会社「安全確保できぬ」>2012.1.31

2012年01月30日 | 過去記事






http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20111022000014
<車いす客を乗車拒否 草津のバス会社「安全確保できぬ」>

<帝産湖南交通(草津市)が大津市内で運行する路線バスで、車いすの乗客男性(44)=京都市右京区=が下車時に転倒し同社に抗議したところ、9月から乗車を拒否されていることが21日までに分かった。同社は「乗降時の安全が確保できないため」としているが、障害者団体からは「乗務員のわずかな介助があれば問題ないはず」という声も上がっている。
 
男性は7月29日に上稲津~石山駅バス停まで乗車し、下車時にバスのスロープで脱輪し転倒。男性が「乗務員がしっかり支えていなかった」と営業所に抗議したところ、後日、同社から車いすでの乗車を拒否する通知が届いた。9月5日にも同区間を利用しようとしたが運転手に乗車拒否され、現在も利用できない状態が続いている。
 
同社はJR石山~栗東の5駅を起点に路線バスを運行し、このうち石山、瀬田、南草津の3駅からの路線は出入口の段差を解消したノンステップバスなどを走らせている。
 同社は「石山駅路線で車いすによる乗車は男性が初めてだった。同路線は道路の幅が狭く、バスポケット(専用停車所)がないバス停では安全が確保できないと判断した」と説明している。
 
近畿運輸局自動車交通部旅客第1課は「ノンステップバスであれば車いすの利用について乗務員に研修した上で極力対応すべき」としており、同社が道路運送法違反に該当するか調査中という。
 
公共交通機関のバリアフリー化を目指すパーフェクトバスを走らせる会(京都市南区)の宮川泰三代表は「車いす障害者の社会参加の機会を奪う不当な乗車拒否。安全に乗降できるよう社員への研修を徹底すべきだ」と話している>




国民生活センターによると、介護事故の内訳は「転倒事故」が過半を超える。私の実体験からも、そう断言できる。多いのは「転倒事故」だ。また、その次は「原因不明」とある。つまり、原因は知らないけど怪我をしていた、という状態だ。コレも言うまでもなく、目が届かないところでの「転倒事故」の可能性がある。とすれば、介護事故における「転倒リスク」とは7割近い確率となる。続いて「誤嚥による窒息・・13%」が続き「ベッドからの転落・・7%」となる。これらは特養施設内での統計であるが、コレが普通の街中であれば、事故の機会、確率は増すし、事故の結果も大きくなる可能性がある。

最近、駅のプラットホームでも「転落防止柵」を見かけることがある。プラットホームは雨水の排水のため、線路側に若干だが傾斜しているから、酔客がよろめいてコケるのも線路側になる。もちろん、視覚障害者が電車に乗ろうとして「連結部分」から足を踏み外す、あるいはプラットホームの端っこで柵や壁にあたり、方向を変えようとして転落する、などの事故も実際にあったことから、障害者団体や支援団体は「公共施設などの完全バリアフリー」を訴え続ける。障害者が健常者と同じように自由、且つ、安全に生活できる社会を作れと。

しかし、記事を普通に読めば、このバスにも「スロープ」があったとわかる。もちろん、コレは車椅子の乗客のためのもので、この安全性を高めるのが「ノンステップ」、つまり、勾配がない状態で降車できる形式のモノだ。これを介助する。あるいは看視する。その程度なら素人でも出来る。ならば転落はあり得ないし、転倒も考えにくい。車椅子のままコケるシチュエーションが思いつかない。

記事の事故は勾配のあるスロープで、尚且つ、乗務員のいる反対側を脱輪したのだとわかる。つまり、乗務員は対応不可能である。ベストは乗客に車椅子を「自操」させるのではなく、介助者がちゃんと押しながら、スロープをバックで降りることだ。しかし、バスの形状を思い浮かべてほしい。このような介助をするためには、運転手がバスを降りて客室内に入り込み、それから車椅子を押さねばならない。無論、この場合もバスの運転手は降りてスロープ横で支えていた。また、おそらく、研修があったとしてもそこまでだ。出口まで、それからスロープに乗るまでは車椅子の乗客が自操していたはずだ。

私も仕事柄、車椅子を押していろいろやる。施設外の研修でもやる。専用のワゴン車に乗せることもある。手慣れた職員でも慎重になる。要するに簡単ではない。いつまで経っても事故が怖い。乗っているのは生きた人間である。年寄りでも勝手に動く。予想外の行動をとることもある。記事の事故でコケたのは44歳とのことだ。まだ若いし、自操もスムーズだったかもしれない。もちろん、それでも事故を起こすときは起こす。

ただ、やはり抗議はやり過ぎだ。この44歳男性が車椅子生活になった原因が、この路線バスに轢かれたから、ならわかる。しかも、抗議の内容が<乗務員がしっかり支えていなかった>である。100%乗務員の過失だということか。それなら「スロープを脱輪した」ことは誰の責任なのか。車椅子の両輪がスロープ内に収まっていれば脱輪などしようもない。

この44歳男性は次から「お願いすべき」なのである。乗務員の人、他の乗客の人には申し訳ないが、どうか、車内客席まで来て私の車椅子を押してください、というべきなのである。これなら「乗車拒否」はされない。それを「どうしてくれるんだ、オレは障害者だぞ」とやるから敬遠される、他の行儀良い障害者の迷惑になる。他の在日が日本で悪さをするから、私のような「ちゃんとした在日」が困るのと同じだ。



話は少しだけ変わるが、過日、ツレと飲むために地元の駅に行った。あまり治安のよろしくない地元だが、私が育った愛すべき土地である。いいところだ。オウムの平田が隠れ住むほどだ。そのあたりで切符を買おうとしたら怒鳴り声がした。ここが自宅周辺なら驚くが、この地元では別に珍しくもない。元来、そういうところだ。

怒鳴り声の主は派手なセーターを着たオッサンで、隣にはもっと派手な化粧をしたオバサンを連れていた。怒っている原因は知らない。ただ、私が切符を買っている横で「オレは障害者やぞ!おどれ、このままで済むと思うなよ!おおごとにしたるからな!」と恫喝していた。つまり、オレ様は弱者様だ、と叫んでいた。切符の販売機下辺りを蹴り、また何か叫んだあと、オバサンの肩を抱いてけらけら笑いながら去って行った。久しぶりに薄汚れたモノを見た。



記事にある障害者団体とやらは<わずかな介助があれば>としながらも、その下にある「公共交通機関のバリアフリー化を目指すパーフェクトバスを走らせる会」という長い名前の団体代表は<安全に乗降できるよう社員への研修を徹底すべきだ>と言う。<わずかな介助>をする<研修を徹底すべき>とも解釈できるが、これに<安全に乗降>と言われたら、これはもう、ヘルパーや家族に付き添ってもらってください、と言われて然るべきだ。介護タクシーもある。社員の研修費用もタダではない。障害者のために乗務員を増やすなら、それは健常者の運賃に跳ね返る。つまり、こういう逆差別は唾棄すべき、障害があろうとなかろうと関係ない。本当に障害者のためにならない。


3 コメント

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Unknown (むぎ)
2012-02-02 08:22:51
全面的に同意します。
「抗議」してしまったからこそ、バス会社が萎縮して乗車拒否になってしまったわけですね。

なんか、患者さんが「患者様」になり、理不尽な医療訴訟が増えたばかりに救急医療や産婦人科から医者が撤退して、訴訟を避けるために必要以上に頑張らなくなり、その結果救急医療が崩壊してたらい回しが起こった時の話とすごく似ているなぁ~と思いました。
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Unknown (久代千代太郎)
2012-02-04 10:24:01
>むぎせんせ

ありがとうございます。

そうなんですよね、私の業界でも「利用者様」とか「入所者様」は結構なんですが、それがあまりにも酷くなると、今度は「受け入れ拒否」が裏で横行するんですね。結果、利用者「様」でも「さん」でもいいですが、跳ね返るのはそこになりますね。

ちょっと手のかかるジジババが来れば、職員一致で日誌や報告書に「うそ、おおげさ、まぎらわしい」を書き込んでる状態です。たしかに「様」として扱うには不可能なレベルの人もいますからね。これを「理想と現実」「本音と建前」とする感覚には辟易しております。

まあ、またこの辺は詳しく書きたいと・・・


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Unknown (Unknown)
2013-05-05 22:17:46
車椅子も無理に外へ出てわざわざ路線バスに乗るからこんな事なるねん!(怒) 運転士さんも大迷惑大迷惑ですわ。危なっかしい車椅子は 介護人付きで必ず乗れ!
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