忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

たわらちゃんの夏

2010年05月13日 | 過去記事

マラソンランナーの至言で「次の電柱まで頑張ろうと思いながら走る」などと聞くことがある。「目的」を達成するための「目標設定」のことだ。いきなり42,195キロを走りぬこう!と思うよりも、それを細分化し具体性を帯びさせるほうが、例えば、今見えている「次の電柱」などを「目標」とすれば「あそこまで行けば休んでいいのだ」という自己暗示を生む。長く苦しいとわかっている「目的」だからこそ、途中の「目標」は甘くして、小さい達成感を連続で味わえるほうがモチベーションの維持には効果的だそうだ。

しかし、中にはもっとすごいのがいて、標高3500メートルのロッキー山脈で「次の岩まで走ったら死んでもいい」という厳しすぎるまでの「目標設定」を掲げてモチベーションを折らず、実際に倒れて死を覚悟した女性マラソンランナーがいる。その選手は2000年に行われたシドニーオリンピックで、日本人女子陸上競技としては史上初となる金色のメダルをかじって国民的ヒロインになった。その翌年のベルリンマラソンでは、これまた女性選手としては史上初めて2時間20分(世界新記録)を切った。Qちゃん、こと、高橋尚子である。

高橋尚子はシドニーで金メダルを取った翌日の朝6時、なんと、街を走りに出ている。曰く「いつもと違うかと思ったけど、いつもどおりだった」とのことだが、彼女はおそらく「丸い月は一夜だけ」という恩師の言葉を実践したのだろうと思う。今日が満月でも、明日はわからない、だから、いつまでも栄光の余韻に浸っていないで、また走り出せ、という訓示らしいが、いやはや、全くその通りである。どうせ「まんまるお月さん」は続いても2~3日だ。Qちゃん、さすがなのである。ちなみに私と同じ年だったりする。

http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp3-20100512-628657.html
<Qちゃん民主要請拒否 スポーツ現場主義>

是非、たわらちゃんも見習ってほしいのである。同じシドニーで日の丸背負って金メダル取った戦友の言葉を聞いてほしいのである。たにらちゃん、わかってんの?のである。

<高橋さんは、現役を引退した08年後半から政党に関係なく、国政選挙への出馬要請を受けてきた。関係者は「今回も話はありました。ただ、政治の勉強をした人が国民の代表になるべきですし、以前からお断りしていますから」と出馬を断ったことを明かした>

<ただ、政治の勉強をした人が国民の代表になるべきですし>

これほどの正論があろうか。そこらの会社の面接でも「なぜ、この業界に入りたいの?」とか「なぜ、我社に応募したのかね?」などは聞かれるはずだ。その際、聞かれるセリフは往々にしてこんなものだ。「以前からこの業種に興味がありまして」とか「御社の将来に可能性を感じております」とか「地球を覆うほどのやる気でがんがります!」などである。それは単に「家が近いから」とか「給料がマシだし・・」と言えないだけ、というのが少なくないのである。いや、もちろん、政治家という職業を目指す者とは、本来、大いなる志を持ち得ているはずだ。だから、たたらちゃんも、もしかすると、本気で「日本を投げ飛ばしたい」とか「日本を絞め落としたい」などと考えているかもしれない。しかし、だ。

もし、面接に来た人間が、だ。「魚屋に就職するけども、同時に大工の棟梁も目指します」といえばどうか。しかも、旦那はプロ野球選手で子供は二人いる。それ、普通は採用しないのである。さらに魚屋に他意はないが、いや、鯛はあるか、いや、ともかく、今度は魚屋が頼んでいるわけだ。来てくれと。野球選手が旦那でもいいし、子守もすればいいし、棟梁も目指していいよと言えるとき、それは「別の目的」、すなわち「魚屋としての仕事」を期待しないということにしかならない。この場合は比例代表選挙における「集票マシーン」が彼女の仕事なわけだ。客寄せパンダではないか。

巨人にいる旦那も止めるどころか、こんなコメントを出す始末。

<この度、妻・亮子が参議院選挙に立候補する運びとなりました。3月にお話を頂いてから前向きに話を進めてまいり、彼女も真剣に国政に携わって、やってみたいことがあるとのことなので、協力できることがあれば、快く協力するということを提言した次第です>

おまいは、嫁さんの話を前に進めるよりもランナーを進めたほうがいいと思う今日この頃、まあ、しかし、ある意味、がっかりさせてくれる。たわらちゃんではなく、小沢のことだ。

「貧すれば鈍する」とは言うが、まだ貧していないだろうに、もはや鈍しているとはどういうことか。そして逆に言えば「鈍すれば貧する」だろうから、これからこの民主党の不動産屋は人生楽しみでしょうがないだろう。自分に付き従ってきた連中から「どんな目に遭わされるのか」と想像するとき、もはや検察が神様に見えるかもしれん。

つまり、だ。

小沢は、たわらちゃんに柔道で一本取らせることは無理でも、政治家一本に絞らせることはできていないとダメだろうということだ。それくらいのことがわからなくなっているのか、もはや、本当に「鈍」したのかはしらんが、これのどこが「選挙に強い剛腕」なのかと信じられないのである。

また―――

これはまさに、民主党における「小沢支配」の強さとその弊害を如実に表している。現在の民主党内部とは小沢批判どころではなく、何も言えない空っぽのイエスマンの集まりだということだ。こんなバカみたいなことですら突っ込めないのだ。党にとって不利益となる、あるいは、せっかくの集票マシーンを効果的に使うためにも、ここはボスに具申せねばならないはずなのである。

以前、社長マンが「飲酒検問情報をお客さんにメールでお知らせするサービス」を発案するも、私から呆れ果てられて一蹴されたことを思い出したが、どこの世界でも「金と権力にしか興味がない無能」とは「だれかが止めねばならないこと」を言い出すものなのだろう。トップに堂々と意見するというリスクを避けるNO2ばかりでは、その企業が立ち行かなくなることは自明であり、この場合、それは言うまでもなく、日本の国が立ち行かなくなることを意味する。すなわち、この政権とはもう、とっくに機能不全なのだと知れる。


かわらちゃんを「集票マシ-ン」として使うならば「ロンドン五輪を断念してもらう」という条件を譲ってはならなかったはずだ。その場合の抗議や文句とは「柔道をやめないで!」という「たわらファン」に限定されるが、中途半端にも名が売れ通っているから、それはアンチ民主党だけでなく、数も少なくなった民主党を擁護する人すら困っている。



「魚屋になりたい」と言って魚屋に修行する人が、それから魚を学んでいくことに問題はない。最初から「さかなくん」でなくてもいい。どんな仕事でも「その仕事に興味がある、やってみたい!」という動機があればいいと思う。それに、普通はそういうものだ。「とりあえず、なんか仕事しないとね・・」と言いながらプロ野球選手にはなれないが、まあ、その「とりあえず」から始めてもよい仕事は少なくない。無論、その仕事を懸命に、それこそ「禺直」にやり続けることから、だんだんと板に付き始め、一人前と呼ばれるようになれば、その仕事を「とりあえず」とはもう言えなくなっているはずだ。そして「政治家」という仕事がそうであっても問題はないかもしれない。所詮は「きっかけ」に過ぎない。

ただ「政治家」という職業は、志を持って勉強して努力してなる人もいれば、なんとなく選挙に出ろと言われたから出てみたら、なぜかわかんないけど通っちゃった、という人もいる職業ではある。怖いのは、通常、そのような感覚で1年も経てば魚屋であれ肉屋であれ、普通の仕事ならばクビになる。仕事もできず、やる気もなく、嘘は吐くわ、脱税はするわ、この会社はここの従業者だけのものではないとか言いだすわで、それでもクビにならずに出世していく奴がいると不思議に思えば、なんのことはない、そいつの父親が社長だったりするものだ。

しかしながら、世襲であれ叩き上げであれ、無能は無能だし、有能は有能である。そこに問題はないのだが、なぜだか、無能な叩き上げは登らないのに、無能な世襲は登らせるのである。問題はそこにこそある。ちゃんとした仕事をしてくれるなら、何代目の世襲議員でも問題ないし、タレントでも芸人でも、スポーツ選手でも俳優でも問題ない。問題はちゃんとしていないのに、誰も降ろさないことである。誰も文句を言えないことである。

くだらない企業が淘汰されていくのは、自由経済社会における摂理である。それは顧客から見放されるからだ。しかし、国というものは見放すことができないようになっている。先の理屈であれば、政党とは顧客ではなく有権者に見放されたら終わらねばならないはずだが、コレを終わらせる「正当な手段」としては選挙しかない。消費者は「買わない」ことで企業を倒すことはできるが、それが「生きていく」ことの否定ではないように、政権を打倒しても国を倒すわけではない。

現政権は末期的症状を過ぎている。政権とは国のことではない。政権は狂っているが、国が狂っているわけではない。つまり、この史上最悪の政権をこれ以上放置することは国が倒れるのではなく、国が倒されることを意味する。国民とは国がなければ国民たり得ない。現在は間接民主制を悪用する「一味」が政権を奪っている状態だ。くだらない企業が「儲ければいい」に堕すのと同じく、政党が「票さえ取れればいい」に堕するとき、先ず、その「生活が第一」から壊れ始めるのだろう。馬鹿にしか通じないバラマキを餌に、その裏で薄気味の悪い法案をごりごり通している現実は、近い将来、必ず、私やあなた、恋人や伴侶、その子や孫、また、その子や孫を地獄に突き落とすだろう。

今年の夏に覚悟を決める前に、昨年の夏の後悔は済んでいない。

2 コメント

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Unknown ()
2010-05-13 09:56:30
小沢の隣に座った写真と
「政治でも金」
の活字を見ると何度読んでも「カネ」にしか見えないのですが。
プロレスだのタレントだの、もうお腹イッパイです。
田村選手本人には関係無い事なのかもしれませんが、昔から父親の仕事の事も言われていますし、何よりも選挙に出るなら先ず引退をするべきだと思います。
しかし、民主は人材豊富ですね
酪農が危機的状況でも国費で行った海外旅行から帰らない大臣に、キャバクラ5やらキャバ嬢にAV、SMもいましたねぇ
仕訳ないんですかねぇ?

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Unknown (久代千代太郎)
2010-05-13 19:20:41
>な さん

まいどです。


たわらちゃん、当選しちゃうんですかねw

もう、これでまだ、民主党がイイというなら、どうすればよいのか・・・正攻法では無理な時代が来ましたかね、日本も・・・
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