個人雑誌編集長兼雑用作家、

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齋藤務作品[武器少女ガーネットスプリンガー] 

2017-02-23 04:49:47 | 新作テスト小説


武器少女ガーネットスプリンガー

 ー 第五話 ー

青い星の乾いた荒野

(酒場)

大きな街の賑やかな喧騒が、ガーネットの耳に聞こえて来た。

音楽や歌があちらこちらから聞こえて来る。

店店が飾り立てたショーウインドウや、道行く人々の着飾った様々な服が行き交っている。

そんな色とりどりの華やかな街の通りを、主の正也と武器馬に乗って歩きながら、ガーネットは胸が躍っていた。


高速輸送馬車を襲撃した犯人を追って、ガーネットと正也は、サウスエデンに着いた。

この広い荒野では、大きな街は限られている、ここは意外に大規模の街だった。

宇宙軍の戦闘騎兵隊の砦もあるが、正也の特殊空間騎兵隊は別組織に近かった為に、砦では、ここから数キロ離れた場所で、高速輸送馬車が何者かに襲撃されて乗員が殺害されていたと報告をしてから、自分の所属する本体への状況連絡を入れた。

その結果、正也は、暫くは、このサウスエデンに留まる事に為った。


砦の外に出て、休暇を楽しむようにして、正也はガーネットと通りを歩き散歩をしている。

すると、ガーネットが、武器用の服店で足を止めた。

前に正也が言った事を急に思い出したのだ。ガーネットが正也を振り返って見ると、正也は財布の中を仕切りに気にしているみたいだった。

武器店に入り、服を試着しているガーネット、ドレスや、ルミナスみたいなタイトな服とか、セクシーな物まで挑戦していた。

武器がセクシーな服を着ている、そんなおかしな光景だが、正也も楽しげに微笑んでいる。

だが然し、その値札を見ては、正也は顔を歪めていた。

何でこんなに高いんだと言わんばかりの顔で武器店の定員を見ると、定員は正也を無視してガーネットにどんどん服を持ってくる。
「お客様、これは当店自慢のアラミド繊維をナノサイズで特殊加工編みをした。贅沢な布地を最高のデザイナーがデザインしており、仕立ても軍事機密を含む特別性でございます。」

と、売り文句を並べて、更には、黒い上下の、ヤラチイー、ガーター付きの、正人も目を伏せる物まで進めている。
「これは特殊なカーボンファイバーで織り上げられた極上の下着でございます。これを、お客様が、身にお着けになれば、ご主人様も大喜びの品でございます。」

などと、客の武器の気持ちを確りと掴んで売り付けている。主の正也を、ヤラチイー下着で追い払うようにして売り込みを掛けている。

そんな店の営業方針には文句は言えずに、楽しげなガーネットにも抗議できずに項垂れる正也、
「ガ、ガーネット、も、もう服は決まったかい?」

弱弱しい声を出して正也が言うが、向こうでガーネットは、何着か手にして悩んでいるようだった。

それを見た正也の魂が体から抜け出して、高い高い天で楽しげに舞い踊っているみたいに、地上にいる正也は財布を握り、抜け殻に近かった。

高い高い値段も高い、そんな桁数の多い値札が、そこの店には空の星のように無数にあるのだ。



結局、空の星を欲しがるように、ガーネットが欲しいと言う物を買ったのだが、正也は、ふわふわと宙に浮いて地に足が付かない、と言うよりは足が出ていた。

そんな事など気にもせずに、ガーネットは服を三着購入していた。

それで正也の給料とボーナスが吹き飛ばされていた、無残にも財布の中身に何もない荒野は広がっていた。






そんな正也とガーネットが、ある酒場の前に通り掛かった時だった。

そこから追い出された武器の少女が転がって出て来たのだ。
「何だ!バキャロー!アタシの電磁カッターで細切れにされたいのか?」

と、チッコイ武器が強がっている。

そして、正也とガーネットを見ると、
「何見てんだよ、見世物じゃあねーぞ!アタシャ列記とした武器だ!最高の武器なんだよ、うえーーーん!」

と、泣き出した。

それを宥めるガーネット、
「どうした?チッコイの、大きい武器にいじめられたのか?」

と、これまた気も使わない言い方で、チッコイ武器の気持ちを思いっきりに踏み付けた言い方をしていた。

「何だよ、着飾った武器が、形ばかりで満足に戦えない武器の癖に!」

ガーネットが、腕を電磁ソードにして見せ付ける。

すると、チッコイ少女はまた泣き出した。
「うえーーーん、これ見よがしに、大きな電磁ソードを見せ付けやがって、うえーーーん!」

その小さな武器は、良く賭博師や酒場で働く女が護身用に連れ歩く、小型の携帯武器であった。

接近戦や単独戦闘を得意にした武器だが、威力が小さく、戦闘力も限られていて、相手の意表を突いた一撃を仕掛けるだけの武器だった。

その小型武器の少女が、
「私は、デンジャラスな武器なんだ!触ると火傷じゃ済まないからね!」

と、強がり嘯いている。

だが確かに、この武器の一撃は人ひとりは簡単に葬れる。

正人は、酒場の中を覗くと、中では、賭博師たちがゲームの真っ最中だった。

それでちょこまか動き回る、この武器が追い出されたんだと理解した。

「まあ、ゲームが終わるまでは、大人しくしていた方がいいな!イカサマだと言って争いに為るからな?」

すると、顔色を変える武器、
「ま、不味い、相手のカードの手の内を覗かないと、主にこっ酷く叱られる。」

そう言って、小さな武器が酒場に飛び込んでいった。

それに驚く正也、
「ええつ、な、何だ!?」

チッコイ武器は、色んな角度から、ゲーム中の客の手元を覗いているのだ。

のけ反る正也、だが然し、そんなイカサマは直ぐに襟首を掴まれ、その主に突き出されて仕舞う、
「おう、これは何だ?リードさんよう」

カードを手にした派手な白い服を着た男が、チッコイ武器をチラリと見て言う、
「知らないな?俺の武器じゃないよ、誰の武器かな?」

と、見え透いた嘘を言い、恍けている。

然し、男たちは収まりが付かないようだった。
「おう、さっきから、テメーばかり勝ち続けてんじゃねーか?おかしんじゃねーのか?」

と、直ぐにイカサマだと分かりそうな物なのに、今頃、丸裸で文句を言っている。

だが、そのイカサマ男が、脇からこれまた派手な真っ赤なドレスを着た武器を膝の上に座らせると、その武器は腕をガトリングマシンガンに変化させて、男たちに向けていた。

それには、ビビる男たち、

「君たちは、僕に言い掛かりを付けているみたいだが?文句が有るならカードの勝負で勝って言いなさい!」

と、勝てないから文句を言っているのに、理屈にも為らないセリフを堂々と言っていた。

それを正当化する為に、膝の上の武器が強力な武器を見せ付けている。

文句もそこそこに男たちは、その儘の姿で退散していく、それを不敵に微笑み見送るイカサマ男だった。

外に出ていく男たちが、いこうとするのを、正也が止めた。
「その子は、どうするんだ?」

男たちは、正也の空間騎兵隊の制服を見て、仕方なしに、襟首を掴んでいたチッコイ武器を地面に投げ捨てていく、

投げ捨てられたチッコイ武器は、
「あいたたた、泥まみれに為っちまった。お前の所為だぞ!」

と、正也に向かって文句を言っていた。

そんな後に、酒場の裏道に出てきたイカサマ男は、自分の武装馬に赤いドレスの武器と一緒に跨っていこうとしていた。

そこへ、正也とガーネットが、チッコイ武器を連れて現れる。
「この子は、あなたの武器でしょ?」

男が振り向く、
「あん、ああ、スズランか?もうそいつは、俺の物じゃあ無いよ、武器としては使いないガラクタだからな!」

「ガラクタ」

「そうだ、電磁発生器もいかれてるし、二発撃てる電磁ショットも撃てないガラクタさ!」

その主の冷たい言葉に項垂れるスズラン、

「いらないのか?この子は、」

「ああ、いらないよ、お前が捨てて置いて呉れ!礼はしないがね。ハハハハハ」

呆気に取られる正也とガーネット、捨てられた武器には行き場所など無い、廃材再生施設で破壊されて、跡形もなくなる、それが運命だった。


正也は、砦に戻り、武器の機械の修理の出来る工兵を探した。

そして、スズランを修理して貰ったのだが、

「こいつは酷い、電磁発生器が抜き取られている上に、両足の電磁ショットも中身が無いんだ!」

「はあ?無い、何も無いんですか?」

「そうだ!こいつにそれを入れるなら、新品を買った方がお得な位だな!」

全くイカサマ師は、自分の武器からも必要な物はかすめ取っていた。

抜け目が無いと言うか、スズランに残されていたのは、頭の小型AIと外装の体だけだった。

溜息を吐く正也、次の給料まではスズランは砦に置いておく他は無かった。


宇宙軍の戦闘騎兵隊の砦の、正也の部屋の窓辺で、椅子に座り外の街を見ながら、ガーネットは何かに思いを募らせていた。

悲しげに遠くを見詰めている、だが、足音が近付きドアが開くと、そこに立つ正也を見て、自然に微笑むガーネットだった。





2017、2、23、個人雑誌グラス編集部、副編集長兼雑用、主力作家の齋藤 務、

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