武器少女ガーネットスプリンガー
ー 第四話 ー
青い星の乾いた荒野
(お尋ね者、)
真っ暗な空が、地平線から横一面に輝くように光りが広がり、赤く燃えた太陽が荒野の大地から昇ってゆく、
人の温もりのように、ガーネットの頬を暖かな光が包み込む、心地よさそうにして、正也の背中に顔を埋めて、目を閉じるガーネット、
ガーネットと正也は、朝日が昇る荒野の中を、武器馬に跨り平原を進む、広がる大空と大地の、そんな地平の境界線で、何かの爆発と煙が立ち上り、
正也とガーネットの行く手の、その遥か向こうで、街と街を結ぶ高速輸送馬車が襲われていた。
それに気付き、正也がガーネットと共に、高速輸送馬車の救援に向かった。
然し、高速輸送馬車は無残にも破壊されて、その乗員たちも息絶えていた。
正也は、高速輸送馬車を襲った犯人たちを追う事にしたが、走る武器馬でガーネットが正也に聞く、
「何で、犯人を追うんだ。目的地にいくのに反対方向だぞ!」
正也、
「仕方ないんだ。僕は、特殊空間騎兵隊の准尉だから、見逃すわけにはいかない!」
ガーネット、
「空間騎兵隊!?あの連邦宇宙軍所属の戦闘騎兵隊か?」
正也、
「まあ、僕の所属は、特殊空間騎兵隊なんだ。惑星の街の警備や治安とか見て回るんだ。」
ガーネット、
「惑星保安官なのか?」
正也、
「違うよ、宇宙軍の騎兵隊だから、敵とかと戦うんだ。」
ガーネット、
「敵!?」
正也、
「そうだ、敵だ。僕たちは、あらゆる敵からの攻撃を阻止して、移民惑星を守っているんだ。」
ガーネット、
「あらゆる敵か?サーデュラス、私の敵・・・」
正也、
「んん!?何か言ったか?ガーネット、」
「何でもない、独り言だ。」
「独り言ね。そうか、ならいい!」
ガーネットが口にしたサーデュラス、正也は顔を曇らせた。
正也たちが追う、高速輸送馬車を襲った犯人らしき者は、大きな岩場を回り込んで迂回して、サウスエデンに向かったらしい?
この付近では一番大きな街だった、正也とガーネットは、サウスエデンの数キロまでの所で、野宿をしているらしい煙を見付けた。
武器馬から降りて、その焚き木の場所に、そっと近付くと、焚き木の場所には人の姿は無かった。
だが然し、付近を調べている。正也の背後に回った男が、正也の背中から電磁ライフルを突き付けた。
そして、
「こんな所まで、俺を追って来たのか?その制服は、空間騎兵隊の服か?」
正也、
「そうだ!僕は、空間騎兵隊の准尉、藤城正也だ。貴さまは何者だ!」
「んん!?俺を追って来たんじゃないのか?小僧、」
「僕は、高速輸送馬車を襲った犯人を追ってここに来たんだ。貴さまが高速輸送馬車を襲った犯人だな?」
「違うな、俺は、ここにいただけだ。人違いだな、小僧」
「だが、追われているお前も、犯罪者には違いない、誰だ!お前は?」
「まあ、名乗る程の者では無いと言っておくよ、小僧」
「僕を小僧と言うのはやめてくれ、これでも空間騎兵隊の士官候補だ。」
「ほう、若い隊長殿か?で、部下はどこだ?准尉と言ったな、なら小隊か?五人だな!」
「今はいない、僕だけだ」
「嘘を言え、指揮官候補でも部下はいる、お前は部下とはぐれたとでも言うのか?」
「単独行動中で、一人だよ」
「ランドルフ、ここにもいました。その隊長さんの武器でしょう、さあ、こっちに来なさい!」
「なに!?ランドルフだと・・・」
ガーネットが、男の武器に捕まって引き摺られて来た。
「な、何だ!?あのガーネットを捕まえたのか?ガ、ガーネット、ガーネット、」
正也が、ガーネットを呼ぶ、すると、引き摺られたガーネットが、正也に答える。
「正也、こいつ汚い真似をして私を捕まえたんだ!」
「汚い、真似!?」
「そうだ!正也の姿に化けたんだ!骨格可変型武器だ。姿も変えられるやつなんだ!」
正也が、ガーネットを捕まえた武器の主に向かって言う、
「そう言う事か!ランドルフ、お尋ね者、元戦闘騎兵隊少佐、ユスカ星系、荒山前哨砦を全滅した男か?」
ランドルフ、
「まあ、そう言われているな!ルミナス、その武器の小娘を押さえて置けよ、新型みたいだ!」
「はい、ランドルフ」
正也は、ガーネットに目配せをする。
すると、ガーネットも正也に頷き答えた。
そして、ガーネットの腕が突然電磁ソードに為りしばいていた合金ワイヤーを切断して、ランドルフの武器のルミナスを電磁マシンガンの足で蹴り上げる。
ルミナスは軽く、ガーネットの攻撃をかわしたが、ガーネットを離して自由にして仕舞った。
猛然とルミナスに突進するガーネット、両腕の電磁ソードでランドルフの武器のルミナスに切り付ける。
だが、柔軟に体を反らし、ガーネットの攻撃をことごとくかわして仕舞う、頭にくるガーネット、
「この武器女、こんにゃく見たいにぐにゃくにゃしやがって、田楽にしてやる!」
ガーネットが電磁ソードを最大に伸ばし、激しく突きを繰り出す。
ルミナスは下がりながら体を回して、隙を突きガーネットの脇から肉薄して格闘攻撃をしてきた。
その腕と足でガーネットの首や腕をへし折ろうとする。
だが、ガーネットの体はビクともしない、
「はん、そんなもの、蚊に刺された程も感じない!」
ガーネットは両足を電磁マシンガンに変化させて、ルミナスに連射する。
地面を蹴り宙を舞うルミナス、ガーネットの単純な攻撃を難なくかわし切っていた。
「くそー、ちょこまかと動き回りやがって、」
ここまで来るとガーネットは、やけくそにマシンガンを連射しながら、両腕の電磁ソードでめちゃくちゃに空を切り、背中のニードルダガーを一斉に発射する。
更に目から高エネルギーレーザーを発射、ガーネットは胸を開きハイパー電磁キャノンを撃ち出した。
当たり一面爆風と閃光が走った。
正也とランドルフは、その凄まじい狂乱したガーネットの攻撃に度肝を抜かれていた。
かわしていたルミナスが、一瞬、体制を崩すと、ガーネットの電磁キャノンと電磁マシンガン、高出力レーザーに追い詰められて仕舞った。
そこへランドルフが、正也を離して、ガーネットとルミナスの間に入り、ランドルフはルミナスを両腕で持ち上げ、ルミナスの体を大きく回して、ガーネットの体をルミナスの両足で地面に叩き付ける。
彼らは軽やかに踊るように二人の攻撃が、ガーネットに襲い掛かった。
ルミナスの両足が電磁マシンガンに変化し連射を始める、二人は、ガーネットへ次々と攻撃を仕掛けてくる。
電磁ソードで切り、電磁マシンガンをガーネットの体に浴びせる。
そして、体を回しながら、全方位攻撃をするランドルフとルミナス、ガーネットは正也の前に立ち、腕を盾に変え、ルミナスの攻撃を弾き返す。
だが、直ぐにランドルフとルミナスの姿が、大きな爆風と共に消え去って仕舞った。
「あのヤロー!私たちを煙に巻きやがったな?追跡して粉々にしてやる!」
ガーネットが、ランドルフたちを追おうとするのを正也が止めた。
「よせ!ガーネット、格が違いすぎる。」
振り返るガーネット、正也が言う、
「ガーネット、お前の体を良く見ろ、もう限界だ!再生が追い付かない、ガタガタだ!」
ガーネットが自分の両手と両足を見る。
電磁ソードはスパークしてエネルギーが不安定に為っている。
足の電磁マシンガンもオーバーヒートで煙を上げていた。
「くそー、初めからフルアタックを掛けていれば良かった!」
正也は、そんなガーネットの頭を撫でていた。
不図、顔を上げるガーネット、
「もういいよ、僕は、ガーネットに助けられた。君は凄いな、あいつらをあそこまで追い詰めたんだ。」
正也が、地面を指差す。
ガーネットがそれを見ると、ルミナスの腕が転がっていた。
それは、主を守るためにガーネットの高出力レーザーを受け止めた物だった。
ガーネットは、正也に抱き付いた。
その顔は悔しさを浮かべていた。
戦いで負けた事にガーネットは、悔しさを感じたのではない、ルミナスとランドルフ、あの息の合った戦いを見て悔しさを感じたのだ。
正也も、そんなガーネットの気持ちが分かっていた。
「ガーネット、僕も、あんな風に君を守れたらいいな?」
ガーネットが顔を上げ、正也を見る。
「私は、あいつ見たいに、何が有っても正也を守ってやる。絶対だ!」
武器の少女は、主に抱き付いて泣いていた。
「くそー、あいつは、粉々じゃあ済まさない、溶かしてトイレの便器にしてやる!」
ガーネットの言葉に、正也がのけ反っていた。
日の傾いた荒野に、二つの影が寄り添って歩いていた。
遠くから黒色の武器馬が駆け寄ってくる。
武器とあるじは武器馬に跨り、地平の遠くへと走り去る。
そんな反対方向で、大きな街を目指し、ゆっくりと進む武器馬に乗った正也の後ろで、ガーネットは、再びあるじの背中に頬を当てて、
その温もりを感じている。ガーネットが目をそっと瞑る。
今まで以上に、それは前よりも温かく優しく感じていた。
2017、2、23、個人雑誌グラス編集部、副編集長兼雑用、主力作家の齋藤 務、
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