前回からの続きです。
作者の書いている内容に対し、私には同感の部分と違和感を覚える部分の両方があります。
私も、文化に優劣はないと信じていますし、文化を守ることは大切だと思います。民族も、もちろん平等です。
大学時代、ある英語の先生が、ご自身のアメリカ留学時代を振り返り、「違いがあるから楽しい」とおっしゃっていました。留学先で様々な出自の学生たちと触れ、そう感じたということです。正に、その通りだと思います。私も大連で、色々な民族や出身の人と知り合いました。
ある生物種が絶滅してしまったら、それは取り返しのつかないことです。文化の消滅も、これと同じことではないでしょうか。
また、作者は自分が満洲族だと言えないと書いていますが、私が大連で知り合った満州族の方々は、自ら「私は満洲族」と名乗ることが多々ありました。私が外国人だから言いやすかったのかもしれませんが、満州族であることを誇りに思っている人もいるはずです。
私が違和感を覚えたのは、作者の歴史観、作者の語る満州族の歴史についてです。とは言いましても、今の中国では、作者の語っている歴史観が支配的であり、その様な設定になっているのだと思います。つまり、劣った非漢民族は、自文化を徐々に失い、漢民族に同化するという設定です。いわゆる中華思想や華夷思想とも言えるでしょう。
この様な歴史観は、事実(史実)に反しています。中国の歴史を概観する前に、少し満洲族の文化について述べます。例えばチャイナドレスは、代表的な中国の服飾文化となっていると思いますが、元々は満洲族の服です。現代中国語も、その源流は清の王宮にあります。清は満洲族が建国しました。満州語を母語とする人たちの王宮で話されている中国語は、当然のことながら、満州語の影響を受けているのです。
さらに、清末には、漢民族から「滅満興漢」という思想も生まれます。「滅満」とは、満州族を滅ぼすこと。「興漢」とは漢民族の復興であり、漢民族中心主義とも言えるでしょう。興漢だけを考えても、清に続く中華民国と中華人民共和国は、この漢民族中心主義の上に成り立っています。中華民国(台湾)は、民主国家ですので、あからさまな民族差別は弱くなっていると思いますが、中華人民共和国は、共産党(漢民族の支配層)の独裁と相まって、漢民族中心主義は強化されていると思えます。「滅満」という思想を生んだことのある社会の中で、満洲族が満洲族として生きていられたとは思えません。
次回に続きます。
作者の書いている内容に対し、私には同感の部分と違和感を覚える部分の両方があります。
私も、文化に優劣はないと信じていますし、文化を守ることは大切だと思います。民族も、もちろん平等です。
大学時代、ある英語の先生が、ご自身のアメリカ留学時代を振り返り、「違いがあるから楽しい」とおっしゃっていました。留学先で様々な出自の学生たちと触れ、そう感じたということです。正に、その通りだと思います。私も大連で、色々な民族や出身の人と知り合いました。
ある生物種が絶滅してしまったら、それは取り返しのつかないことです。文化の消滅も、これと同じことではないでしょうか。
また、作者は自分が満洲族だと言えないと書いていますが、私が大連で知り合った満州族の方々は、自ら「私は満洲族」と名乗ることが多々ありました。私が外国人だから言いやすかったのかもしれませんが、満州族であることを誇りに思っている人もいるはずです。
私が違和感を覚えたのは、作者の歴史観、作者の語る満州族の歴史についてです。とは言いましても、今の中国では、作者の語っている歴史観が支配的であり、その様な設定になっているのだと思います。つまり、劣った非漢民族は、自文化を徐々に失い、漢民族に同化するという設定です。いわゆる中華思想や華夷思想とも言えるでしょう。
この様な歴史観は、事実(史実)に反しています。中国の歴史を概観する前に、少し満洲族の文化について述べます。例えばチャイナドレスは、代表的な中国の服飾文化となっていると思いますが、元々は満洲族の服です。現代中国語も、その源流は清の王宮にあります。清は満洲族が建国しました。満州語を母語とする人たちの王宮で話されている中国語は、当然のことながら、満州語の影響を受けているのです。
さらに、清末には、漢民族から「滅満興漢」という思想も生まれます。「滅満」とは、満州族を滅ぼすこと。「興漢」とは漢民族の復興であり、漢民族中心主義とも言えるでしょう。興漢だけを考えても、清に続く中華民国と中華人民共和国は、この漢民族中心主義の上に成り立っています。中華民国(台湾)は、民主国家ですので、あからさまな民族差別は弱くなっていると思いますが、中華人民共和国は、共産党(漢民族の支配層)の独裁と相まって、漢民族中心主義は強化されていると思えます。「滅満」という思想を生んだことのある社会の中で、満洲族が満洲族として生きていられたとは思えません。
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