ひとりよがりのほんのきもち

昔私が勤めていた会社は、東北出身の方が多かった。営業所も東北にたくさんありました。だから、例えば、岩沼、亘理、小名浜などなど、とても馴染みのある地名でしたし、何人もの人の顔が浮かびました。

Sさんもそのうちの一人で、陸前高田が故郷でした。Sさんとは、いろいろと親しくさせて頂いていたのですが、そのSさん曰く、陸前高田には日本一美味い中華丼を出す店がある、ということだったのです。そんなわけで、食いしん坊な私は、昔、中華丼が食べたい一心で、陸前高田に行ったのです。浄土ヶ浜に行った帰りに寄ったのですが、もう営業時間は過ぎていて、当然食事は出来ず、しかもガソリンが乏しくなってしまい、スタンドを探して右往左往、という苦い思い出だけが残っています。

先日、そのSさんに、ほんのきもちをしました。そうしたら、「ごめちゃんよぉ～、気持ちは有難いけど、受け取れないよ。だって家は高台にあるんだもん。引越したから、無事だったんだもん。気を悪くしないでよ。」せっかくだから、故郷のために使って欲しいと伝えましたが、彼は固辞しました。それはまぁ、仕方がありません。私が彼の立場だったとしても、同じことを言うと思います。結局、かえって迷惑をかけてしまいました。ほんの気持ち、空振り。いつも思います。どうしてこんなにまぬけなんだろう。

そうそう。ついでに訊いてみました。あの中華料理屋さんはどうなったの、と。「ああ、みつわね。あの辺はもう何にもないよ。基礎しか残ってない」。

いつの日か、そいつを飲み代にして、また一緒に飲みたいです。


そうそう、このポチ袋は、


こんな感じでつくりました。