ハチの家文学館

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仏像ブーム

2009年06月13日 03時25分44秒 | 慈しみと悲しみと

東京上野平成館の「阿修羅展」が終わった。総入場者数は94万を超え、平成館では歴代1位の人数となったようである。この間、阿修羅像をはじめ、仏像関連の書籍や雑誌が数多く出版され、テレビなどでも放映されて「阿修羅ブーム」が沸き起こったようだ。世は正に仏像ブームとも言われている。

出版物の仏像写真は、とても綺麗でシャープだし、光の具合もいい。さすがプロの写真家が撮っただけのことはある。仏像写真家を目指す私だが、このようにはとても撮れない。プロとアマの違いでもある。

私だって国宝級の仏像撮影の許可を得られ、いいカメラ、いい機材、いいスタッフ、いいレイアウトに恵まれれば、これらの出版物に近い写真は撮れそうであるが、これらはプロの世界の話で、素人の私には無理な話と思っておくとしよう。

私が撮らせていただいている仏像写真は、地方の古仏が中心で、財力のないお寺が多く、修理もままならないことが多い。京都奈良などの寺社と比べて、国家の補助と集金力の違いが、地方の古寺を回っているとつくづく感じさせられる。
とにかく痛々しい仏さんが多いのである。その痛々しい仏さまを全国行脚して撮らせていただいている訳であるが、地方の人たちの心に深く根ざした仏さまの心が、初めて会った私にも伝わってくることが多い。私はいつも真剣に仏さまと向かい合ってファインダーを覗いている。

数百年も前の仏師が、一刀三拝して彫ったと言われる仏像である。私は、仏像撮影時にいつも行っていることがある。それは概ね下記のとおりであるが、それは私の信条であり、信心でもある。
仏教の奥は深い。仏像があるからこそ人は祈り、語りかけ、救いを求め救われる。私の仏像写真のテーマ「み仏の慈しみと悲しみと」は、此岸この世の衆生の心を、み仏たちがすべて汲み取って、衆生と一緒に苦しみ悲しんでくれて、励ましてくれているような、み仏の気持を表現できる仏像写真を目指している。

 1.「全国寺社・仏像ガイド」(美術出版社発行)を見て、事前に撮影許可を得る。

    この本には仏像写真は一切載っていない。簡単なお寺の沿革と仏像名、
    製作時代などが書かれているだけで、当てずっぽうで電話している。
    しかしそれが良かった。ご本人?と会えたときの感動はひとしおである。
    一昨年NHKテレビ「にっぽん心の仏像100選」に紹介していただいた私の
    心の仏像、4㍍60もある福岡県前原市大悲王院の千手観音は、正に想像
    を絶する仏像だった。あの感動は忘れもしない。鳥肌が立つ想いが、あの
    NHKに採り上げていただいた理由だと思う。

 2. 撮影前後いずれかに、本堂で般若心経をお唱えする。

    ご本尊の前で包括的な撮影許可をいただくような心境で読経している。
    般若心経を毎日唱えて13年になるが、宗旨宗派に囚われないのでどこで
    も安心して唱えられる。この時のご住職との語らいも楽しいし為になる。

 3. 一体一体の仏さまに「撮らせていただきます」の気持を込めて、ご真言を唱
   えています。

     撮影した仏様の写真は、物の下におくようなことはせず、きれいに大事
     に保管しています。我が家の「ハチの家写真館」には、常時50点ほど
     展示していますが、その半数が仏様の写真です。

  ご真言 
  
    大日如来  (胎蔵界)オンアビラウンケン (金剛界)オンバザラダトバン
    不動明王   ナウマク サマンダバザラダン センダマカロシャダ
          ソワタヤ ウン タラタ カン マン
    阿弥陀如来  オンアミリタテイゼイカラウン
    薬師如来   オンコロコロセンダリマトウギソワカ
     地蔵菩薩   オン カ カ カ ビサンマエイ ソワカ
    聖観音菩薩  オン アロリキャ ソワカ
   千手観音菩薩 オン バザラタラマ キリク  などなど

 4. 「あるがままに」を心がけています。

    仏様の位置は勿論、照明もそのままに、ストロボなどは仏さまにも失礼に
    あたるし、仏像を傷める気がして一切使用しません。狭く暗い場所でも、
    自分が最大限動ける範囲で撮影しています。脚立がある訳でもなく、三脚
    の使用もままならないことも屡で、手持ち撮影の時もあります。
    このためアングルは決まったようなもので、ズームレンズでカバーできる
    程度です。
    また、シャッター速度が数秒などということもよくあり、ピント合わせ
    を手動で行うことも多いので、60代の眼ではシャープさに欠けることも
    しょっちゅうです。そして、自然光と電球と蛍光灯と蝋燭が入り混じっ
    た建物内では、露出や色の再現にも苦労します。
 
    それでも、あるがままに、み仏の心をカメラに収めて、多くの人にみて
    いただきたいと願っています。

    



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