朝日記140609 モルデカイ・モーゼ著「日本人にあやまりたい」のこと
おはようございます。
徒然こと
*モルデカイ・モーゼ著(久保田政男訳)「日本人にあやまりたい」~あるユダヤ人の懺悔 日新報道 2000年 新版というのがあります。 この本はアマゾンで4千円ほどですが、ある版は この十倍の値段がついています。
先日の研究会のときに参考資料までに、紹介された本です。*この本の初版は1969年です。(ちなみにこの年は 私がアメリカに留学します。日本は東大紛争。ヴェトナム戦争の反戦でアメリカの大学での運動が活発化。重厚長大の経済でGNP万歳のころでもありました)
唐突ですが イザヤ・ベンダサンの「日本人とユダヤ人」は1970でした。
*上記のモーゼの本の目次を上げてみますと以下です;
1.戦前の日本に体現されていたユダヤの理想
2.二元論的思考法 典型的なユダヤ的思考パターン
3.日本人の知らない東京裁判の本質
4.戦後病理の背景
5.マルクス主義はユダヤ民族解放の虚偽仮説
6.極左的戦後改革を強行したユダヤの秘密
*内容の特徴
・資本主義と共産主義がユダヤ人の陰謀であるという説明をしています。
・ルッソー、レーニン、ルーズベルトそしてニューディール派がユダヤ人であるという前提としている。
・日本の天皇制はユダヤ世界制覇の筋では破壊すべきとされて 戦略が練られていた。
・日本の天皇制のもつ思想がユダヤ人の理想であることを確認した。
*内容に対する私見1
・全体の主張として ユダヤ世界全体かユダヤ人による世界制覇が前提とした本文論旨に貫かれているようです。
読者の日本人にとっては、すこしプライドをくすぐられるものでありましたが、とっさにある種の違和感を感じました。
・橋爪大三郎さんの旧約をよむという公開講座をこの4年間でてこの夏で読み終わるところであるが、このながれのなかでバビロン捕囚など 民族滅亡に瀕する受難をなんども経験するが この筋の根拠をあたえる根拠が見いだされない。
旧約の経典外(apocrypha)については多々あり、これに目をとおしていないが 彼らのモラルの規範となるのは正規の旧約(タナハ)としてとらえてよいとおもう。
・「ユダヤ議定書」というのがあってこれを根拠にヒトラーはユダヤ世界制覇ありとして 民族絶滅(cleanse)の口実としたのであるが この書は偽であったことが判明している。(ノーマン・コーン「ユダヤ人世界征服陰謀の神話」)
・著者モルデカイ氏が ユダヤ人であればたぶんこのような筋で 論を展開することはないという直観がはしります。
・因みに イザヤベンダサン 「日本人とユダヤ人」1970(「ユダヤ人」と略す)で
その著者と目されて、本人も否定しなかったのは山本七平( 1921~1991)です。
この本「ユダヤ人」は 当時の私にとっても世界のなかでの日本の文化を知るうえで つよい知的な刺激をうけたことを記憶しています。
・エール大学の博士課程で仏教天台宗の研究のために当時日本に滞在していた友人ポール・グローナー氏(いまはたぶん高名な教授になっているとおもいます)はイザヤベンダサンはユダヤ人かの私からの問いに対して 即座に日本人とおもうと答えました。なぜなら 彼があつかうへブル系の文献はきわめて一般的なものであるにかかわらず、日本系の文献はきわめて特異であるからと指摘していました。 彼の指摘が正しかったことはその後の経過で証明しています。
*仮説 モルドカイ・モーゼというペンネームのもうひとりの山本七平がいる。
・候補としては 以下の三人としてみました; 山本七平、訳者の久保田政男、そのほか(モーゼ氏)
・それで この著と「ユダヤ人」の出版時機を重ねてみるとおなじころです。ただ文体からくる個性や肝心の論の運びが異なり別人のようにおもわれました。(これも直感的で根拠はありません。)
・訳者久保田政男氏に焦点をうつします。奥付からは 1932(
昭和32年生まれ、大阪)で 山本氏は(1921生れ、東京)で約一回り後の世代です。 共通しているのはともにキリスト教系の高等教育機関である青山学院に学んでいるところです。英字新聞の編集長などを経歴としていますが、この辺がトレースできうのかどうなるのか。一般論としてここでの学歴経歴詐称はどういう場合であるか、わかりません。
・それ以外の著者としては やはり ユダヤ人のラビ、モルデカイ氏に焦点をあてます。
・奥付では、ウクライナ 1907生れ 父親が哲学者でロシア革命に関与したこと、ドイツに亡命してワイマール憲法に影響を与えたこと 本人もベルリン大学で哲学や法学で学位を獲たこと。高名な法学者ゲオルグ・イエリネックを通じて、美濃部達吉に「天皇機関説」を伝授したこと。アメリカに亡命してルーズベルトのブレーンになって 最後は日本の占領政策に関係したこととなっています。
・ところで、この書が訳書であるのに 原著の版権表示もありません。
・これほどの人物ですから、英語のネットで MordekaiとMoseを中心に 当たります。
・Jewish Encyclopediaというのに確かにMordekaiというドイツ系ユダヤ人のアメリカ有数家系としてありました。とくに Mordekai Moseもでてきますが このひとは1707年ドイツ生まれのアメリカ人です。
・もちろん 先祖のなまえは継承しますから、ここにないからといって実在しないとはいえません。
*それやこれやで Wikipediaで項目「覆面作家」をひきますと、ここでは確定的表現でMordekai Moseは 久保田政男の「覆面作家」名であるとしていました。つまり 上記私の仮説である 別の山本七平がいるという結論をとります。
*内容に対する私見2
さて、出版のモラルという点に焦点を当てたいとおもいました。慣用的に「ペンネーム」や「覆面作家」(「覆面」と略します)も個人を表明し名乗ろうとする、 そういう自由と権利は保証されるべきと考えます。問題は その意味するところが 他者の名誉を傷つけることになるかどうかで、ここに当然の品位と矜持が必要になります。
・ここでの 一番の問題は この著が ユダヤ人の人たちの目に触れるチャンスを配慮した前提に立っているかどうか。
・「覆面」効果によって 日本人にも、他民族に対する誤った認識をあたえる危険性があります。
上であげた偽「ユダヤ議定書」とおなじ効果になります。
*そういうことを考えるうえで 非常に勉強になった本でありました。
・章立ての構成が 筋通っているので 仮説として読む楽しみはありますが、ただしい認識として簡単にうけいれてしまう誘惑だけは 互いに気を付けたいと思いました。
徒然ことおわり
1 ・旧約聖書にユダヤ民族滅亡に瀕する記述が見いだされない
→ とのことですが、おかしいですね、ちゃんと旧約聖書にはユダヤ人滅亡に瀕する受難が書かれていますよ。
例えば、エステル記には、ペルシャの王アハシュエロスの勅令により,王の領土の管轄地域内の全ユダヤ人を滅ぼす日と定められた事など書かれています。
2. これほどの人物ですから、英語のネットで MordekaiとMoseを中心に 当たります。
・Jewish Encyclopediaというのに確かにMordekaiというドイツ系ユダヤ人のアメリカ有数家系としてありました。とくに Mordekai Moseもでてきますが このひとは1707年ドイツ生まれのアメリカ人です。
・もちろん 先祖のなまえは継承しますから、ここにないからといって実在しないとはいえません。
*それやこれやで Wikipediaで項目「覆面作家」をひきますと、ここでは確定的表現でMordekai Moseは 久保田政男の「覆面作家」名であるとしていました。つまり 上記私の仮説である 別の山本七平がいるという結論をとります。
→ おかしいですね。フランクリン・ルーズベルトのヒストリー本にちゃんと出てきます。「The Strange Death Of Franklin D. Roosevelt: History Of The Roosevelt-Delano Dynasty, America's Royal Family」
Emanuel M. Josephson
まさか、嘘だらけのwikiを情報源として載せちゃいます??? しかも、それこそ何の出典すら書かれてない情報を.... 色々言ってる事が矛盾してて、びっくりです。
あなたの記事は、この本に対して疑念を持たせる為に、ワザと印象操作してるようにもみえます。
小生の上の文で、「この筋の根拠」は、小生の表現不足であったようですね。 ユダヤ人の絶滅の試みは、ご指摘のようにエステル書にあることは仰るとおり存じ上げていました。
世界制覇をねらうこころみについては、旧約の時代までをふくめて、その証拠になるものを 存知あげません。教えてください。
ソロモンが遠征隊をインドネシアあたりまで送っていたことは何かでみましたが、出典をわすれました。
Emanuel M.Josephsonの本は読んでいないのでなんとも言えません。信憑できる記述であるのか興味があります。教えてください。
元に戻って、小生が、「日本人にあやまりたい」の本のコピーをみて、一番気になったのは、著者の経歴の記述が雑駁であったことです。仕方ないですね、小生はひとりの人間として、ネット上でfirst surveyをした程度です。 ここでは、書いたとおり、著者なるひとは不明でした。
1938年うまれの小生が育った日本では、ユダヤ人に対する認識は、シェークスピアのユダヤの商人というイメージと、ユダヤ人という民族が実質世界を、制覇する野望があるといったイメージが圧倒的でした。それにいまもイメージが支配しています。
その意味で歴史的にも丁寧に見ていくことは大切です。
貴方があげられた著での信憑性に興味あります。
また、日本で書かれたものもユダヤ系のひとの目に触れること、かれらと公私開かれた議論ができる場をつくることも大切と思っています。
結論の為にする議論であるかどうか、自分の仮説動機から出発するのは当然です。 しかし、事実が誤りであるかどうかに対しては謙虚に学ぶ意志を持ちたいと思います。 コメントありがとうございました。、
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そうしたら 偶然 以下のこの本に否定的なページに遭遇sましたが、ここに小生のこの朝日記が紹介されていたのでおどろきました;
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/494.html