ヤングロッジの前で待っていると、渡部篤郎似の色黒の石川さんが作業着のまま迎えに来てくれた。
真っ暗闇の中から、車のライトがこちらに向かってくる。
紺のインプレッサ
「お疲れ様です。乗って」
「あ、ありがとうございます」
残業している自分の更に残業していたのだ。
少しだけ走ると、遊園地へ向かうルートをまっすぐ行って、右折。
知らない森の中を爆走している。
少し経つと、プリンスランドの裏口から公道に出る。
「どちらへ・・・」
「ああ、コンビニに行って買い出しね。」
と、
「あ、あとここから一番近いコンビニ教えてあげるから、道覚えとくといいよ」
「は、はい」
そのまま、くねくねした下り坂を爆走していく。
15-20分経つと、T字路の初めての信号にあたった。
「大前」と書いてある。
右折して、直ぐに
「アローズ」なる飲み屋があって、コンビニ?(見たことないコンビニ)が併設されていた。
そこで、ワインを主に適当な食べ物とお菓子などとタバコを買って、引き返す。
「あの、お金は」
「ああ、いいよ。歓迎会だから」
素直に嬉しかった。
「ありがとうございます」
あまり金に興味なさそうに、お金を払う。
そんな仕草がカッコいいと思った。
そして、プリンスランドに帰るのだが、何回も曲がっていなくて簡単なはずなのに、道が暗くて解らない・・・
そして、真っ暗な坂を上っていくと右側に、一個だけ標識があった。
「これね。これを左折ね」
と目印を教えてくれた。
*
このように、車が無いと何もできないところなので、社員になったら、車の持ち込みが出来るので、免許があれば100%車を持つ。
ちなみにアルバイトは停めるところが無いので、車の持ち込みは禁止
今後の生活の役に立つことは、全てこの石川さんが教えてくれた。
だから、僕も新入社員の後輩が入ったら、真っ先に買い物に連れて行った。
後から聞くと、みんな僕と同じように山奥で不安だったそうだ。
プリンスランドに帰ると、遊園地の脇を入っていった。
真っ暗な駐車場の奥に、ボロボロの小屋?があった。
そこはまぁまぁでかい別荘だった。
ただ、床が抜けていたり、半分朽ち果てていた。
ここに石川さんは住んでいるという。
昭和の生き残りの建物だ・・・・
聞くところによると、そこは昔スキー場で、そのわきに当時誰かが立てた別荘だそうだ。
中はそこそこ広いが、カビの匂いが半端ない
そこで待っていたのが
男2人 女2人 4人が帰りを待っていた。
その中に、見たことのある顔があった。
ユミちゃんだ。
あの石川さんがデートをしたユミちゃんは、自分と同じ時期に研修生として入った「鈴木ユミ」だった。
彼女とは、この後、色々とあって大変だった。
それはまた次回