「クララとお日さま」と「モモ」
を未読の方はご注意ください。
イシグロさんが衝撃を受けたという
「『能力主義』meritocracy)」が必ずしも
良い結果を生まない」ということは、
特に驚くことではないように思われる。
それは、AI や遺伝子工学が無い頃から認識されていた。
たとえば、ミヒャエル・エンデの名作『モモ』は、
「能力主義」そのものではないが、
「時間の節約」「仕事の効率」という観点から
同じ方向の認識を、同じようにファンタジーという
フィクションの形で伝えようとしている。
その源流は、マルクスの『資本論』
に遡れるだろう。
そういえば、『資本論』は
技術が資本主義を増強していることに伴ない
またしても再評価されていて、
ピケティの『21世紀の資本』や
斎藤 幸平さんの『人新世の「資本論」』
などの本が話題になっている
(残念ながらいずれも未読だが・・・)。
クララは、誰とでも誠実に接して、
一つの家族(+リック)の危機を救ったが、
モモはより多くの人を救っている。
モモや救われた人々がその後どうなったのか
については何も描かれていない。
ただ、『モモ』のラストに置かれた
「作者のみじかいあとがき」の中には、
「この物語はわたしがひとから聞いたのを、
そのまま記憶どおりに書いたものだからです。」
という作者の告白がなされた後で、
その不思議な人(作中のマイスター・ホラを思わせる)
の残した言葉として、
「『わたしはいまの話を、』とそのひとは言いました。
「過去におこったことのように話しましたね。でも
それを将来おこることとしてお話してもよかったんですよ。
わたしにとっては、どちらでもそう大きなちがいはありません。」
と書かれている。
残念ながら、エンデは 1995年に亡くなっているのだが、
イシグロさんとエンデが対話をしたら
どんな話が聴けたのだろうか?
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