ロバート・フェルドマンさんが
日本社会の「生産性向上」について書いている。
生活水準=生産性x労働参加率
少子高齢化で労働参加率は下がるのだから、
社会の生産性を上げるしかない、
ということだ。
そうなんだろうけど、上の式は
ちょっと怪しい部分があると思う。
労働参加率はいいとしても、
生活水準と生産性は
どうやって測っているのか?
経験式というよりは、
ただの定義なんじゃないの?
という気もする。
それはさておき、
社会の生産性向上のためには
何をすればよいのだろうか?
ということをちょっと考えてみた。
「社会的インフラ整備」および
「技術開発への投資」が普通の答えであり、
実際、どちらについても投資をしている。
しかし、それらは確かに必要だが、
それだけではダメなのではないか?
いくら技術開発でいろいろなシーズが出ても、
インフラが整備されても、
それらを生かした商品やサービスを創出するような
企業体が生まれてこないと、社会的には効果が無い。
出口が変わらなくては、
意味がないのだ。
これは、いわゆる大企業病とも似ている。
大企業では、研究所でよいシーズが出ていても、
会社全体にITが導入されても、
従来の商売での成功体験にこだわってしまい、
新しいシーズやインフラを
活かせずに終わることがよくあるという。
よく言われる例は、ゼロックスは
PCにつながる技術を早期に研究していたのだが、
PCの製品化という事業にはまったくつながらなかった。
その代わりに、Apple が そのアイデアを使って
Mac を作った、というもの。
意思決定者は、過去において成功した
既得権益者の代表であることが多いので、
それを裏切って新しいことをすることは難しい。
変化には一時的にはコストやリスクが伴うので、
それを乗り越えてゆくという意思決定をするには、
その先のビジョンが無いと難しい。
バラマキは、生産性の低い企業体を
温存するのでよくないのだが、
そうなってしまいがちな理由はそこにある。
誰しも、他の人がやって
儲かるとわかっていることをやりたがる。
誰しも、いまのやり方を
変えるのには抵抗がある。
技術シーズだけでなく、人材についても同様で、
研究開発投資をして、博士号の取得を促進しても、
その先、そうした人材を活かせる場が無くては、
意味がない。
というわけで、社会の生産性を向上させるには、
インフラ整備や技術開発だけでなく、
出口の部分を変える必要があるが、
そのためには、社会全体のマインドを
変える必要があると思う。
それではどうするか??
ベンチャー企業に対する税制優遇や
政府系ファンドなどで支援する?
技術開発をする研究者は、
もともと新奇性に関する競争にさらされているし、
いろいろなシーズを出すだけなら、
それほどの責任も伴わないから、
新しいアイデアの生産量は、ある程度は
投資量で制御できる部分があると思う。
しかし、その先の起業や新事業となると、
マインドの問題が大きいし、
失敗したときの責任も大きいから、
単純にお金を投入してもなかなか育ちにくい。
うまく話をつくって
お金だけもらい続けられる人が
勝ち残っても意味はない。
資金援助を得るために、
粉飾決算などするようになっては、
さらに意味がない。
結局、変化の方向を明示して、
健全な競争環境をつくり、
組織全体に継続的にプレッシャーを
かけ続けることしかないのかもしれない。
身体や会社、さらには社会、
のような複雑な組織の場合、
どこか一部を強化すれば全体が強くなる、
というようなことはほとんどないと考えられる。
そうではなくて、厳しい環境にしばらく置いて、
全体にプレッシャーをかけ続けると、
それに耐えられる方向に、組織全体が
微小な試行錯誤を繰り返しながら変わってゆく、
のではないかと思う。
リーダーシップ、意志の力、克己心、
などが重要になるのは、それらが、
こうした局面で、プレッシャーを
かけ続けられるか否かに直結するからだろう。
プレッシャーをかけられると、
とりあえずは痛みが生じる。
しかし、そこで諦めてしまうと、
基本的な組織変化は起こらない。
変化が起こるまでの時間や
変化の大きさは予測が難しい。
しかし、組織の潜在的な力を信じて、
進むべき方向を明示して、
プレッシャーをかけ続ける。
もちろん、かけ過ぎると
組織が崩壊して死んでしまう。
まとめ:
社会の生産性を上げる、などのように、
複雑な組織の基本構造を変えるためには、
1)非効率化しているものを一度崩壊させて、新たに作り直す、
2)変わるべき方向を明示して、健全な競争環境を作り、
変化へのプレッシャーをかけ続ける、
のいずれしかないように思われる。
自分自身や国家の場合、
一度崩壊させるというわけにも行かないので、
(戦争や革命を除けば)
2)の方法しか無さそうに思われる。
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