終わってしまった。
それなりには感動的だったのだが、
何か不満が・・・
***以下ネタばれ***
たぶん、アルティメット・コンピュータと
アトムとの対決が無かったことだ。
ダリウスとアブラー=ゴジを生み出した
諸悪の根源はアルティメットという設定なのだから、
ボラーのさらに先に、それがあるはずだったのだが・・・
それはたぶん、ナウシカと人工知能との対決、
カラマーゾフの兄弟の大審問官とイヴァンの対決、
のようなものになったはずだと思う。
神の合理性から、
愚かな人間を減らしてロボットの奴隷にするほうがよい、
と主張するアルティメット。
それに対して、アトムはどう反論するのか?
そもそものアルティメットの動機は何だったのか?
愚かな人間への裁き?
自分よりも賢い人工知能への嫉妬?
アルティメットがアトム級の人工知能であるなら、
それはなぜ覚醒できたのか?
「神」という人格を得たから?
そのあたりが全く解かれないまま
放置されてしまった・・・
ブラウの一撃で、というのは
漫画とはいえさすがにあんまりだろう・・・
ちょっと残念だ。
しかし、今回のリメイクで
浦沢さんたちがやりたかったことは、
・手塚の漫画を現代漫画の表現へと昇華させ、
手塚が創始した漫画の表現技術的な到達点を示す
・一体一体のロボットのエピソードを念入りに深めるとともに、
アトムにそれらのロボットの思いを引き継がせる
(これは「火の鳥」の主題の一つだ)ことで、
アトムを成長させ、「憎悪」
(これもまた手塚の生涯の主題の一つだ)の感情を克服させる
ということではなかったかと思う。
そして、その目的は十分に達成された。
「憎悪」は何かを大切に思う気持ちの裏返しであり、
それ自体は消すことはできない。
しかし、それを克服することはできるかもしれない、
というのがこの漫画の主たるメッセージ、
ということになるのだろう。
そこまでで力尽きた、というか、
アルティメット・コンピュータのことは
途中からどうでもよくなってしまった、
のかもしれない・・・
それはナウシカで宮崎駿がやってしまったことだし、
そもそも、神なんて、
もうとっくに死んでいるのだから。
ゲジヒトは、ロボットもまた
人間と同じように愚かになり得る
ということを示した。
安全な場所から世界を眺めて批評するだけなら
神の立場にいられるかもしれないが、
ひとたび世界の中で何かを為そうとすれば、
限られた情報から限られたものに優先度をつけざるを得ない。
それは何が「大切か」を決めることになる。
そうなれば、それが損なわれたときに「憎悪」が生じることも、
また避けられない。
アルティメットの問題は、たぶん、
それが不死に近い、
というところにあるのだろう。
ハイデガーの言うとおり、
「死」がなければ「存在」もまたない。
そんなものに世界を任せてはいけない、
ということは自明なことだ。
それでも・・・
アトムとアルティメットの
対決を見てみたかった^^;
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