日々の寝言~Daily Nonsense~

不信のコスト

竹原和彦さんの「アトピービジネス」(文春文庫)を読んだ。
アトピー性皮膚炎をめぐる騒動に対して、
皮膚科医の観点から冷静に記述された良い本だと思う。

これはまた不信の増幅現象や不信のコストについての
わかりやすい事例にもなっていると思う。

医療不信、建築不信、教育不信、政治不信、・・・と、
「不信」が跋扈する世の中だが、そこに見られるのは、
失敗→不信→それが足を引っ張っての失敗や過去の失敗の再発見→不信・・・
という不信の悪循環だ。

そうして膨らんだ不信をもとにもどすのは
とても難しい。うまくいっても数世代はかかる。

そして、不信が蔓延していることによる
余計なコストは莫大なものがある。

考えてみれば、世の中、信じているから
生きられている部分はすごく多い。
道路にしたって、目の前の道路が陥没するかも、
といちいち検証していては、移動もままならない。
すごいコストがかかることになる。

もちろん、盲目的に信じるのは、
カルトやファッショになってしまうから駄目なのだが、
信じることは、コストという観点からも、
生きるためにとても重要なことだ。

近年のように不信が跋扈している一つの要因は、
情報の流通がものすごく高速化したこと、だろう。
インターネットなどで、誰もが簡単に情報を受け取り、発信できる。
たった一つの特殊例が全世界に報知される。
これが、あっという間に不信を増幅することも多い。

情報化社会、情報爆発社会とは、ひとりひとりが、
きちんと個々の情報の価値を吟味することが必要な社会でもある。
決して、パソコンが使えること(これも必要だが)
が重要なのではない。

多くの人の意見を聞いて、
真実のありかを出来る限り探る。
できるだけ偏り無く情報を摂取する。
こういう努力が、日常的に必要な社会。

信じているだけで救われるということは、
もはやほとんどありえない。
しかし、疑うだけでは生きてゆけない。
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