永井荷風「つゆのあとさき」

青空文庫で里見 の「多情仏心」
を探したら、無かった。

なんと、長生きだったので
まだ著作権が切れていないのだ。

しかたがないので、似ているかもしれない？？
永井荷風の「つゆのあとさき」を読んだ。

銀座のカフェーの女給「君江」
を主人公とした風俗小説。

荷風52歳のときの作品で、
谷崎潤一郎が絶賛し、
晩年の荷風復活のきっかけとなり、
やがて「墨東綺譚」へとつながってゆく佳品。

全く執着なく、刹那的に男とつきあう君江に対比して、
その周囲の男たちの情けなさや執念深さが、
ちょっとコミカルかつシリアスに描かれる。

なんということはない話ではあるのだが、
震災後の東京の人々の心のすさみ方まで
見えてくるような感じがするのは、
さすがの筆の冴えだ。

文章も読みやすく、一気に読めた。