日々の寝言~Daily Nonsense~

カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」(2)

前回は図書館で借りて読んだので、
文庫本を買って再読した。

前回読んだときは、
奇怪な設定を追うのに夢中で、
細部をほとんど読んでいなかったと思う。

それにしても、
派手な事件は何も起こらないのに、
心が動かされる。

語り手の気持ちの動きの細部に、
そういえばこういうことがあったなぁ
という思いが湧いてくる。

そしてもちろん、すべての事柄が、
暗喩に富んでいることもある。

限られた時間しか生きられない、という点では、
この小説の主人公も、わたしたちも
なんら変わることはないのだ。

むしろ、明確な「使命」を持っているという点では、
彼らのほうが充実しているとも言える。

「真に愛し合っている二人は提供を猶予される」
というところから進めば、
「愛」についてのもっと踏み込んだ話に
することもできたと思うが、
そうしなかったのはなぜか、が興味深い。

とても静かに心に染みる小説。
また、気が向いたら読むことがありそうだ。
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