昨今では、国内外のテレビ局が数年に一本のぺースで恐竜や古生物関連の特番を作っている。今年度(2019年度)においてもNHKが威信を賭けたスペシャル番組『恐竜超世界』(全2回)を放送し、タイアップ企画である恐竜博2019(国立科学博物館の主催)との相乗効果によって、短期的にせよ恐竜ブームが巻き起こった。
これは前々から予告されていた日本(ひいては世界的にも)最高レベルの完全度を誇る”ムカワリュウ”、現カムイサウルスの正式記載も要因の1つだが、やはり大衆に訴えかける上では、ド迫力の映像と分かりやすく面白みのある恐竜特番の存在は無視できない。これらの特番についてはネット上において、いわゆる“古生物クラスタ”(筆者もその端くれである)による活発な批評が日夜を問わず展開されている。
「ティラノサウルスが親子で狩りをしたのは云々…」や「全身モフモフの羽毛は不合理でしょう。だって…」
とマニアックな議論が行われるのは非常に面白く、また活発な意見交換の切っ掛けにもなっている側面があるのは当然として、一方では、
「…マニアック過ぎて付いていけない(汗)」
と新米クラスタが嘆く声も少なからず聞こえている。さらに一部の心無いクラスタによる、
「TVを鵜呑みにするな!」
といった『科学的な正しさ』を免罪符にした厳しい意見によって、傷ついてしまう恐竜愛好家(この場合では学問としての恐竜ではなく、恐竜という複合的なジャンルを好む者)がいるのも少なからぬ事実なのだ。
こうした『新入り/ニワカ叩き』は界隈の先細り化へと繋がり、また界隈の民度を下げてしまうため、本来は忌むべき風習である。
だが同時に、『目に付きやすいから』という短絡的な理由で、TVの情報を盲目的に信用するのも決して良くはない。これらのメディアリテラシーは恐竜や古生物に限らず、あらゆる分野においても同じことが言える。要は
『情報は飲んでも、飲まれるな。』
ということだ。
…社会科の長ったらしい講義はここまでにして、そろそろ本題に戻ろう。
ここまで申し上げてから改めて述べるのもアレな話だが、私は根っからの古生物クラスタだ。それも生後3歳からの筋金入り。これまでは(そして間違いなくこれからも)多数の方々に支えられながら、ひたすらに古生物学という大海へ前進を続けていたが、そろそろ支えられる側でだけはなく、支える側にもならねばなるまい。
そこで新たに始めた企画が見出しにも掲げた『今見直す、恐竜ドキュメンタリー』である。数多の制作スタッフの血と汗と涙の結晶たる大型特番という名の御馳走を、たかだか一介の高校生が情け容赦なく一口大に切り分け、論文や書籍による検証という名の毒味や味付けを行うことで、あたかも私が新作料理を提供しているように思わせる…。こんな極悪非道な真似をする理由はただ一つ。それは『初学者への吐き戻し』である。そのままでは危険な要素を含むTV番組を私が持てる知識を遺憾なく発揮して選別し、面白みを残したまま学問としての安全性を高めて初学者へと送り届ける。
程度の差はあれ歴代の恐竜番組は、新生クラスタの育成を促してきた。私も2006年のNHK特番『恐竜vsほ乳類 1億5千万年の戦い』やイギリスITVの科学SF『プレヒストリックパーク』、そして同社の恐竜SF『プライミーバル』などによって“古生物沼"に嵌り込んだクチなのだ。これも何かの縁。利用するだけ骨の髄まで利用してやろうではないか。それに隅々まで楽しんだほうが、制作スタッフも浮かばれてくれるはずである(…きっと。まぁおそらく)
ということで今後は本ブログにおいて筆者なりの活動を展開していく事とするが、その上でも重要な注意点(筆者のスタンスや主張)がいくつか存在するため、それを書き記して結びとし、後は煮るなり焼くなり好きにしてくれ!!
〜其の壱〜
『Wikipediaと仲良く』
筆者は趣味と勉強を兼ねてWikipediaへの加筆(英語版の翻訳や内容の追加)をしている。当然Wikipediaの加筆をする中で調べたことはブログ記事にするし、その逆もまた然り。言ってしまえば内容の重複が起こり得るのだ。「それなら最初っからWikipediaに専念しろ!」と言われそうだが、残念なことにWikipediaには非常に限定的な情報(書籍or査読付きの論文)しか載せることができない(往々にしてギリギリのラインを攻めがちな筆者だが)。研究者へのインタビューはもとより筆者の推測など論外である。まぁ言ってしまえば内容の自由度が格段に異なるので、非常は本ブログを立ち上げている。ということでWikipediaとは今後とも仲良くしていきたい。
〜其の弐〜
『語彙力たったの5』
2020年4月現在におけるの筆者の年齢は18歳になったばかり。もちろん高校生である。あいにく偏差値65を超えるような明晰な頭脳を持ち合わせていないため、筆者が文献を活用しようとすれば必ず誤訳なり解釈違いが発生するだろう。もちろん極力ミスは減らすつもりだが、それでも限界はある。よって賢明なる読者諸君には、このブログを「古生物が好きで好きでたまらない一般学生が趣味で書き上げたもの」だということを再確認しておきたい。間違っても本ブログを鵜呑みにはしないでほしいし、万が一されても責任は取れない(取りようがない)。
〜其の参〜
『考えろ、答えはない』
自力で検証なり計算ができる他の学問と異なり、古生物学ではごく限られた論文や書籍を元にしてブログを書くしかない。ある種の生物を取り上げるのにマトモな論文が1つか2つなんて事はザラだろう。さらに“古生物”学とだけあって生体観察はタイムマシンでも持ってこないと不可能であるため、不足した情報は関連事項や各々の推測に頼らざるをえないのだ。しかしこれは人によっては「お前の勝手な推測なんて知ーらね」と考える方も大勢いるだろう。それは古生物“学”としては正しいし、本来ならば筆者もそうすべきだろう。古生物関係の有名なブログ(「GET AWAY TRIKE」、「肉食の系譜」、「Let's Study With Dinosaurs!」)では、基本的に分類や研究史に終始し、不確定要素の強い生態などの内容は薄味となっている(例外的なのは「古世界の住人」だが、これは上記3つとテイストからして異なる)。
だ が し か し
…それでは筆者がつまらない。そもそも古生物学は過去を探求する学問だ。突き詰めていけば事の真偽を確かめるのなど不可能に近く、だから多少なりとも推測の余地が生まれる。そこ悪用活用しようというのが本ブログなのだ。暴論であることは百も承知。しかし推測するにしても根拠では心細くて仕方ない。そこで筆者は、自分なりの推測にも根拠は必ず提示していくつもりだ。――「△△という嫌気があるため、○○にもそれが当て嵌まるだろう」この場合では○○以降が推測となる。―― その際に出した根拠については読者それぞれで反芻してもらいたい(根拠は文字通りピンキリなので、人によっては信用に値しないものもあるだろう)。
改めて繰り返すようだが、絶対に筆者の主張を丸呑みしないでほしい。きちんと中身を見分け、毒味をしてから、お菓子のような軽さで楽しんでいただけたら幸いの極みである。
〜其の五〜
『どうせなら楽しめ』
説明不要