おとなのしるしに
懐中電灯をつけてもらった
そのとき 僕は10歳で
でも 何時におとなになったらいいのか
よくわからなかった
―ブルーノ・ムナーリ
今日はブルーノ・ムナーリというイタリア人の、
ムナーリの言葉/平凡社/ブルーノ・ムナーリ:著/安部雅世:訳/2009
という詩集を紹介しますネ
1907年にミラノに生まれたムナーリは、美術家であり、
絵本作家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、
指導者、慈善活動家、・・・沢山の顔を持っていて、
ムナーリ自身が芸術そのものとも思えるほど、
とても自由な発想を持っていたお方です。
日本の伝統的な美意識やデザインの影響を受け、
盆栽を嗜み、日本で個展やワークショップを開いていたそうです。
ムナーリは晩年にかけて多くの言葉を書や教育者の立場で人々に伝えています。
この本はそのうちの一冊で、芸術についての思惑を詩でシンプルに表現してあります。
芸術とは
形に
中身に
素材に
方法に
過去の体験をなぞり
新しい体験を重ねる
終わりのない探索のこと
市場とは
完璧に梱包された
油絵とブロンズ
顧客の要求に応じて売れる
芸術品の形をした
定番の繰り返し
―ブルーノ・ムナーリ 「芸術と市場」より
詩の他に、散文なのか散文詩なのかよくわからない、曖昧な表現方法の作品もあって
そんなところも彼の芸術性のひとつなのかしらと思いました。
芸術をテーマに、これほど多くの詩を生み芸術作品を作り続けたムナーリ。
自由を求める心が、フワーと解き放たれる想いがいたしました。
―(略)―
必然は それだけでは 単調なもの
偶然は それだけでは
どうにも落ち着かないもの
東洋の賢人はいう
完璧は美しいが 同時に まぬけである
それを知り そして壊さねばならぬ と
必然と偶然の組み合わせは
人生であり 芸術であり
空想であり 良識であり
そしてバランスである
―ブルーノ・ムナーリ 「必然と偶然と」より一部抜粋