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実存・空間・建築 その1

2011年01月01日 | 建築本レポート
皆さん、更新が遅くなってごめんなさい。

今日は久しぶりにブックレポートです。

理論書なのでその紹介もしてみたいと思います。

『実存・空間・建築』クリスチャン・ノルベルグ=シュルツ著/鹿島出版会





建築の様々な要素を統一して考えた体系論です。

シュルツは、「実存的空間」や「世界内存在」、「ゲニウス・ロキ(直訳すると土地の霊)」等を提唱し、

建築を内部空間から考えたノルウェー出身の建築論者です。

現在、授業でシュルツの大作『ゲニウス・ロキ ―建築の現象学をめざして』を読んでいて、

本当はこちらをブックレポートにしようと思っていたのですけれども

「世界内存在」や「実存的空間」という「実存・空間・建築」に書かれた理論を元に「ゲニウス・ロキ」が論じられているので、

まずは『実存・空間・建築』の紹介からにしたいと思います。




まずはじめに、「世界内存在」や「実存的空間」とは一体何なのでしょうか。

私達は様々な実像と虚像の中で生きています。

虚像(イメージ・シェマ)は人間の中に存在し

全てが過去の経験(見たことがある、他人から聞いた、等)に基づいて出来上がります。

例えば、海を見たことがない人がいたとします。

その人が海を見たことがある人から海の話を聞きます。

「海にはきれいな砂浜があってね、砂浜には波が打ち寄せられているんだ。

海水は地平線まで続いていて、その全てを大きな青空が包んでいるんだよ。」

海に行ったことのない人はこの話を聞いて海を想像しイメージを作ります。

そして初めて熱海に行って海を見たとき、イメージの海と熱海の海(実存)と照らし合わせて

「今、海にいるんだ」と自分がいる場所を理解するのです。

私達は、無意識のうちにイメージと実際の場所を結びつけて考えていて

自分が今いる環境が世界のどこなのか、その都度定位しているのです。

この定位のことをシュルツは「世界内存在」と述べています。

皆、定位しながら生きているので、

「世界内存在」とは人間そのものといってもよいのかもしれません。




人間は定位を何度も繰り返しています。

それによってイメージ(シェマ)は、より一層抽象的になり、

安定した空間体系「実存的空間」を生みます。本書には次のように示されています。


―実存的空間とは、比較的安定した近く的シェマの体系、つまり、環境の「イメージ」である―(中略)―実存的空間は、たくさんの現象の類似性から抽象されて取り出された一つの一般化であって、「対象としての性質」を有するものである。(シュルツ)


実存的な体系、実存の抽象、統一されたイメージと考えてもわかりやすいです。

実存的空間は様々なイメージ・シェマに分けられます。

一番重要なのが、

「中心」(場所)、「方向」(通路)、「区域」(領域)

の3つです。

「中心」というのは人間の生活の中で基本的なシェマで、

幼児期から自分という主体を軸に空間を作っています。

おままごとや秘密基地で遊んだことがある方は

自分を中心とした広がってゆく空間作りをなんとなく理解できるのではないかと思います。

中心があるということは、そこに自分がいる場所があるということなのです。

次の「シェマ」は方向です。

先ほど挙げた中心(場所)には、方向というシェマがあるというのです。

人間の行動によって作られる方向性のほかに、自然界から影響される部分も多くて

山道の上下方向、日が差し込む方向などがあります。

私たちの生活はほとんどの場合方向に従っているのです。

なので空間に明確な方向性を与えることが重要なのだと思います。

最後に「区域」です。

ここでは質的な限定を受けた区域を指すようです。

文化の領域(例:外国)、自然による領域(例:山、川)、天候による領域(例:気象によって左右される農業)

自分がどの場所にいるのかを定位するとき、私達はその場所の領域にも気をつけているのです。

これら3つのシェマ、中心と方向と区域という要素が互いに関係しあって実存的空間を構成しています。

生活空間を

「地理」、「景観」、「都市」、「住居」(公共の中にも住むという考え方)、「器物」という段階に分けると

地理は景観を含み、景観は都市を含み、都市は住居を含みながら、

それぞれの段階ごとに中心(場所)・方向(通路)・区域(領域)を持っています。

器物は住居に含まれますが、方向と区域がありません。むしろ住居の中心として機能しています。

例えば寝床、暖炉、机などは人の生活の核であり人が集まる中心となります。

器物は人が住まうための手助けをしているのです。

シュルツは人間の空間体験について次のように述べています。


―空間の体験(知覚)とは、己の置かれている直接的状況と、実存的空間との間に生ずる緊張の中に存するのである。(シュルツ)


人間の頭の中では、誰もが無意識のうちに、空間の体験を通して空間の要素を抽出し

実存的空間の構築や空間把握をしているのだから、

本当に人間は素晴らしいなぁと感心してしまいます。





ここまでを書くのにかなり長くなってしまいました。ここまで読んでくださった方々どうも有り難うございます。

この本はこの先、人が場所に「住まうこと」について考えてゆきます。

―自由はやはり保護を前提とし、保護は、実存的空間が一側面をなしている人間の同一性があって始めて可能なのである。これが、「住まうこと」の本質である。(シュルツ)

と述べています。

私達の空間認識は、現実の場所に「いる(定位)」から、そこに「住まう」に変わるときがあります。

そのとき人間の中で、建築的空間との同一性が生まれているようなのです。

「建築的空間」、「同一性」とは一体何なのでしょう。

次回「実存・建築・空間 その2」で紹介したいと思うので

是非お楽しみに!!





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2 コメント

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Unknown (北野 均)
2009-07-05 21:43:36
難しくてあまりわかりません。建築に対し人のおかれた立場を見つめることにより、より深く建築を理解しようとするものでしょうか。哲学を学ぶことにより、実際の建築学に役立てようとするものでしょうか。やはり貴女は、豪いです。次回も楽しみにしています。色々教えてください。
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Unknown (guppy)
2009-07-05 23:31:46
いつもありがとうございます。

褒めてくださって嬉しいのですが、シュルツがすごいのだと思いますシュルツが言っていることはかなり哲学よりでなかなかの歯ごたえがあります。
自分なりに噛み砕いて人に分かりやすくものを伝えるのは難しいことだなぁと、書きながら痛感しました。

この本と出会ったのは、「授業の課題図書だったから」です。大学で数年学ぶようになってから気が付いたことは、北野さんのおっしゃるように哲学と建築学は関連が深くて、建築を理解する上で切っては考えられないことです。哲学者であり建築家も多いです。
あと宗教もかなり関与しています。宗教と建築があまり関係していない国は日本ぐらいではないかと思います。人間の生活に密着した物を作る立場なので哲学や宗教を知識として学び建築に役立てる必要があるのかなと感じてています。
そして少しでも多くの人に毎日何気なく生活している建築空間のことに興味を持ってもらえたらと思っています

またよろしくお願いします!!
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