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歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【映画】異端の鳥

2020-10-11 22:28:09 | 映画
苛烈だが"ドラマティック"ではない。

少年をみまう境遇は胸につかえること度々。
一方で映像はモノクロームに表現され
時に酸鼻を極める光景はのどかな自然の営みの中、
ほとんど声すらあげない少年の姿も相まって
これは寓話だろうかと思わせる。

幾つかの道具や動物の行為は、次に起こることを暗示する。
イソップ童話が頭に浮かぶ。

暴力、銃声、略奪、蹂躙。激しくないはずはない。
ただ、悲しみのようなのが覆っていて、静謐な印象が残る。
途中までは。

とある人とのエピソード(2つ)の後、俄かに、かれの世界は
こちら側に入って来る。
怒りか、尊厳の自覚か。
意思と言われるものが立ち表れる。

大人になるというのは、行使する側に立つということだろうか。
そうして人は簡単に、踏み越えるのかもしれない。自覚もなく。
口の中に砂がざらつくようだ。

ああ、そこまで、と、深すぎる心の傷に思い至る終盤もみごと。

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公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/itannotori/

少年を演じるペトル・コラールの目の、何とすごいことよ。
前半と後半で変わるよ。

(2020.10.11)


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