ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【展覧会】シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

2024-08-25 16:30:44 | アート・文化
陶芸とアスファルトで描いた作品がとても素敵でフロアを何度も回遊してしまった。

つくることと、記憶を預かること。
両方ともが、ぶっとい軸となって、
どちらにも拠りすぎず、両面どんと押し出す(しかし静謐)な展示構成。

持ち続けられず、でも捨てがたく「どうにかしてほしい」と願われているモノ。
作品と行動で願いを昇華する活動。
胆力と信念のようなもの、思い、が静かで余白のある展示空間に満ちている。

会場フロアに敷き詰められた焼き物とか。手ざわりやさしく数がすごみ。

時をまとう手ざわりのあるものたちを、暮らしから掘り出し、引き受け、可視化し、保つ。

民藝。

日本の民藝と共振がありつつも、少し違う感じがするのは、
もうちょっと踏み込んでいるというか、
モノに対する美的感覚以外の、社会軸での私的価値観(信仰とか
そういう次元に近い感じがする)が立ち上っているところだろうか。

追記:建物の活用型保存の事例を読んでいると、お金を扱うことのセンスもすごいと思う。

ボッテガ焼・黒い器の肌合い、「7つの歌」アスファルトとエナメル、タール・ペインティング、
マチエールのようにあらわれる味。細部にあちこちお気に入り。写真が可で有難し。

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シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝
森美術館
2024年4月24日~9月1日
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/theastergates/index.html

追記:年表面白かった!
追記:ショップに常滑焼(美)

(2024.8.24)



【展覧会】日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション

2024-08-25 16:02:55 | アート・文化
量と幅とひとつひとつの重量感が圧倒的。

高橋氏がコレクションを始めたのは1997年という。
ワタシの社会人として過ごしてきた期間と重なっていて、
なにをどうしたらこういう選別眼と蒐集力が成立するのだろうと、
感嘆とか敬服をみぞおちの下の方に静かにふつふつと沸かせつつ。

精神科医であることが、コレクションに加える判断の基調にあるのかもしれないし、
展覧会解説にあるように高橋氏の過ごした時代と体験が基盤になってるのでしょう。

一作一作のメンタルへのインパクトが大きくて、
でも傾向は様々(作家にもよるし、作品が語る時代にもよる)、
ゆるやかにボディーブロー※を受け続けながら観覧を進めていくので、
なかなかに消耗しました。
※懊悩や混乱だけでなく、美しいとか幸せとかカワイイのインパクトもあるので
 必ずしも痛いわけではなく。発するエネルギーの基調が高い感じ。
 美食であっても消化にエネルギー使う食もあるのと似ている。

3.11関連作品の重み。

最近の作家には初めて拝見するものも多くあり、発見のお裾分け。心躍ります。
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日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション
東京都現代美術館
2024年8月3日~11月10日
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/TRC/

MOTコレクション展、特に「竹林之七妍」とてもよく。
もう少し時間を取って行けばよかった。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-240803/

(2024.8.23)

【展覧会】大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024-08-18 14:28:20 | アート・文化
「気配と手ざわり」の副題が表している通り、作品そのものの美しさや
愛らしさ峻烈さとともに、その背景にある、作品がそのかたちに至った
時間も含めて、感受することができます。

制作過程を示す映像もとてもよく。お時間確保しての観覧がおすすめ。

出品作家さん(五十音順、敬称略):
榎本裕一、川村喜一、倉科光子、ふるさかはるか、ミロコマチコ

この5名の方で構成を編まれたというのが、観る方としては
とても充実した体験を得られて、ありがたいことでした。

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大地に耳をすます 気配と手ざわり
東京都美術館
2024年7月20日~10月9日
https://www.tobikan.jp/daichinimimi/outline.html#enomoto

(2024.8.18)



【展覧会】デ・キリコ展

2024-08-18 14:26:34 | アート・文化
形而上絵画。
遠近法の意図的な破綻。
"いつもの"モチーフの、構成、再構成、再構成。
独自と古典とを行き来する表現技術。

哲学への傾倒、戦時に"表情"(ないけど)が抜け落ちた表現を見ていると、
心理を描いているように思われるけれど、晩年はちょっと違うなと。
何を描いているのかな?と暫く進みながら、なるほど遊んでいるのかなと。

初期の肖像画の着衣の生地の質感の豊かさ、
マヌカンに現れる縫い目とおぼしきステッチや、刺繍にも見える星印、
関節や幾何図形の鋲のような小丸は、
クラフトにアンテナが立つワタシには興味深いところでした。
後年、造形を多く成されているのと関係あるのかどうなのかしらん。

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デ・キリコ展
東京都美術館
2024年4月27日~8月29日
https://www.e-tix.jp/dechirico/

(2024.8.18)

【展覧会】神護寺―空海と真言密教のはじまり

2024-08-10 14:05:11 | アート・文化
両界曼荼羅(高雄曼荼羅)を間近で。
息をのみ、つい細部を見つめながら視点を動かし続けても、
視界に入りきらない4m×4mの"世界"が観るものの観念を覆う。

後世につくられた曼荼羅図像の細密な写し。線画も美しい。

紺紙金字ほか、文字の姿がありがたみを纏う経文の数々。
空海の筆による記録書類。←かっこいい。すごくかっこいい。

かの、伝源頼朝像ほか肖像の名作の並びが続き。

日光月光菩薩を両脇にした薬師如来像、五大虚空菩薩、四天王、十二神将、二天王。

たいへんに見応え。

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創建1200年記念
特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」
東京国立博物館 平成館 特別展示室
2024年7月17日~9月8日
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2649
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/jingoji/

(2024.8.9)


【展覧会】TRIO パリ・東京・大阪

2024-07-21 14:03:38 | アート・文化
パリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館のコレクションから
さまざまなテーマ・視点の下、トリオ展示を構成。

たのしいたのしい。
表現と、意味や意図や方法に「へぇぇ」と、
発見をしながら散歩していく感じ。

そういうのを徹頭徹尾、名品づくしでやっちゃえるところが
さすがの3館なのでしょう。贅沢。

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TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション
東京国立近代美術館
2024年5月21日~8月25日
https://www.momat.go.jp/exhibitions/558
https://art.nikkei.com/trio/ticket/

(2024.7.20)


【展覧会】第2回 Tokyo Gendai

2024-07-07 23:55:45 | アート・文化
国内外のギャラリーが小間を構えているのを回遊して、
お気に入りを探すのはとても楽しかった。

海洋生物を糸のクラフト(編むなど)で表現してた
デンマーク(だったかな)の画廊の作品群、クラフト好きにはたまりません。

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第2回 Tokyo Gendai
https://tokyogendai.com/ja/
パシフィコ横浜 展示ホールC/D
2024年7月5日~7月7日

(2024.7.7)



【展覧会】宇野亞喜良展

2024-06-09 13:51:16 | アート・文化
繊細な線。
艶やかだったりポップだったりする色彩。

時代をあらわしていながら、
時代を易々と超えている。

少年少女の無性な貌に、ほんのひと雫のみだりがましさのエッセンス。

おどろな光景でも清涼さがあるのはお人柄が出ているのだろうか。

観終われば、なんだか大きな花束を受け取ったような感慨があった。

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宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO
東京オペラシティ アートギャラリー
2024年4月11日~6月16日
https://www.operacity.jp/ag/exh273/

(2024.6.8)



【展覧会】棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ

2023-11-25 22:53:22 | アート・文化
さまざまを吸収し錬成して手先からかたちに映しているようであり、
それが思考を超えていて生きることそのものであったようだ。

芸術家、であるのだろうが、手仕事のひと、の側面に、より惹かれる。

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生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ 
2023年10月6日~12月3日
東京国立近代美術館
https://www.momat.go.jp/exhibitions/553
https://www.munakata-shiko2023.jp/

(2023.11.25)



【展覧会】超絶技巧、未来へ!

2023-09-24 11:20:57 | アート・文化
どれだけ微細な感覚の指を、身体を、眼を、もってこれらをなしているのだろう。
美の感覚と技と両方なくては成立しえない。それと、執念にもにた拘りだろうか。

明治の超絶技巧に目をみはったのは、2014年のこと。
当時のブログに
「時を経て、触れずに距離を置いて鑑賞するもの、に変わって行った様子も
何となく察せられて、私たちは美術館の展示品としてしか観ることができないのも、
少々さびしいことだな、などと過ぎし時代をうらやましく思ったりした。」などと書いていました。

現代の超絶技巧も手に取るものではないですが、明治の遺産(今回は後半に展示あり)を
見たのとはまた別の感慨も持ちました。
それは、私がさいきん、クラフト(主に編・刺・ガラス)に興味と愛情を持っているからかも。

出展作は超絶技巧で、表現テーマに抽象的概念が置かれ、
工芸(クラフト)のうちでも芸術の極にあるものですが、
表現対象と全く異なる素材を用いて現実を再現する、という要素に目を向けると、
博物フェスにいるようなクラフト作家さんとロングテールのようにつながる何かが思われ、
表現対象物との距離感(心理的、体験的)ともあいまって、
めでる対象という視点を起動し、愛らしさのようなものへの感嘆を呼ぶのです。
特に、編みぐるみや立体刺繍の好きな方は、稲崎栄利子氏、蝸牛あや氏の作品など
感嘆がいっそう深いのではと思います。

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青木美歌氏のこと

菌類に魅せられ数年目の2017年、菌のありようを表現したようなアートを見たい、
できれば家に置きたいと訪れたアートフェア東京に、その作品はありました。
手が出る値段なのかわからず、おそらく難しかろうと思えど、帰宅後に扱い画廊を調べて、
北陸に遠征しようかなど考えているうちに日々は過ぎ、外出もままならない時期を挟んで、
そろそろ個展などなさらないかしらと検索をして若き作家の訃報に接しました。
今回、作品を間近で観ることができてとても嬉しかった。
ミュージアムショップで作品集を扱っていたのも有難かったです。

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超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA
三井記念美術館
2023年9月12日~11月26日
https://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

(2023.9.23)


【展覧会】蔡國強、ホックニー、横尾龍彦

2023-09-24 11:16:35 | アート・文化
新美の蔡國強展、現美のデイヴィッド・ホックニー展の感想を書きあぐねて
(特にデイヴィッド・ホックニー展は気持ちが満たされすぎ、あふれて
なにも書けない感じで)、そのまま埼玉県立近代美術館の横尾龍彦展に
行って、ワタシ的には全部つながった感じなので、1記事で書きます。

横尾龍彦展は、鎌田東二氏の水沢勉氏との特別対談も目当て(大人気焦った。
追加席でぎりぎり入。岩笛・横笛・法螺貝実演、貴重)でした。
対談でくしくも、蔡國強氏との交流の話が出てきたり、横尾龍彦氏の見え方
への意識の向け方に、思わぬホックニーとの共通要素を見出したり。

横尾龍彦氏のことは実はよく知らなかったのです。
わたしはザオ・ウーキーがとても好きで(19世紀末ウィーンも好きですよ)、
だから横尾作品は、観てみればとても好きな部類の表現で、知ることができてよかった。

”霊性の作家” ”描くことそのものが供物であり、儀礼・典礼であった”(対談より)
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横尾龍彦 瞑想の彼方
埼玉県立近代美術館
2023年7月15日~9月24日
https://pref.spec.ed.jp/momas/2023yokoo-tatsuhiko
(2023.9.10)

デイヴィッド・ホックニー展
2023年7月15日~11月5日
東京都現代美術館
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/hockney/
(2023.8.20)
・じっくり観たり、繰り返し往復したりして、2時間以上の充実観覧。
・複数の瞬間が同時に1つの画面にある、という認識の仕方と表現がとても印象的。
・カップルが描かれているのをみるとかわいらしく。
・ノルマンディーの12か月圧巻(愛すべきものに満ち満ちている)

蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる
https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/cai/index.html
国立新美術館
2023年6月29日~8月21日
(2023.7.2)
・”爆発”は破壊的なものであるはずが、その痕跡には美しさがあり、
 宇宙の何か、挙動、か、が写し取られている。
・”爆発”とともに火花、光、の表現。祝祭がもたらす、ハレ、の気配。


【展覧会】ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開

2023-06-18 22:47:18 | アート・文化
圧巻でした。量・質。
19世紀末の抽象絵画の始まりから、大戦を経て20世紀後半に至る展開を、
ヨーロッパからアメリカへ、あるいは日本/日本人画家への波及も切り口として
各時代の特徴を見せる作品の総覧。

各コーナーの解説文が、たっぷりかつ簡潔に学べる構成になっていて、
追って読んでいくにつれ、知識が整理され補充されていくことに充実を感じつつ、
一方で一点一点がそれぞれに強力な輝きを発する作品が、しかも大判多数で、
3フロアにわたってずらりと並び、視覚もまんぞくまんぞく。
ゆっくりじっくり観たら2時間では足りない。

抽象画なら何でも心動くわけではないけれど、この展示では眼福たっぷり。
そしてやっぱり、ザオ・ウーキーが一番好き。

図録、購入しました。こちらも圧巻(厚さも)。
観覧中の解説文を再読したく。抽象絵画のゆたかな教科書としてお持ち帰り。
図版も大きく写したものが多く載っていて嬉しい。

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ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ
2023年6月3日~8月20日
アーティゾン美術館
https://www.artizon.museum/exhibition/detail/557
https://www.artizon.museum/exhibition_sp/abstraction/ 特設サイト

再訪したい…。

(2023.6.18)


【展覧会】マティス展 と ルオー展

2023-05-04 20:25:48 | アート・文化
マティス展とルオー展、中1日で観覧。
ほぼ同時代を生きて、同じ師匠(モロー)の下で学んだふたり。
マティス1869–1954、ルオー1871-1958。
今回は、どちらの展示でもあまり交友は語られていませんが、
戦中にそれぞれが作品を寄せた「ヴェルヴ 第8号」はどちらの会場にも展示があります。

マティスは、神経に、さわ、と触れる感じ。
ルオーは、皮膚の触感を想起させる感じ。

観覧後に改めて、それぞれが同時代に何を描いていたかを並べると興味深い。

マティスがフォーヴィスムに至るころ、ルオーの描く人物像は精神性を強め。
制作活動に戦争の影響を受けながらも、表現を模索し。
晩年、切り紙絵と装飾的コンポジション。
かたち と マチエール。

そうしてどちらも、わたしにとっては、
こんなふうに描けたらここちがよいだろうなと思う表現なのである。

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マティス展 Henri Matisse: The Path to Color
2023年4月27日~ 8月20日
東京都美術館
https://matisse2023.exhibit.jp/about/

ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―
2023年4月8日〜6月25日
パナソニック汐留美術館
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/23/230408/

「マティスとルオー 友情の手紙」を読んでみようか。

(2023.5.2 & 2023.5.4)



【展覧会】江戸絵画の華 <第1部>

2023-01-09 23:04:53 | アート・文化
離れておおきくみてよし、近づいて細部みてよし。

「松竹梅群鳥図」松竹梅、に、八十八の鳥がお出迎え。
谷鵬「虎図」の毛並みに唸り。
水上景邨「牡丹に唐獅子図屏風」に口元ゆるみつつ畏敬も感じる不思議。

若冲「鳥獣花木図屏風」、とても近くでゆっくりと見れた。
多少見知っていたはずだったけれど、発見も多かった。
これからも、みてもみても、発見は尽きないに違いない。
何故こんなに穏やかなのだろう、微笑み感ある、無垢の動物たち。

鶴、ほか、墨でのしごと、筆づかいの妙、かたちの妙。
この方は生涯にどれくらいたくさん描いたのだろうと思う。

屏風の名品、肉筆浮世絵、みどころ尽きず。

ブライスコレクションから出光美術館コレクションへ。
持っていらした側、受け継いだ側、それぞれに大きな感謝と敬意を。

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江戸絵画の華 <第1部>若冲と江戸絵画
出光美術館
2023年1月7日~2月12日
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/

(2023.1.9)